【偽双】泡に弾ける実験の至幸
四月カフェ狂想曲 イベントノベル(テーマ)らぼカフェ☆あふろでぃあ制作 杜ノ門納品 2024年05月21日 12時03分25秒
「ウォルナちゃーん!」
「はーい!」
返る声は二人分。綺麗に重なり合った高音が、らぼカフェ☆あふろでぃあの店舗に響き渡った。
この店には、ウォルナ・パイパースという同姓同名のキャストが二人いる。表記に僅かな違いはあるものの、口に出す音は同じだ。
一人目は、深い紺色の髪を今日は二つに結んで、前髪を編み込んでいた。ふんわりと広がった短い丈のスカートから、ふわふわの尻尾が覗くのが愛らしい。魔女めいた帽子からは、同色の獣耳がぴょこりと飛び出している。彼女の髪型や制服のアレンジは頻繁に変わる。自分を着飾る事を楽しんでいる様子が、彼女の外見からはよく伝わってくるのだった。
二人目は、紺に近い青髪を、自身の脹脛にまで届こうかというくらいに長く垂らしている。スカートの丈は先のウォルナと差はないが、制服の半透明レイヤー部分を極端に長くする事で、まるでロングスカートのように魅せていた。耳と尻尾は機械仕掛けの鋭角的なもので、二人の明確な差異はここにあった。また、少し大人っぽく優雅な立ち居振舞いを感じられるのが彼女である。
この二人、同姓同名というだけあって、双子と言われても驚かないくらいに似ているのだった。身長も体格も、赤い瞳も。髪色は少し違って、紺髪の方が少し幼く見えるというのも数少ない違いだった。二人がどういう関係なのかは公表されていない。ファンの間では、どちらかがもう片方が作ったアンドロイドなのではないか、なんて噂も流れているくらいだ。そんなミステリアスな面も含めて、二人のおもてなしを楽しむファンは多かった。
「お待たせしました!」
「ウォルナの化学実験カクテルだよー」
元気に卓に飛び込んできた獣耳は、色とりどりの液体が入った五本の試験管を収めたスタンドを運んできた。後に続いた機械耳は、ぱちぱちと泡立つ液体の入った大きなフラスコを持っている。
「お客様は、何色が好きかな?」
まるで化学の授業でも始めたかのように。教師めいた包容力でそう尋ね、機械耳はにっこりと微笑む。客が悩んだ末に紫色の試験管を指差せば、獣耳が、おっ、と声を上げる。
「それ、実はオススメなの! では、実験を開始します!」
獣耳が試験管に刺さったストローでくるりと一度中を混ぜて、それを引き抜く。続いて機械耳が、フラスコの上部から伸びる管の先を試験管の中に入れる。すると、中の紫色がみるみるフラスコの中に吸い込まれていった。炭酸が強いのか、ぽこぽこと泡立っていたフラスコの中身に、吸い込まれていった紫色が触れると――。
「実験成功ー!」
中の液体がふつふつと弾けながら、虹色に輝き出した。時間の経過や、見る角度によって色味が変わる不思議なドリンク。確かこの前はぴかぴかと発光していたっけな、と試験管の効果の違いを実感した客は、思わず拍手で二人を称えていた。
「お客様、お目が高い!」
「よくできました」
お勧めを引き当てた客に拍手を返す獣耳に、生徒に花丸をつけるように微笑む機械耳。そうして機械耳は客の隣に腰掛け、獣耳は向かい側に座る。二人の限定メニュー「化学実験カクテル」は取扱に注意が必要となる為、客が全てを飲み終えるまでそばでお話しをするというサービスが付いているのだ。
「あっ! それ、最新の機種だよね!」
客がドリンクの写真を撮ろうと携帯端末を取り出すと、流行に敏感な獣耳が瞳を輝かせた。
「凄い! 写真もきれー……」
客が撮影した写真を見せれば、画質の良さに獣耳が唸る。カクテルの写真を綺麗に撮りたくて、と客が言えば、二人は驚いた顔をしたのちにふわりと微笑んだ。
「嬉しい!」
「きっとカクテルも喜んでるわ。沢山撮ってあげてね」
撮影を終えたのを察した機械耳が、フラスコの中身を小さなビーカーに移す。ストローを挿したそれを手渡された客は、こくりと一口嚥下した。弾ける炭酸に、爽やかな酸味。口内をさっぱりとリフレッシュさせる味わいは、どんな料理にも合いそうだった。
「味変はいかが?」
機械耳が試験管スタンドを掲げて言う。このドリンクは残りの試験管の中身を入れる事で味の変化も楽しめるのだ。実験結果は最初の一度きりなので、ここからは純粋に味変として試験管を使う事になる。
「甘みが欲しいなら赤。刺激が欲しいなら青がオススメかな」
他にも色ごとの味の変化を、機械耳は丁寧に説明してくれる。これらのメニューは彼女達の考案なのだそうだ。だからなのか、飲んだ後の反応や、次はどの試験管にしようかと迷う様子を、彼女達は楽しそうに眺めている。
「はい、召し上がれ」
虹色のまま色は変わらず、赤色の液体を足されたドリンクが再びビーカーに注がれる。爽やかさはそのままに、甘みが加わったドリンクはフルーティで、更に飲みやすくなった。
最新のガジェットや装飾品などの話に花を咲かせ、フラスコの中身が空になるまで。客は二人のウォルナと楽しい時間を過ごしたのだった。
「はーい!」
返る声は二人分。綺麗に重なり合った高音が、らぼカフェ☆あふろでぃあの店舗に響き渡った。
この店には、ウォルナ・パイパースという同姓同名のキャストが二人いる。表記に僅かな違いはあるものの、口に出す音は同じだ。
一人目は、深い紺色の髪を今日は二つに結んで、前髪を編み込んでいた。ふんわりと広がった短い丈のスカートから、ふわふわの尻尾が覗くのが愛らしい。魔女めいた帽子からは、同色の獣耳がぴょこりと飛び出している。彼女の髪型や制服のアレンジは頻繁に変わる。自分を着飾る事を楽しんでいる様子が、彼女の外見からはよく伝わってくるのだった。
二人目は、紺に近い青髪を、自身の脹脛にまで届こうかというくらいに長く垂らしている。スカートの丈は先のウォルナと差はないが、制服の半透明レイヤー部分を極端に長くする事で、まるでロングスカートのように魅せていた。耳と尻尾は機械仕掛けの鋭角的なもので、二人の明確な差異はここにあった。また、少し大人っぽく優雅な立ち居振舞いを感じられるのが彼女である。
この二人、同姓同名というだけあって、双子と言われても驚かないくらいに似ているのだった。身長も体格も、赤い瞳も。髪色は少し違って、紺髪の方が少し幼く見えるというのも数少ない違いだった。二人がどういう関係なのかは公表されていない。ファンの間では、どちらかがもう片方が作ったアンドロイドなのではないか、なんて噂も流れているくらいだ。そんなミステリアスな面も含めて、二人のおもてなしを楽しむファンは多かった。
「お待たせしました!」
「ウォルナの化学実験カクテルだよー」
元気に卓に飛び込んできた獣耳は、色とりどりの液体が入った五本の試験管を収めたスタンドを運んできた。後に続いた機械耳は、ぱちぱちと泡立つ液体の入った大きなフラスコを持っている。
「お客様は、何色が好きかな?」
まるで化学の授業でも始めたかのように。教師めいた包容力でそう尋ね、機械耳はにっこりと微笑む。客が悩んだ末に紫色の試験管を指差せば、獣耳が、おっ、と声を上げる。
「それ、実はオススメなの! では、実験を開始します!」
獣耳が試験管に刺さったストローでくるりと一度中を混ぜて、それを引き抜く。続いて機械耳が、フラスコの上部から伸びる管の先を試験管の中に入れる。すると、中の紫色がみるみるフラスコの中に吸い込まれていった。炭酸が強いのか、ぽこぽこと泡立っていたフラスコの中身に、吸い込まれていった紫色が触れると――。
「実験成功ー!」
中の液体がふつふつと弾けながら、虹色に輝き出した。時間の経過や、見る角度によって色味が変わる不思議なドリンク。確かこの前はぴかぴかと発光していたっけな、と試験管の効果の違いを実感した客は、思わず拍手で二人を称えていた。
「お客様、お目が高い!」
「よくできました」
お勧めを引き当てた客に拍手を返す獣耳に、生徒に花丸をつけるように微笑む機械耳。そうして機械耳は客の隣に腰掛け、獣耳は向かい側に座る。二人の限定メニュー「化学実験カクテル」は取扱に注意が必要となる為、客が全てを飲み終えるまでそばでお話しをするというサービスが付いているのだ。
「あっ! それ、最新の機種だよね!」
客がドリンクの写真を撮ろうと携帯端末を取り出すと、流行に敏感な獣耳が瞳を輝かせた。
「凄い! 写真もきれー……」
客が撮影した写真を見せれば、画質の良さに獣耳が唸る。カクテルの写真を綺麗に撮りたくて、と客が言えば、二人は驚いた顔をしたのちにふわりと微笑んだ。
「嬉しい!」
「きっとカクテルも喜んでるわ。沢山撮ってあげてね」
撮影を終えたのを察した機械耳が、フラスコの中身を小さなビーカーに移す。ストローを挿したそれを手渡された客は、こくりと一口嚥下した。弾ける炭酸に、爽やかな酸味。口内をさっぱりとリフレッシュさせる味わいは、どんな料理にも合いそうだった。
「味変はいかが?」
機械耳が試験管スタンドを掲げて言う。このドリンクは残りの試験管の中身を入れる事で味の変化も楽しめるのだ。実験結果は最初の一度きりなので、ここからは純粋に味変として試験管を使う事になる。
「甘みが欲しいなら赤。刺激が欲しいなら青がオススメかな」
他にも色ごとの味の変化を、機械耳は丁寧に説明してくれる。これらのメニューは彼女達の考案なのだそうだ。だからなのか、飲んだ後の反応や、次はどの試験管にしようかと迷う様子を、彼女達は楽しそうに眺めている。
「はい、召し上がれ」
虹色のまま色は変わらず、赤色の液体を足されたドリンクが再びビーカーに注がれる。爽やかさはそのままに、甘みが加わったドリンクはフルーティで、更に飲みやすくなった。
最新のガジェットや装飾品などの話に花を咲かせ、フラスコの中身が空になるまで。客は二人のウォルナと楽しい時間を過ごしたのだった。