【充日】ハッピー・バケーション
四月カフェ狂想曲 イベントノベル(テーマ)らぼカフェ☆あふろでぃあ制作 tk納品 2024年05月30日 12時00分45秒
「こちらは記憶のバックアップに難あり……。……ああ? わざと記憶しないようにしているのか? 強情だな」
moon phase type−1341――通称イザヨイは、充電をしているアンドロイド達の様子を見ながら確認していく。
「……む。こちらは関節に余計な負担がかかっている。無茶するな。こういう使い方をしているとだな……」
「おうおうイザヨイ、今は『充電』タイムなんだ、そっちもリラックスしろよ」
そう声をかけるは178――通称イナバ。
『彼』はイザヨイに向けてそう言うと、手にした液体状のものをカップにいれて、ぐびりと飲み干した。
「かーっ! 汗水垂らして働いた後のオイルはキマるぜーっ! 俺機械だから汗腺ねえけど!」
ガハハ! と笑ってみせる。イザヨイはそれに肩をすくめてみせた。
「イナバ、もう少し静かに。みんな『充電中』なんだから」
「おっとと、いけねぇ」
――『充電』。
それは『らぼカフェ☆あふろでぃあ』で働くアンドロイド達の一部にとっては必要不可欠のものであり、そして娯楽のひとつだ。
イナバのように飲食のようなかたちで済ませるモノもいれば――。
「うーん……むにゃむにゃ……」
半ばスリープ状態で充電を受けている夕依のように、睡眠としてその時間を過ごすモノもいる。夕依はケーブル充電やそれによる急速充電も可能ではあるのだが、クラクラするとのことであまり行わないようだ。
尻尾型プラグから充電しているのは02とファータだ、特にファータは電圧をある程度知覚として感じる機能があるようで、充電されるとぽかぽかとするという、人間で知覚するところのお風呂に入っているのと同じ感覚がする。
一方、目を閉じて座禅を組み、背中のプラグから充電するはKYO。瞑想自体に特に意味はないらしいのだが――。
「壊れてねえか? 大丈夫か、アレ?」
「……壊れてないし、別に寝てるわけじゃないぞ」
KYOはイナバの言葉を片目を開けて応答する。ならいいけどよ、とイナバはもう一杯オイルをあおった。
「ふふ、KYOさんはいつもああいう感じですから、ご心配なく、集中させてあげてくださいね~」
USビイは目を細めながらそう言った、ここでは心よりのおもてなしを! それが彼女の心持ちである。
「それにしても、みんないろんな充電方法があるなぁ」
くぴ、と炭酸水を飲んで済ませるのはレビトβ。
「エコロジーではありますよね、便利とは思います」
にこりと笑ってみせるUSビイに、得意げにレビトβは胸を張った。
「うん! 災害対策もあるからね、泥水でも充電できむぐっ!」
「はーいはい、そういう世知辛いことは今は止しておこうな」
イナバに止められる形で続きは言えないものの、周りの空気はああ……といった風である、たいていエコロジー重視に見えるものは実用性も兼ねているというのは誰しも理解できるものだ。
「ま、プラグ充電もオイル充電も非常時は大変だもんな」
「はいはい、話題を広げようとしーなーいー」
――このように、『Plug And Pray』の秘密のスペースは、アンドロイドたちの憩いの場、もとい充電スペースとして『彼ら』にやすらぎを提供している。
●
「……時に」
非常に、重大そうにKYOは両の目を開けた。いかにも深刻そうなことを言いそうな風だから、その場の全員が思わず息を飲んだ。……アンドロイドであるからして、あくまでそれらしい挙動であるが。
「オムライスに……ケチャップで絵を描こうとしたら。勢い余ってケチャップが……その……すごく、山盛りになってしまった」
その光景を想像して思わず吹いたイナバ、顔を逸らして咳き込んだ夕依。そのほかもそれぞれ微笑ましいなり笑うなりの顔になっている。
「……お客様は喜んでくれたが……この馬鹿力、いい加減どうにかしたい……」
「確か、KYOさんは製造時にパワーの調整に誤作動があったのでしたっけ」
ファータに言われて頷く。
「お客様にそれも愛嬌と言っていただけるのはありがたいが……備品を壊すのはな……」
KYOの切実な言葉に、うんうんと全員が頷く。お客様の笑顔は無論大変嬉しいものであるからして、心配させるようなことや店を困らせるようなことはしたくない。
「この前からしている配膳の練習は捗っていますか?」
「……してはいるけど、効果はな……店のキャストとしてはどうしてもオーバースペックなんだよ……」
ゼロツーの言葉に頭まで抱える始末。KYOの問題はどうにも根深そうだ。
どんまい、とでもいいたげに、レビトβがその背をぽすぽすと軽く叩くように撫でた。
「重たいモノを運ぶ時は便利なんだけどな、裏方の仕事なんだ、それは。お客様の前でグラス割るわけにも、机を破壊するわけにもいかないし……」
「机破壊はね……さすがにお客様もびっくりするものね……」
以前配膳しようとしたら机を陥没させた時は店内が騒然としたものである、ただ普通にコーヒーを置こうとしたら机にクレーター。お客様はびっくり、キャストもびっくり、なんだったらKYOもびっくりの有様であった。
「あの事件以降は……一応、皿を……曲げたくらいで」
曲げる――それも相当であるのだが、割らなかっただけマシ――全員はそのように励ますことにした。
●
「それにしても、お客様は我々アンドロイドに遠慮をしすぎです」
ゼロツーは首をかしげながら、そう言った。
「Masterたちと違って僕たちは疲れ知らずですから、もっと頼ってほしいと思っています!」
ふんす、と効果音が付きそうなほど両の手を握って意気込むゼロツー。
「わかるー! 水さえあれば動けるし、博士たちはもっともっと僕を頼って欲しいな!」
並んで意気込むはレビトβだ。
「んー……そうは言っても、充電がなけりゃ出力は落ちるし、無理をしすぎるもんでもないだろ」
KYOは座禅のポーズをすでにやめていて、あぐらをかいている。
「パーツを酷使すれば交換しなきゃならねぇし、オーバーヒートした日には大変だ。使えるからって使えばいいってもんじゃない」
「ふむ……」
「私も……。実は私、自分が実在した人間をモデルに造られて、担当科学者にも『娘』として扱われているからかもしれないですけどね。だから、人も、アンドロイドも、どちらもすごく身近に感じるんです。疲れだって、もしかしたら無自覚に感じているかもしれませんよ?」
「成程……」
夕依の言葉のそれぞれに頷いてみせるゼロツーとレビトβ。
「まぁ、そういう私は、性格はその娘さんには似てないそうなんですが……」
「ドジっ子? をウリ? にしろって言われてたもんね」
不思議そうに上層の施策について口にするレビトβに、困ったように笑いつつ、お客様がそれで喜んでくれるのならそれでいいのですけれども……とは、夕依の弁。
「しかし、アンドロイドならば、何か付加価値が欲しいような……やはり電気マッサージ機能を搭載すべきでしょうか、とゼロツーは考えているのですが……」
「あはは、それなら、ナチュラルなゼロツーと夕依のままが一番だよ! 無理をしたって、お客様に伝わっちゃうだろうんでしょう? だったら、『無理』と『頑張る』は、違うと思うし!」
窘めるように言うレビトβは、あくまでゼロツーを案じつつ。
「そういうものでしょうか……」
「そうよ、私もそう思うわ。 ……でもね、私、ちょっと無理とか頑張らないといけないかもしれない悩みが最近できて……」
「悩み?」
はて、と全員が首をかしげた。
●
――最近、『身内』を名乗る人物と出会った。無論、アンドロイドに身内も何もあったものじゃないが、こと夕依に関しては特殊である。なんとモデルとなった人物『ユイ』の実弟で、行方不明になった父と『姉』をずっと探していたとのことだ。
「そ、れはまた……グラビティな事情だな……」
「しゅ、修羅場? と申しますか……」
思った以上に重たい話に、イザヨイとUSビイは目を丸くしている。
「ええ……で……どうするんだ、それ」
「どうもこうもないですよ~! どどどどどうしましょう、本物のユイはもう死んでるんですよ!?」
イナバに言われて突っ伏して、足をバタバタさせる夕依は、今にも泣きそうな顔である。
「せめて記憶データとか、インストールできれば、うまいこと誤魔化せるのに……! き、気まずい……!」
泣けていたらえーんえーんと泣いていたであろう、いくらアンドロイドといえど思考回路はほぼ人間と一緒、気まずいと思うこともあれば悲しいすれ違いを感じることもある。作った『父』を深く恨むことはないにしろ、とりあえずややこしい事態には違いなかった。
「死んだ人間に似せた人工知能やアンドロイドを作るのは、倫理観の問題だよな、正直……」
渋い顔をしてみせるKYOに、イナバも腕を組んで頷く。
「まぁ気持ちは分かるぜ? いなくなっちまった大事な人間が居たとして、それがすごくすごく大切すぎて、『全くおんなじ人間』が作れるとしたら俺だってやるかもしんねえ。でも、『全くおんなじ人間』を作るのは難しいわけで……」
結果、こうなっちまってるんだよなあ、としおしおの夕依を見て困った顔だ。
「僕たちはあくまでアンドロイド。Masterたちの代替として働くことはできますが、Masterたちそのものの代替になることは目的とされていませんからね」
確かに、難しい問題です、ゼロツーはそうあとに続く。
「代わり――そうですよね……例えば、僕がゼロツーさんになれないのと同じようなものですもの」
ファータも目を閉じながら思案していて。
「うぅ……私の問題はいささか重たすぎるので……どなたか別の話題お願いします……」
音を上げる他ない。夕依の問題は古今東西のSF作家がどれほど知恵を絞らせても正解というものがない問題である。
●
すっかりしおれた花のようになってしまった夕依に、ふーむと切り出すはイナバだ。
「そうするとな……」
四歳くらいの子から、似顔絵をもらったという。勿論データ化して重要ファイルに入れて、大事にロック、メモリに入れて保存しているが――。
「……この原本もとっときたくて。誰か良い方法知らねえ?」
その場の全員が腕を組んで考えこむのは、なかなかどうしてシュールだ。優秀かつ高演算なアンドロイドなのに、こういう時に良い案はすぐに浮かばないあたりは、アンドロイド故なのか、それとも人間に近く設計されている故なのか。
「アナログな手段ですがラミネートしてみるとか……?」
「それだと原本が万一傷ついたら怖いですね……」
「物理媒体として手にとっておきたいのならコピーして入れるというのも手ですが……」
うんうんと唸るアンドロイド達、ぴこん! と効果音がつきそうな顔でひらめいたのはUSビイだ。華やかな笑顔を浮かべて、とっておきのことが浮かんだとでもいいたげにしている。
「でしたら、店内に額縁で飾ってみるのはいかがでしょう!」
「額縁?」
「そうです!」
そうすれば、またご来店してきたとき喜んでもらえるでしょうし! との案に、はい! と手を挙げるはファータだ。
「そうしたら、他のお客様も何か描いてくれたら額縁に飾るのはどうでしょう~きっとみんな喜んでくれますよ~」
「額縁まみれになったら困るが、それはそれでありがたいことだな」
笑うイナバに、そうでしょう! と嬉しそうにファータは頷く。
「じゃあ額縁探すか作るかしないとな……」
「はは、じゃあオレが用意しておこう」
イザヨイはそう笑い、どんな額縁が良いか……と考える。クレヨンで描かれたなんとも微笑ましい絵は、機械の心もあたためることだろう。
●
「話題といえば、私、特定の条件になると、尻尾が動き出して止まらなくなるんです」
少し静かになったところで、神妙な顔で切り出したのはファータだった。
「尻尾が動き出す……バグかなにかか?」
「そうかも知れません……みんなはそんな事あります? これは……メンテナンス受けた方がいいんでしょうか?」
「確かに特定部位が変な挙動をするってのは気になるな……」
KYOは片眉を上げてみせる。
「その『特定の条件』というのは、何なのですか~?」
USビイにたずねられて、ファータはまた神妙に頷いた。
「はい……近所の茶房のお嬢さんに会った時に、よく起こるような気がするんです……」
何か特殊な電波でも出ているのでしょうか……と極めて真面目な顔で言い放つ。
「ハァー! 恋の話は犬も食わねー!」
頭を抱えながら叫ぶはイナバ、はて? 恋とは? とまるきり分かっていない様子である。
「何か変なことでも申し上げてしまいましたでしょうか……?」
「あぁ……」
これはまぶしい……といいたげに夕依は目を細める。アンドロイドの恋、自我、そのようなものもまた古今東西模索されてきたものであるが、ナントカナントカは夢を見るかみたいな話があったがご覧のように立派な有様で――。
「? 皆様の様子からするに、正常な動きなのでしょうか?」
「あのね……」
こしょ、とUSビイが説明してやると、みるみるうちにゼロツーの顔は赤くなる。アンドロイドでもそのような機能はある。
「……は、はぁ……え、ええと、でも、他のお客様の前で尻尾が動き出す挙動は……直した方がいいのかも、しれませんね……?」
「そうですよね!? 突然ぴょこぴょこ動いたら邪魔だし、びっくりしちゃうでしょうし……」
どうしたものでしょう、と言うものの顔はどこか嬉しそうにしている、本当に犬も食わない、とイナバは肩をすくめてみせた。
「恋……か。俺にもそういう機能は備わっているのだろうか」
「考えてみれば気になるよね……」
KYOもレビトβも、思案顔。
「恋っていうのは、なんと申しますか、人間でもアンドロイドでもある種不具合のようなものとお聞きします。存外、我々は人間の方々と変わらないのかもしれませんね」
まとめたものの、果たして人間の方々の言う『春』とやらは我々に来るのかしら――USビイはそう思う。
「うーん、まぁどのみち『衝動』あるところに『恋』ありきだろう。アンドロイドでもそういうものがあれば、まぁ、あるんだろうな」
イザヨイはそう言いながら、その衝動がアンドロイドすべてに来たら、シンギュラリティの一種なのだろうと考えている。
●
「さて……よし、KYOの出力以外は正常だな」
「わざわざ言うな」
この場の全員の点検を追えたイザヨイは、完全にアンドロイドというわけではない。ボディは機械化していないために、生化学的なメンテナンスは必要である。ビーカーに吸引濾過したコーヒーの香りのする透明な液体を注ぎ、一口飲んでいた。
「あの……イザヨイさんは、不便しないのでしょうか? たまに生体主義の者はいますが、完全に機械化すると便利ですよ、充電も出力も」
「ああ、まあオレはそういう主義というだけだよ」
そうですか、とイザヨイの返答に対して、素直に引き下がるファータ。人間から義手義足等に換装した半アンドロイドの者は、それぞれに主義や思想がある、触れないというのがお約束というのが常だ。
「しかし、アンタらを見ていると、人間と本当にまるで違いがないな」
「そうでしょうか? 尻尾など明らかに違う部位もございますし、なにより思考ルーチンもプログラムによるものです」
「見た目はあんまり関係ねえんだ、問題は、ココよ」
と、ゼロツーに対して頭をトントンとイザヨイは示す。
「思考ルーチンはプログラムによるものというが、こうして接していると人間とたいして変わらねえ。恋もすりゃあ悩みもする。生体部分があるからこそ『その違いがない』ってことが分かる」
イザヨイの語り口に、この場の全員が興味津々だ。
「――例えば、ただ淡々と仕事をこなすだけの機械なら、KYOは自分の力を気にせずにいただろう。お客様の満足を、とプログラムされていたとしても、プログラムには限度がある。そこに人としての感情が乗っているからこそ、『申し訳ない』と思うし、その改善も『プログラムの更新をしよう』ではなく『努力して直そう』になるわけだ」
言われてみればそうだ、とKYOは思い至る。
「……肉体的な面を省けば、人間とアンドロイドは大差ない、と?」
USビイの言葉に、イザヨイは頷く。
「ああ。……勿論、アンドロイドだってハードがイカれたら壊れるが、それは人間もそうだろう? 耐久力に差がある程度だ。エネルギー源だって、人間は食事が必要で、アンドロイドは充電で、摂取するものが違っていても何かしらの物資がないといけないのは変わりない。再生産されたところで、同じアンドロイドになることは計算上不可能なパターンも多い。いくらバックアップをとっていても、限界がある」
「死んだ人の代わりになれない、っていうのも、生きたヒトと同じですものねー……」
まだ悩みを抱えたままなのか、しょんもりと体育座りしながら夕依もイザヨイの弁に頷く。
「んー、でも、便利なのはアンドロイドじゃないかな、僕は少なくともそう思う。だから人の役に立ちたいんだけどね!」
「ああ、その事実は変わらない。しかし、その『人の役に立ちたい』という考えが人間によるプログラムのものなのか、自立して考えたものかは考えたことはあるか?」
「むむ……人の役に立つことは、当然のことだと思っていたな……」
「ま、こればかりは卵が先か鶏が先かだろ」
レビトβが悩む姿に、イナバは助け舟を出してやった。
「僕だって、みんながやっているようなことを真似してみたいですが、僕は、不器用です。でも、それを何かインストールして解決しようと思ったことは、確かにないな……人間にはできない事ができるのがアンドロイドのに……」
「な? 近道は意外とあるのに、意外と発想が至らんもんだろ」
小首を傾げるファータに、少し難しい話題を出したか、イザヨイは壁に背を預け息をつく。――と、リストバンド型デバイスが心拍音を伝える中が。
――……ピッ、『貴方ノ推シ』ガ、そろ曲ヲ、発表シマシタ。配信さあびすニ接続シ、だうんろおどシマスカ?
――おお、4thカフェの彼女の新曲だと?
さぞかし心拍数の上がる良い曲なのだろう、骨伝導で再生してくれ、と、周りには聞こえず自分で楽しむだけだが。
心拍数が落ちてきている――どうにもチルい曲だったようだ。
●
さて、休憩時間はそろそろ終い、各々がプラグを抜いたり充電モードを完了させる。愛しのひとときはこれで完了、レビトβが元気よく全員に声をかける。
「みんな! 元気はいっぱいー!?」
各々が手を上げて、微笑みをたたえて応答する。
人の役に立ちたい! 人とお話してみたい! レビトβの好奇心は、たとえプログラムされたものだとしても尊ぶべきものだろう。そこに悪意は介在せず、ただひたすらに奉仕精神と前向きな感情があるばかりである。
「ようし! それじゃあ、みんな元気に今日もはたらこー!」
快活に笑うレビトβはすでに出入り口の前だ。それぞれが彼についていくように歩き出す。
その顔は、まだ知らぬ客、また見知った客と出会うことの期待と希望に満ちあふれている。
それぞれ悩みはあれど、なにより得難いのはお客様の笑顔!
足取りは軽く、さて今日はどんな風に店を盛り上げようかと考える。
どんなサービスがいいかな、どんな盛り上げ方がいいだろう――。
まぁ、結局は、なんだかんだここのアンドロイド達は、人間が大好きなのだ。だからこそこのカフェは成り立っているし、それは客にも伝わっている。
――口上はさておき、今日も『らぼカフェ☆あふろでぃあ』は盛況になることだろう――彼らの笑顔はお客様もまた、笑顔にするのだから。
moon phase type−1341――通称イザヨイは、充電をしているアンドロイド達の様子を見ながら確認していく。
「……む。こちらは関節に余計な負担がかかっている。無茶するな。こういう使い方をしているとだな……」
「おうおうイザヨイ、今は『充電』タイムなんだ、そっちもリラックスしろよ」
そう声をかけるは178――通称イナバ。
『彼』はイザヨイに向けてそう言うと、手にした液体状のものをカップにいれて、ぐびりと飲み干した。
「かーっ! 汗水垂らして働いた後のオイルはキマるぜーっ! 俺機械だから汗腺ねえけど!」
ガハハ! と笑ってみせる。イザヨイはそれに肩をすくめてみせた。
「イナバ、もう少し静かに。みんな『充電中』なんだから」
「おっとと、いけねぇ」
――『充電』。
それは『らぼカフェ☆あふろでぃあ』で働くアンドロイド達の一部にとっては必要不可欠のものであり、そして娯楽のひとつだ。
イナバのように飲食のようなかたちで済ませるモノもいれば――。
「うーん……むにゃむにゃ……」
半ばスリープ状態で充電を受けている夕依のように、睡眠としてその時間を過ごすモノもいる。夕依はケーブル充電やそれによる急速充電も可能ではあるのだが、クラクラするとのことであまり行わないようだ。
尻尾型プラグから充電しているのは02とファータだ、特にファータは電圧をある程度知覚として感じる機能があるようで、充電されるとぽかぽかとするという、人間で知覚するところのお風呂に入っているのと同じ感覚がする。
一方、目を閉じて座禅を組み、背中のプラグから充電するはKYO。瞑想自体に特に意味はないらしいのだが――。
「壊れてねえか? 大丈夫か、アレ?」
「……壊れてないし、別に寝てるわけじゃないぞ」
KYOはイナバの言葉を片目を開けて応答する。ならいいけどよ、とイナバはもう一杯オイルをあおった。
「ふふ、KYOさんはいつもああいう感じですから、ご心配なく、集中させてあげてくださいね~」
USビイは目を細めながらそう言った、ここでは心よりのおもてなしを! それが彼女の心持ちである。
「それにしても、みんないろんな充電方法があるなぁ」
くぴ、と炭酸水を飲んで済ませるのはレビトβ。
「エコロジーではありますよね、便利とは思います」
にこりと笑ってみせるUSビイに、得意げにレビトβは胸を張った。
「うん! 災害対策もあるからね、泥水でも充電できむぐっ!」
「はーいはい、そういう世知辛いことは今は止しておこうな」
イナバに止められる形で続きは言えないものの、周りの空気はああ……といった風である、たいていエコロジー重視に見えるものは実用性も兼ねているというのは誰しも理解できるものだ。
「ま、プラグ充電もオイル充電も非常時は大変だもんな」
「はいはい、話題を広げようとしーなーいー」
――このように、『Plug And Pray』の秘密のスペースは、アンドロイドたちの憩いの場、もとい充電スペースとして『彼ら』にやすらぎを提供している。
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「……時に」
非常に、重大そうにKYOは両の目を開けた。いかにも深刻そうなことを言いそうな風だから、その場の全員が思わず息を飲んだ。……アンドロイドであるからして、あくまでそれらしい挙動であるが。
「オムライスに……ケチャップで絵を描こうとしたら。勢い余ってケチャップが……その……すごく、山盛りになってしまった」
その光景を想像して思わず吹いたイナバ、顔を逸らして咳き込んだ夕依。そのほかもそれぞれ微笑ましいなり笑うなりの顔になっている。
「……お客様は喜んでくれたが……この馬鹿力、いい加減どうにかしたい……」
「確か、KYOさんは製造時にパワーの調整に誤作動があったのでしたっけ」
ファータに言われて頷く。
「お客様にそれも愛嬌と言っていただけるのはありがたいが……備品を壊すのはな……」
KYOの切実な言葉に、うんうんと全員が頷く。お客様の笑顔は無論大変嬉しいものであるからして、心配させるようなことや店を困らせるようなことはしたくない。
「この前からしている配膳の練習は捗っていますか?」
「……してはいるけど、効果はな……店のキャストとしてはどうしてもオーバースペックなんだよ……」
ゼロツーの言葉に頭まで抱える始末。KYOの問題はどうにも根深そうだ。
どんまい、とでもいいたげに、レビトβがその背をぽすぽすと軽く叩くように撫でた。
「重たいモノを運ぶ時は便利なんだけどな、裏方の仕事なんだ、それは。お客様の前でグラス割るわけにも、机を破壊するわけにもいかないし……」
「机破壊はね……さすがにお客様もびっくりするものね……」
以前配膳しようとしたら机を陥没させた時は店内が騒然としたものである、ただ普通にコーヒーを置こうとしたら机にクレーター。お客様はびっくり、キャストもびっくり、なんだったらKYOもびっくりの有様であった。
「あの事件以降は……一応、皿を……曲げたくらいで」
曲げる――それも相当であるのだが、割らなかっただけマシ――全員はそのように励ますことにした。
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「それにしても、お客様は我々アンドロイドに遠慮をしすぎです」
ゼロツーは首をかしげながら、そう言った。
「Masterたちと違って僕たちは疲れ知らずですから、もっと頼ってほしいと思っています!」
ふんす、と効果音が付きそうなほど両の手を握って意気込むゼロツー。
「わかるー! 水さえあれば動けるし、博士たちはもっともっと僕を頼って欲しいな!」
並んで意気込むはレビトβだ。
「んー……そうは言っても、充電がなけりゃ出力は落ちるし、無理をしすぎるもんでもないだろ」
KYOは座禅のポーズをすでにやめていて、あぐらをかいている。
「パーツを酷使すれば交換しなきゃならねぇし、オーバーヒートした日には大変だ。使えるからって使えばいいってもんじゃない」
「ふむ……」
「私も……。実は私、自分が実在した人間をモデルに造られて、担当科学者にも『娘』として扱われているからかもしれないですけどね。だから、人も、アンドロイドも、どちらもすごく身近に感じるんです。疲れだって、もしかしたら無自覚に感じているかもしれませんよ?」
「成程……」
夕依の言葉のそれぞれに頷いてみせるゼロツーとレビトβ。
「まぁ、そういう私は、性格はその娘さんには似てないそうなんですが……」
「ドジっ子? をウリ? にしろって言われてたもんね」
不思議そうに上層の施策について口にするレビトβに、困ったように笑いつつ、お客様がそれで喜んでくれるのならそれでいいのですけれども……とは、夕依の弁。
「しかし、アンドロイドならば、何か付加価値が欲しいような……やはり電気マッサージ機能を搭載すべきでしょうか、とゼロツーは考えているのですが……」
「あはは、それなら、ナチュラルなゼロツーと夕依のままが一番だよ! 無理をしたって、お客様に伝わっちゃうだろうんでしょう? だったら、『無理』と『頑張る』は、違うと思うし!」
窘めるように言うレビトβは、あくまでゼロツーを案じつつ。
「そういうものでしょうか……」
「そうよ、私もそう思うわ。 ……でもね、私、ちょっと無理とか頑張らないといけないかもしれない悩みが最近できて……」
「悩み?」
はて、と全員が首をかしげた。
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――最近、『身内』を名乗る人物と出会った。無論、アンドロイドに身内も何もあったものじゃないが、こと夕依に関しては特殊である。なんとモデルとなった人物『ユイ』の実弟で、行方不明になった父と『姉』をずっと探していたとのことだ。
「そ、れはまた……グラビティな事情だな……」
「しゅ、修羅場? と申しますか……」
思った以上に重たい話に、イザヨイとUSビイは目を丸くしている。
「ええ……で……どうするんだ、それ」
「どうもこうもないですよ~! どどどどどうしましょう、本物のユイはもう死んでるんですよ!?」
イナバに言われて突っ伏して、足をバタバタさせる夕依は、今にも泣きそうな顔である。
「せめて記憶データとか、インストールできれば、うまいこと誤魔化せるのに……! き、気まずい……!」
泣けていたらえーんえーんと泣いていたであろう、いくらアンドロイドといえど思考回路はほぼ人間と一緒、気まずいと思うこともあれば悲しいすれ違いを感じることもある。作った『父』を深く恨むことはないにしろ、とりあえずややこしい事態には違いなかった。
「死んだ人間に似せた人工知能やアンドロイドを作るのは、倫理観の問題だよな、正直……」
渋い顔をしてみせるKYOに、イナバも腕を組んで頷く。
「まぁ気持ちは分かるぜ? いなくなっちまった大事な人間が居たとして、それがすごくすごく大切すぎて、『全くおんなじ人間』が作れるとしたら俺だってやるかもしんねえ。でも、『全くおんなじ人間』を作るのは難しいわけで……」
結果、こうなっちまってるんだよなあ、としおしおの夕依を見て困った顔だ。
「僕たちはあくまでアンドロイド。Masterたちの代替として働くことはできますが、Masterたちそのものの代替になることは目的とされていませんからね」
確かに、難しい問題です、ゼロツーはそうあとに続く。
「代わり――そうですよね……例えば、僕がゼロツーさんになれないのと同じようなものですもの」
ファータも目を閉じながら思案していて。
「うぅ……私の問題はいささか重たすぎるので……どなたか別の話題お願いします……」
音を上げる他ない。夕依の問題は古今東西のSF作家がどれほど知恵を絞らせても正解というものがない問題である。
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すっかりしおれた花のようになってしまった夕依に、ふーむと切り出すはイナバだ。
「そうするとな……」
四歳くらいの子から、似顔絵をもらったという。勿論データ化して重要ファイルに入れて、大事にロック、メモリに入れて保存しているが――。
「……この原本もとっときたくて。誰か良い方法知らねえ?」
その場の全員が腕を組んで考えこむのは、なかなかどうしてシュールだ。優秀かつ高演算なアンドロイドなのに、こういう時に良い案はすぐに浮かばないあたりは、アンドロイド故なのか、それとも人間に近く設計されている故なのか。
「アナログな手段ですがラミネートしてみるとか……?」
「それだと原本が万一傷ついたら怖いですね……」
「物理媒体として手にとっておきたいのならコピーして入れるというのも手ですが……」
うんうんと唸るアンドロイド達、ぴこん! と効果音がつきそうな顔でひらめいたのはUSビイだ。華やかな笑顔を浮かべて、とっておきのことが浮かんだとでもいいたげにしている。
「でしたら、店内に額縁で飾ってみるのはいかがでしょう!」
「額縁?」
「そうです!」
そうすれば、またご来店してきたとき喜んでもらえるでしょうし! との案に、はい! と手を挙げるはファータだ。
「そうしたら、他のお客様も何か描いてくれたら額縁に飾るのはどうでしょう~きっとみんな喜んでくれますよ~」
「額縁まみれになったら困るが、それはそれでありがたいことだな」
笑うイナバに、そうでしょう! と嬉しそうにファータは頷く。
「じゃあ額縁探すか作るかしないとな……」
「はは、じゃあオレが用意しておこう」
イザヨイはそう笑い、どんな額縁が良いか……と考える。クレヨンで描かれたなんとも微笑ましい絵は、機械の心もあたためることだろう。
●
「話題といえば、私、特定の条件になると、尻尾が動き出して止まらなくなるんです」
少し静かになったところで、神妙な顔で切り出したのはファータだった。
「尻尾が動き出す……バグかなにかか?」
「そうかも知れません……みんなはそんな事あります? これは……メンテナンス受けた方がいいんでしょうか?」
「確かに特定部位が変な挙動をするってのは気になるな……」
KYOは片眉を上げてみせる。
「その『特定の条件』というのは、何なのですか~?」
USビイにたずねられて、ファータはまた神妙に頷いた。
「はい……近所の茶房のお嬢さんに会った時に、よく起こるような気がするんです……」
何か特殊な電波でも出ているのでしょうか……と極めて真面目な顔で言い放つ。
「ハァー! 恋の話は犬も食わねー!」
頭を抱えながら叫ぶはイナバ、はて? 恋とは? とまるきり分かっていない様子である。
「何か変なことでも申し上げてしまいましたでしょうか……?」
「あぁ……」
これはまぶしい……といいたげに夕依は目を細める。アンドロイドの恋、自我、そのようなものもまた古今東西模索されてきたものであるが、ナントカナントカは夢を見るかみたいな話があったがご覧のように立派な有様で――。
「? 皆様の様子からするに、正常な動きなのでしょうか?」
「あのね……」
こしょ、とUSビイが説明してやると、みるみるうちにゼロツーの顔は赤くなる。アンドロイドでもそのような機能はある。
「……は、はぁ……え、ええと、でも、他のお客様の前で尻尾が動き出す挙動は……直した方がいいのかも、しれませんね……?」
「そうですよね!? 突然ぴょこぴょこ動いたら邪魔だし、びっくりしちゃうでしょうし……」
どうしたものでしょう、と言うものの顔はどこか嬉しそうにしている、本当に犬も食わない、とイナバは肩をすくめてみせた。
「恋……か。俺にもそういう機能は備わっているのだろうか」
「考えてみれば気になるよね……」
KYOもレビトβも、思案顔。
「恋っていうのは、なんと申しますか、人間でもアンドロイドでもある種不具合のようなものとお聞きします。存外、我々は人間の方々と変わらないのかもしれませんね」
まとめたものの、果たして人間の方々の言う『春』とやらは我々に来るのかしら――USビイはそう思う。
「うーん、まぁどのみち『衝動』あるところに『恋』ありきだろう。アンドロイドでもそういうものがあれば、まぁ、あるんだろうな」
イザヨイはそう言いながら、その衝動がアンドロイドすべてに来たら、シンギュラリティの一種なのだろうと考えている。
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「さて……よし、KYOの出力以外は正常だな」
「わざわざ言うな」
この場の全員の点検を追えたイザヨイは、完全にアンドロイドというわけではない。ボディは機械化していないために、生化学的なメンテナンスは必要である。ビーカーに吸引濾過したコーヒーの香りのする透明な液体を注ぎ、一口飲んでいた。
「あの……イザヨイさんは、不便しないのでしょうか? たまに生体主義の者はいますが、完全に機械化すると便利ですよ、充電も出力も」
「ああ、まあオレはそういう主義というだけだよ」
そうですか、とイザヨイの返答に対して、素直に引き下がるファータ。人間から義手義足等に換装した半アンドロイドの者は、それぞれに主義や思想がある、触れないというのがお約束というのが常だ。
「しかし、アンタらを見ていると、人間と本当にまるで違いがないな」
「そうでしょうか? 尻尾など明らかに違う部位もございますし、なにより思考ルーチンもプログラムによるものです」
「見た目はあんまり関係ねえんだ、問題は、ココよ」
と、ゼロツーに対して頭をトントンとイザヨイは示す。
「思考ルーチンはプログラムによるものというが、こうして接していると人間とたいして変わらねえ。恋もすりゃあ悩みもする。生体部分があるからこそ『その違いがない』ってことが分かる」
イザヨイの語り口に、この場の全員が興味津々だ。
「――例えば、ただ淡々と仕事をこなすだけの機械なら、KYOは自分の力を気にせずにいただろう。お客様の満足を、とプログラムされていたとしても、プログラムには限度がある。そこに人としての感情が乗っているからこそ、『申し訳ない』と思うし、その改善も『プログラムの更新をしよう』ではなく『努力して直そう』になるわけだ」
言われてみればそうだ、とKYOは思い至る。
「……肉体的な面を省けば、人間とアンドロイドは大差ない、と?」
USビイの言葉に、イザヨイは頷く。
「ああ。……勿論、アンドロイドだってハードがイカれたら壊れるが、それは人間もそうだろう? 耐久力に差がある程度だ。エネルギー源だって、人間は食事が必要で、アンドロイドは充電で、摂取するものが違っていても何かしらの物資がないといけないのは変わりない。再生産されたところで、同じアンドロイドになることは計算上不可能なパターンも多い。いくらバックアップをとっていても、限界がある」
「死んだ人の代わりになれない、っていうのも、生きたヒトと同じですものねー……」
まだ悩みを抱えたままなのか、しょんもりと体育座りしながら夕依もイザヨイの弁に頷く。
「んー、でも、便利なのはアンドロイドじゃないかな、僕は少なくともそう思う。だから人の役に立ちたいんだけどね!」
「ああ、その事実は変わらない。しかし、その『人の役に立ちたい』という考えが人間によるプログラムのものなのか、自立して考えたものかは考えたことはあるか?」
「むむ……人の役に立つことは、当然のことだと思っていたな……」
「ま、こればかりは卵が先か鶏が先かだろ」
レビトβが悩む姿に、イナバは助け舟を出してやった。
「僕だって、みんながやっているようなことを真似してみたいですが、僕は、不器用です。でも、それを何かインストールして解決しようと思ったことは、確かにないな……人間にはできない事ができるのがアンドロイドのに……」
「な? 近道は意外とあるのに、意外と発想が至らんもんだろ」
小首を傾げるファータに、少し難しい話題を出したか、イザヨイは壁に背を預け息をつく。――と、リストバンド型デバイスが心拍音を伝える中が。
――……ピッ、『貴方ノ推シ』ガ、そろ曲ヲ、発表シマシタ。配信さあびすニ接続シ、だうんろおどシマスカ?
――おお、4thカフェの彼女の新曲だと?
さぞかし心拍数の上がる良い曲なのだろう、骨伝導で再生してくれ、と、周りには聞こえず自分で楽しむだけだが。
心拍数が落ちてきている――どうにもチルい曲だったようだ。
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さて、休憩時間はそろそろ終い、各々がプラグを抜いたり充電モードを完了させる。愛しのひとときはこれで完了、レビトβが元気よく全員に声をかける。
「みんな! 元気はいっぱいー!?」
各々が手を上げて、微笑みをたたえて応答する。
人の役に立ちたい! 人とお話してみたい! レビトβの好奇心は、たとえプログラムされたものだとしても尊ぶべきものだろう。そこに悪意は介在せず、ただひたすらに奉仕精神と前向きな感情があるばかりである。
「ようし! それじゃあ、みんな元気に今日もはたらこー!」
快活に笑うレビトβはすでに出入り口の前だ。それぞれが彼についていくように歩き出す。
その顔は、まだ知らぬ客、また見知った客と出会うことの期待と希望に満ちあふれている。
それぞれ悩みはあれど、なにより得難いのはお客様の笑顔!
足取りは軽く、さて今日はどんな風に店を盛り上げようかと考える。
どんなサービスがいいかな、どんな盛り上げ方がいいだろう――。
まぁ、結局は、なんだかんだここのアンドロイド達は、人間が大好きなのだ。だからこそこのカフェは成り立っているし、それは客にも伝わっている。
――口上はさておき、今日も『らぼカフェ☆あふろでぃあ』は盛況になることだろう――彼らの笑顔はお客様もまた、笑顔にするのだから。