異指
四月カフェ狂想曲 イベントノベル(テーマ)サロン・ド・アヴリル制作 真柄 葉納品 2024年05月30日 11時34分26秒
――――思い出しただけでも身体が熱くなる。
配膳を終えバックヤードへ戻ったアヴェルラは、同僚からかけられた労いの言葉にも上の空。空返事を返し、そそくさとロッカールームへと下がっていく。
ああ、今日は豊作だった。あんなにも魅惑的な人物たちが5人もいた。
アレは異星人の一団だったのだろうか。それとも異界人?
出身なんてどうでもいい。とにかく、この地球では逆立ちしても発現しない極上の一品ぞろいだった。
あんなにも素晴らしい”芸術品”を摂取できるのだから、この仕事はやめられない。『前職』も悪くはなかったが、”生きている”というものはやはり格別だ。
アヴェルラは自分のロッカーに熱い吐息をぶちまける。
ここ『サロン・ド・アブリル』でのアヴェルラは、誰もが一目置く一流の店員だ。メイドとして必要な全てを会得した彼女は、客はもちろん同僚たちからも『パーフェクトメイド』、『店員の完成系』と評されている。
しかし、それは彼女が巧妙に被った”皮”に過ぎない。
彼女の本性――――いや、本当の目的は、自分の欲望を満たす事。ただそれだけのために、数多の人種が跋扈するこの店を利用しているのだ。
そして、その欲望こそが――――。
”『指』を堪能する”
これこそがアヴェルラの欲望であり、全てだ。
――――ああ、堪らない。
けして他人には見せてはいけない恍惚の表情をロッカーの闇に向け、アヴェルラは一人ほくそ笑む。
摂取したばかりの新鮮な欲望に溺れる時間がたまらなく好きだ。
網膜に焼き付いた映像と、手に残る感触を反芻するこの時間は何物にも代えがたい。
「アヴェルラ先輩……?」
なのに、背後から聞こえた無粋な声が至高の時をぶち壊した。
「ど、どうしたんですか、なんだかお顔が……」
「なんでもないわ。それより何が御用?」
「あ、えっと、店長がホールに戻ってくれって」
「そう、わかったわ。すぐに行くと伝えて」
「……」
「まだ何か?」
「あ、あの、体調が優れないなら、休憩できるよう伝えますけど……」
「え?」
「その……随分と顔が赤いので」
「そ、そう? 店内の熱気に当てられたのかしら」
心配する後輩メイドに、いつもの笑顔を向ける。
「大丈夫だから行きましょう。そろそろディナータイムよ」
「は、はい!」
顔の火照りと下腹部に感じる熱を深呼吸で押し殺すと、アヴェルラは後輩メイドの背を押し再びホールへと足を踏み入れた――――。
配膳を終えバックヤードへ戻ったアヴェルラは、同僚からかけられた労いの言葉にも上の空。空返事を返し、そそくさとロッカールームへと下がっていく。
ああ、今日は豊作だった。あんなにも魅惑的な人物たちが5人もいた。
アレは異星人の一団だったのだろうか。それとも異界人?
出身なんてどうでもいい。とにかく、この地球では逆立ちしても発現しない極上の一品ぞろいだった。
あんなにも素晴らしい”芸術品”を摂取できるのだから、この仕事はやめられない。『前職』も悪くはなかったが、”生きている”というものはやはり格別だ。
アヴェルラは自分のロッカーに熱い吐息をぶちまける。
ここ『サロン・ド・アブリル』でのアヴェルラは、誰もが一目置く一流の店員だ。メイドとして必要な全てを会得した彼女は、客はもちろん同僚たちからも『パーフェクトメイド』、『店員の完成系』と評されている。
しかし、それは彼女が巧妙に被った”皮”に過ぎない。
彼女の本性――――いや、本当の目的は、自分の欲望を満たす事。ただそれだけのために、数多の人種が跋扈するこの店を利用しているのだ。
そして、その欲望こそが――――。
”『指』を堪能する”
これこそがアヴェルラの欲望であり、全てだ。
――――ああ、堪らない。
けして他人には見せてはいけない恍惚の表情をロッカーの闇に向け、アヴェルラは一人ほくそ笑む。
摂取したばかりの新鮮な欲望に溺れる時間がたまらなく好きだ。
網膜に焼き付いた映像と、手に残る感触を反芻するこの時間は何物にも代えがたい。
「アヴェルラ先輩……?」
なのに、背後から聞こえた無粋な声が至高の時をぶち壊した。
「ど、どうしたんですか、なんだかお顔が……」
「なんでもないわ。それより何が御用?」
「あ、えっと、店長がホールに戻ってくれって」
「そう、わかったわ。すぐに行くと伝えて」
「……」
「まだ何か?」
「あ、あの、体調が優れないなら、休憩できるよう伝えますけど……」
「え?」
「その……随分と顔が赤いので」
「そ、そう? 店内の熱気に当てられたのかしら」
心配する後輩メイドに、いつもの笑顔を向ける。
「大丈夫だから行きましょう。そろそろディナータイムよ」
「は、はい!」
顔の火照りと下腹部に感じる熱を深呼吸で押し殺すと、アヴェルラは後輩メイドの背を押し再びホールへと足を踏み入れた――――。