【ガチ恋モブくんの日常】自分勝手な恋心
四月カフェ狂想曲 イベントノベル(テーマ)らぼカフェ☆あふろでぃあ制作 百草納品 2024年06月01日 11時07分53秒
私には、好きな人がいる。
なんていっても、本当に一方的で、笑えてしまうぐらいに自分勝手な恋なのだけれど。
私の好きな人――ハーニー(ハーヴェスト)くんは、らぼカフェ☆あふろでぃあという、近未来を思わせる内装のカフェで働いているキャストさん。
明るく朗らかで、細やかな気遣いを忘れない。彼の頭を飾るコーギーの付け耳は昔の飼い犬がモチーフだという話も、親近感を覚えてとても良い。
それに、彼の淹れる紅茶は美味しい。
これは勝手な想像なのだけれども、たぶん、飲む人の嗜好に合わせて、茶葉の種類とか、量とか、蒸らす時間とか、細かく調整しているのだと思う。
初来店の時にあまりの美味しさに感動すら覚えた紅茶が来店する度に美味しくなっていくものだから、気付けば彼の淹れる紅茶が飲みたくて連日のように来店している私がいた。
つまるところ。
コンセプトカフェで働くキャストに本気の恋をしてしまったという――本当に、どこにでもありふれたお話。
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これを、世間では『ガチ恋』だなんて笑うんだろう。
私だって、少し前まではあちら側の人間だったから、そう思われるのも無理のない話だと納得さえしている。
それでも、人の感情は儘ならないもので。
落ちてしまったものは、どうやっても元には戻らないもので。
今日も今日とてカフェ通い。他のお客さんが聞いていない隙を見計らってハーニーくんに話しかける。
意を決して、以前から気になっていたことを聞くために。
「ハーニーくんってさ、……好きな人、いる?」
一種の女の勘だった。確証はなかったけど、確信はあったこと。
「うん。……他の人には内緒ね?」
私からの問いに、照れながら人差し指を唇に当ててみせるハーニーくんは本当に可愛くて、美しくすらあって。
ああ、本当に好きな人がいるんだな、と。思わずときめいてしまった自分を誤魔化すかのように、彼の淹れた美味しい紅茶を啜る。
「……そっか」
確証を得たからといって、この恋に終止符を打つつもりはない。
簡単に諦められるような恋であったのならば、私の苦悩も少しはマシだったはず。
ただ、本気で恋をしているからこそ、彼を困らせることは本意ではないから。
この想いは秘めることにして、これからも変わらずお客さんとして通い続けることになるのだろうなと思う。
――私がお客さんでいる間は、ハーニーくんは私のために美味しい紅茶を淹れてくれるのだから。