それは輝かしい未来? それとも悲哀の可能性?

四月カフェ狂想曲 イベントノベル(テーマ)らぼカフェ☆あふろでぃあ制作 真柄 葉納品 2024年05月22日 11時21分24秒

 ここは『らぼカフェ⭐︎あふろでぃあ』を一望できる特等席。
 どこぞの科学者(名のあるデザイナー)がデザインした調度品(ソファやテーブル)で揃えられた個室では、うら若き少女達が独創性溢れるメニューに目を輝かせていた。

「ボクは決まったけど、ヒルルクは?」

 ハーブ(ハーヴィ)(ハーヴェスタ)はタブレット(メニュー)を睨みつけている親友ヒルルクに問いかける。

「一応決まったけど……」
「なに、まだ緊張してるの?」
「そりゃ緊張するわよ。こんな立派な席だって思わなかったし……っていうか、なんでハーブは平気なのよ」
「えっ、逆になんで緊張するの? こんなの、ファンでいっぱいのステージに比べれば大したことないでしょ?」
「それって比べる所?」

 にししと歯を見せるハーブに、ヒルルクはがくりと肩を落としタブレット(メニュー)を繰った。

●

『ご来店ありがとうございます。ご注文の品をお持ちしました』

 注文ボタンを押してから数分、ドアの向こうから流暢な人工音声が聞こえた。
 二人が入室を許可すると、コーギーの耳尾を装着したキャストが入ってくる。

「ようこそ二人とも。よく来てくれたね」

 にこやかに微笑むキャストの胸元には『ハニー』の銀プレート。彼こそが二人を招待した人物、ハーブの双子の兄であるハーニー(ハーヴィ)(ハーヴェスト)だ。

「こんな素敵な席を用意してくれるなんて、随分フンパツしたね、お兄ちゃん♪」
「べ、別に大した席じゃないよ。普通だよ普通」
「ふーん。だってさヒルルク。お兄ちゃんにとっては大した事ないんだって。流石、売れっ子店員だよねー」
「もー、茶化さないの。折角ご招待してもらったんだから、素直にありがとうって言えばいいのに」
「うん? ありがとう、おにいさま! 愛してるっ!」
「はぁ……相変わらずだね、ハーブ。ヒルルクもごめんね、面倒事(お転婆な妹)押し付けて。どうしても一緒に行くってきかなくてさ」
「ふふ、そうなんだ。相変わらず仲がいいわね」
「仲がいい、のかなぁ。いつも振り回されてばかりだよ?」
「それも含めてよ。わたしは兄弟いないからわからないけど、とても素敵だと思うわ。見ているこちらも幸せになれるもの」
「う、うーん……まぁ、ヒルルクが幸せならそれで――――」
「おっ、個室をいいことにイチャイチャですか!? おにいさま、まだ勤務中ですわよ?」
「し、してないだろっ!?」

 と、兄の真っ赤な反論に満足したところで、ハーブは兄の肩に乗る小型のマーメイド型アンドロイドに視線を向けた。

「うーちゃん、今日もハーニーのお守りごくろうさまね」
『労いの言葉感謝します、ハーブ』
「うんうん、うーちゃんは相変わらずいい子だねぇ。よしよし」
「こら、勝手に触らないの! というか略称禁止だっていつも言ってるよね! 彼女には『ウォルヴァ』って清くて流麗な名前があるんだよっ!」
「そうなの? うーちゃん」
「だから、うーちゃんじゃなくて――――」
『特に問題はありません。お好きにお呼びください』
「……え?」
「ほら、いいって言ってるじゃない」
「そ、そんなまさか……名称変更を許諾するなんて……ハーブ、まさか彼女に何かした……?」
「えー、ボクを疑ってるの? ってか、ハーニーじゃないんだから、そんな事できるわけないでしょ。きっとうーちゃんのAIが成長してるんだよ」
「成長? まさか自己進化……確かにその可能性も――――いや、それだと既定路線から外れ……ならバージョンの選択肢は」

 研究者魂に火でもついたのか、ハーニーは接客そっちのけで『ウォルヴァ』に向け、何やら”呪文(専門用語)”を呟いている。

「あらら、自分の世界に行っちゃった。まいっか。ヒルルク、冷めちゃわない内に食べましょ」
「う、うん……でも、いいの?」
「ん? ひひはふはら、ふひはえは?」
「もー、口にモノ入れて喋らないの」
「はひはひ(……ごくん)。気になるなら、付き合ってあげれば?」
「付き合っ!?」
「いや、そっちの付き合うじゃ……うん? これはチャンスか? よしっ! ヒルルク、ボクのお義姉ちゃんになって(お兄ちゃんと結婚して)!」

「「なんでそうなるのよ(んだよ)!?」」

 VIPな空間で繰り広げられる”騒動”に、何事だと客が集まってくる。

『マスター、緊急事態を検知しました。早急に対応を』

「くっ……! あーもう! それじゃ二人とも、ゆっくりしていってね!」

 相棒の冷静な状況判断(ツッコミ)を受け、ハーニーは事態収拾の為に退室していった。

「はー、面白かった」
「面白くないっ! まったく、からかうのも程々に……」
「ふふ、でも緊張はほぐれたでしょ?」
「それはそうだけど……なんだか釈然としない」

 唇を尖らす優しい親友。そして、事態収拾に向かった優秀な兄。
 今はまだ”こんな関係”だけど、いずれは”違った形”に収まるのだろうか。
 それはきっと幸せな可能性(未来)。でも、ちょっぴり寂しい未来(可能性)。

「どうしたの、真剣な顔して」
「……ううん、なんでもない。ねぇ、ヒルルク」
「うん?」
「大好きっ!」

 突然の告白(衝撃)に固まる親友に、ハーブは満面の笑みを向けた。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0