クロサイト家の日常
四月カフェ狂想曲 イベントノベル(テーマ)卯月浪漫茶房制作 おおくまねこ納品 2024年05月25日 10時23分32秒
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「やぁおかえり、レピドくん!」
レピド・クロサイトが家に帰ると、ニコニコ顔のおじさんが玄関で待っていた。彼の名はティーチャー。The 4th Stage Cafeの支店Middle Aged Stars(通称:ミドスタ)のおじさんキャストであり、ティーチャーというのもキャストネームである。だが、誰も本名で彼を呼ぼうとはしない。ちなみに仕事中はいつも怪しげな仮面をつけているが、流石に自宅では外している。
「ん。ただいま」
レピドはそっけなく返事をした。レピドは両親を亡くした自分を引き取ってくれたこの叔父を慕っているが、あまりに普段からオーバーアクションな愛情表現をしてくるので、ついつい塩対応になりがちだ。その関係はさながら、思春期の娘とパパの関係に似ていた。
「にゃー」
「ただいま、ショウガ」
レピドは微笑みを浮かべ、愛猫を抱き上げた。
「レピドくん、夕ご飯はもうできているぞ。着替えたら降りてきなさい」
「ああ、分かった」
叔父さんはショウガにちょっぴりジェラシーを感じつつ、一足先にリビングに移動していった。
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レピドが着替えを済ませてリビングに降りてくると、ティーチャーはお行儀よく座ってレピドを待っていた。点けっぱなしのテレビは叔父さんの趣味か、「女王様の教室」という学園青春ドラマを映している。
「この匂いは……ビーフシチューか」
「そうだとも! 今夜はビームシチューオムライスだぞ!」
「ああ、うまそうだな」
「ありがとう! 教師たるもの、家庭科も必修科目だからね!」
テーブルの上に並べられた暖かな料理にレピドは素直に感心した。クロサイト家の料理当番はレピドとティーチャーの交代制だが、料理の腕ではレピドは叔父には及ばない。特に、叔父は短時間で手の込んだ調理をするのがやけに上手い。時々、実は3人ぐらいに分身してるんじゃないかと思うほどである。
「いただきます!」
「いただきます」
二人は手を合わせ、夕食を取り始めた。
●
そして、レピドがオムライスを完食した頃。
「なあ、レピドくん」
「なんだ」
ティーチャーが真面目な顔で話しかけてきたので、レピドは膝の上のショウガを床に降ろし、ティーチャーの方を向いた。
「そろそろ君もThe 4th Stage Cafeでアイドルデビューする時期だろう! 芸名も考えたんだよ、ブラッドと……」
「やだ」
「え」
レピドが即答すると、ティーチャーは背中に暗殺剣でも受けたように硬直した。
「正式に決まるまで黙ってたが、俺、卯月浪漫茶房に就職決まったから……」
「なんだって!? The 4th Stage Caféじゃなくて卯月浪漫茶房だとッ!? 何故かね!?」
ティーチャーは衝撃を隠せなかった。てっきり自分に憧れを抱いているレピド(おじさん視点)は自分と同じ、4スタに就職すると思っていたのに……。
「まさか、推しがいるのか!? ウェ村バル之進が好みなのか!? ええ、そうなんだろう、レピド君! 確か君のスマホの画像フォルダをチラッと覗いた時、黒髪赤目の男の画像のフォルダが」
「違う、あれはバル之進じゃない。……というかアンタ、見てたのか!」
思わず語気を荒げるレピド。そして後でスマホの覗き見防止用のフィルターを買って来ようと心に誓った。
「考え直したまえ、レピド君! おじさんと一緒に4スタでアイドルデビューしよう!」
「やだ」
「ああ、なんということだ……」
さめざめと泣くティーチャー。レピドは少しばつが悪そうな表情でおじさんを見下ろしている。実はレピドは『早く家を出ておじさんに楽をさせたい、恩人であるおじさんを国ごと守りたい』といった理由から卯月茶房に就職したのだが、本人の前でそれを口にすればますます調子に乗るのが目に見えていたのであえて黙っていた。
「じゃあ、俺は先に風呂に入るから」
泣き真似をしながらチラッチラッとこちらを見てくるティーチャーを放置し、レピドは風呂場に向かった。
●
(初任給……叔父さんにネクタイでもプレゼントしてやろうかな)
それから約1か月後。レピドが卯月浪漫茶房での最初の一月目の勤務を終え、初任給をもらった日。レピドは帰り道に洋服屋に寄り、お洒落なネクタイを購入して帰った。
「ただいま」
「レピド君! なんだねこの写真は! 羨ましいじゃないか!」
レピドが帰宅すると、なんだかティーチャーが騒いでいた。どうやらレピドが職場に遊びに来た二人の共通の知り合いの中年男性と一緒に撮ったチェキを見つけたようだ。
「レピドくん! 私とも! 私ともチェキ取って?!」
「……やだ」
(うるさいし恥ずかしいから)
レピドは顔を背けた。
「小さい頃は『おおきくなったらおじさんとけっこんする』ってあんなに懐いてくれたのに……」
すると、ティーチャーはよよよ、と泣き崩れる仕草を見せる。
「言ってないしそういうところだ」
(やれやれ……ネクタイは寝ている間に枕元にでも置いておこう)
レピドは嘆息し、料理の支度を始めるのだった。
「やぁおかえり、レピドくん!」
レピド・クロサイトが家に帰ると、ニコニコ顔のおじさんが玄関で待っていた。彼の名はティーチャー。The 4th Stage Cafeの支店Middle Aged Stars(通称:ミドスタ)のおじさんキャストであり、ティーチャーというのもキャストネームである。だが、誰も本名で彼を呼ぼうとはしない。ちなみに仕事中はいつも怪しげな仮面をつけているが、流石に自宅では外している。
「ん。ただいま」
レピドはそっけなく返事をした。レピドは両親を亡くした自分を引き取ってくれたこの叔父を慕っているが、あまりに普段からオーバーアクションな愛情表現をしてくるので、ついつい塩対応になりがちだ。その関係はさながら、思春期の娘とパパの関係に似ていた。
「にゃー」
「ただいま、ショウガ」
レピドは微笑みを浮かべ、愛猫を抱き上げた。
「レピドくん、夕ご飯はもうできているぞ。着替えたら降りてきなさい」
「ああ、分かった」
叔父さんはショウガにちょっぴりジェラシーを感じつつ、一足先にリビングに移動していった。
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レピドが着替えを済ませてリビングに降りてくると、ティーチャーはお行儀よく座ってレピドを待っていた。点けっぱなしのテレビは叔父さんの趣味か、「女王様の教室」という学園青春ドラマを映している。
「この匂いは……ビーフシチューか」
「そうだとも! 今夜はビームシチューオムライスだぞ!」
「ああ、うまそうだな」
「ありがとう! 教師たるもの、家庭科も必修科目だからね!」
テーブルの上に並べられた暖かな料理にレピドは素直に感心した。クロサイト家の料理当番はレピドとティーチャーの交代制だが、料理の腕ではレピドは叔父には及ばない。特に、叔父は短時間で手の込んだ調理をするのがやけに上手い。時々、実は3人ぐらいに分身してるんじゃないかと思うほどである。
「いただきます!」
「いただきます」
二人は手を合わせ、夕食を取り始めた。
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そして、レピドがオムライスを完食した頃。
「なあ、レピドくん」
「なんだ」
ティーチャーが真面目な顔で話しかけてきたので、レピドは膝の上のショウガを床に降ろし、ティーチャーの方を向いた。
「そろそろ君もThe 4th Stage Cafeでアイドルデビューする時期だろう! 芸名も考えたんだよ、ブラッドと……」
「やだ」
「え」
レピドが即答すると、ティーチャーは背中に暗殺剣でも受けたように硬直した。
「正式に決まるまで黙ってたが、俺、卯月浪漫茶房に就職決まったから……」
「なんだって!? The 4th Stage Caféじゃなくて卯月浪漫茶房だとッ!? 何故かね!?」
ティーチャーは衝撃を隠せなかった。てっきり自分に憧れを抱いているレピド(おじさん視点)は自分と同じ、4スタに就職すると思っていたのに……。
「まさか、推しがいるのか!? ウェ村バル之進が好みなのか!? ええ、そうなんだろう、レピド君! 確か君のスマホの画像フォルダをチラッと覗いた時、黒髪赤目の男の画像のフォルダが」
「違う、あれはバル之進じゃない。……というかアンタ、見てたのか!」
思わず語気を荒げるレピド。そして後でスマホの覗き見防止用のフィルターを買って来ようと心に誓った。
「考え直したまえ、レピド君! おじさんと一緒に4スタでアイドルデビューしよう!」
「やだ」
「ああ、なんということだ……」
さめざめと泣くティーチャー。レピドは少しばつが悪そうな表情でおじさんを見下ろしている。実はレピドは『早く家を出ておじさんに楽をさせたい、恩人であるおじさんを国ごと守りたい』といった理由から卯月茶房に就職したのだが、本人の前でそれを口にすればますます調子に乗るのが目に見えていたのであえて黙っていた。
「じゃあ、俺は先に風呂に入るから」
泣き真似をしながらチラッチラッとこちらを見てくるティーチャーを放置し、レピドは風呂場に向かった。
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(初任給……叔父さんにネクタイでもプレゼントしてやろうかな)
それから約1か月後。レピドが卯月浪漫茶房での最初の一月目の勤務を終え、初任給をもらった日。レピドは帰り道に洋服屋に寄り、お洒落なネクタイを購入して帰った。
「ただいま」
「レピド君! なんだねこの写真は! 羨ましいじゃないか!」
レピドが帰宅すると、なんだかティーチャーが騒いでいた。どうやらレピドが職場に遊びに来た二人の共通の知り合いの中年男性と一緒に撮ったチェキを見つけたようだ。
「レピドくん! 私とも! 私ともチェキ取って?!」
「……やだ」
(うるさいし恥ずかしいから)
レピドは顔を背けた。
「小さい頃は『おおきくなったらおじさんとけっこんする』ってあんなに懐いてくれたのに……」
すると、ティーチャーはよよよ、と泣き崩れる仕草を見せる。
「言ってないしそういうところだ」
(やれやれ……ネクタイは寝ている間に枕元にでも置いておこう)
レピドは嘆息し、料理の支度を始めるのだった。