【コラボ】空を舞う灯火の下で

四月カフェ狂想曲 イベントノベル(テーマ)エイプリアンダイナー制作 柊コウタ納品 2024年05月24日 10時17分45秒

 この日のエイプリアンダイナーはいつもより少し静かで、うっすらと暗かった。店内には、空へ飛び立つ工芸品の如きランタンがいくつも吊るされ、柔らかい光をダイナーの客席へ投げかけている。
 スカイランタン。それは実写ファンタジー映画『アニーズエピック(アニエピ)』で聖霊節のシーンに登場した、人々の祈りの形。高く飛んだランタンの灯火のような小さい明かりも数多く、どこか幻想的ですらある。
「いらっしゃい、エイプリアンダイナーへようこそ」
 ノアール(アルフィー・リッパー)が挨拶し、ブランシュ(ネーヴェ・グラヌローザ)がテーブルにメニュー表を並べると『アニエピ』を知る客たちが沸き立った。
「アルフィーとネーヴェが居る!」
 ブランシュは表情と声を作り微笑んだ。
「お会いできて嬉しいですわ。ごゆっくりお楽しみ下さいましね」
「はぁぁい……! うわぁ声までそっくりぃ!」
 本物みたい、二人の再現度すっごい、とはしゃぐ客たち。
 二人は『作中のネーヴェやアルフィーによく似ている』という理由でコラボ期間中の接客担当に抜擢されていた。が、それは一般向けの建前だ。
 ブランシュは笑みの下で、私がネーヴェ(本人)なんですけどね、と少し楽しく思いつつ客からのふぁんぴく撮影に応える。
 実は二人とも、本業である諜報活動の一環でネーヴェ役・アルフィー役として『アニエピ』に出演していた。よって、似ているも何も二人が当人なのである。

 二人のツーショットが欲しい、という客の要望に応えるノアールとブランシュ。
 作中の二人は、聖霊節のシーンではまだ恋人同士ではなかった。だがその後の展開で恋が実る。
 くっついた後の二人が今こうして寄り添っているみたい、とはしゃぐ客たちに、ブランシュが品良く嬉しそうな微笑を向ける。
 ノアールはといえば、実際に恋人でもあるブランシュとぴったり寄り添うよう言われ、心臓が暴れ出しそう。大好きで仕方ない人とのツーショット、嬉しいやら気恥ずかしいやらで顔が熱い。
 ――という様子がまた好評な、楽しいふぁんぴく撮影会だった。

●メニュー表
 ~ ヴェルクリエの聖霊節に寄せて ~

『黒猫シーフ、冬の装いプレート』
“二つ並んだビターチョコの三角ケーキを、もこもこホワイトクリームの襟に包んだケーキプレート。襟元にはライチ風味な琥珀糖のホワイトトパーズを添えて”

『白雪エルフ、冬の装いプレート』
“ほっそりとしたホワイトチョコケーキに、雪の粉砂糖を振った三つ編みパイが並ぶケーキプレート。ケーキの上にはブルーベリー風味な琥珀糖のアメジストを添えて”

『祈りのスカイランタン
 「皆がお腹一杯になりますように!」』
“誰かが書いた祈りの言葉。あなたに満腹の幸せを。チキンフライとオニオンフライが詰まってボリューム満点な、スカイランタン型フードボックス”

『祈りのスカイランタン
 「楽しい時間が過ごせますように」』
“誰かが書いた祈りの言葉。シェアして良し、独り占めして良し。ポップコーンとポテトチップスが山盛り入った、スカイランタン型スナックボックス”

『祈りのスカイランタン
 -貴方の幸いを祈り、共に帰ると誓う-』
“二人の思いが一つの祈りに。琥珀糖二種を目一杯まで詰め込んだ、スカイランタン型スイーツボックス”

●閉店後
 客も店員も居なくなった店内。クローズ作業を引き受けたブランシュとノアールは賄いを作り、壁際のソファ席に並んでのんびりとディナー。
「コラボメニュー、今日も好評で良かったわね」
「うん、嬉しいな。聖霊節のシーン、ほんとに大好きだから」
 そう話すノアールは、今回のコラボ決定を大変に喜び、とても積極的にメニューの案出しをしていた。それを知っているブランシュは、可愛い恋人が幸せそうに夜空のような店内を眺める姿に頬を緩める。
「撮影の時を思い出すわね」
「うん。……俺、今、アルフィーと同じ気持ちになっているかも。凄いブランシュの事が好きだ」
「あら。苦しいほどの恋心? 私、ネーヴェみたいに純粋でも清楚でもないけど良いの?」
「当然だ。俺はブランシュと一緒にこの景色を見られたことが嬉しい」
「そうね、私も、貴方とまたこの景色が見られて嬉しいわ」
 言って、ブランシュは隣の恋人の笑顔に手を伸ばす。きょとんとするノアールの顎に手を添えこちらを向かせ、恋人の唇に自分の唇を重ねた。
 ノアールは少し顔を赤らめつつもブランシュの手を包むように捕まえる。
「キスなんかしたら止まらなくなるぞ?」
「続きは帰ってから、ね」
 笑ってみせると、今度はノアールが手を伸ばしてブランシュを抱き寄せた。キスを返され、間近で囁かれる。
「家まで待てない」
 しかしブランシュは微笑んだ。
「ここじゃ落ち着いてできないでしょ」
「誰も居ないだろ」
「防犯カメラにノアールの素敵な姿なんて見せたくないの。独り占めさせて?」
「うううう……わかった、帰る、すぐ帰ろ」
「ふふ、いい子ね」
 愛してるわ、と耳元へ囁き返し、ノアールは無事大人しく(耳まで真っ赤に)なったのだった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0