聖霊節における卓上遊戯の盤外編――もとい番外編
キャラクターノベル制作 空色みなも納品 2020年12月27日 19時58分40秒
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それは、ルアンナ・ミュラーの姓がまだセラフィアスだった頃。
聖霊節のある日、その情景――。
●
露で真っ白に曇った硝子窓を指でなぞると、そこから覗く外の景色は雪で銀に染まっているような、そんな冷え込んだ朝。
この日はパンクリアース学園の授業も休講となっており、ルアンナは自由な時間をどう過ごそうかと思いを巡らせていた。
「折角の聖霊節だし、出掛けないか?」
そんな中、ルアンナに声をかけてきたのは、学園の同期生にして、共に卓上遊戯倶楽部で活動しているユーリであった。
「一緒にお出掛け! それはいい考えですね」
一日の間やるべきことが無い、という状況をやや手持ち無沙汰に感じていたルアンナは、渡りに船とばかりにユーリの提案に食いついたのであった。
●
ルアンナとユーリの二人が連れ立って市内へと出ると、町は様々な音で賑わっていた。
ガラガラと鳴り響く馬車の車輪の音に、それを引く馬の蹄の音。
それに掻き消されないように負けじと張り上げられる売り子の声。
そして、聖霊節の由来となった神代の英雄を讃える吟遊詩人の歌。
「いやあ、素晴らしい演奏をありがとう」
吟遊詩人の前で足を止めてしばらく歌に聞き入った後、吟遊詩人の足元に置かれていた帽子の中へ、ユーリが投げ銭を入れる。
「こういうのも素敵ですね。なんだか町の音が一つになって、聖霊節という曲を奏でているみたいで」
「セラフィアス君もなかなか粋なことを言うじゃないか」
吟遊詩人が歌う背景では、それに気兼ねするでもなく町の活気が音を立てていたが、ルアンナはそれも合わせて楽しんでいたようであり、ユーリもルアンナのその言葉にいたく感心したようだった。
そうして町の散策を続けていると、町の広場で子供達が遊んでいるのが二人の目に入る。
集めた雪で雪像を作る子供達が居ると思えば、握り固めた雪を投げ合って遊ぶ子供達もおり。
中には足下の雪を踏み固めて氷のようにし、その上で滑って遊ぶ子供たちもいた。
「ふふっ、楽しそうです」
「僕達もやってみるか? 何も卓上遊戯だけが遊戯というわけでもないしな」
子供達を微笑ましく見守るルアンナに、ユーリが面白いことでも思いついたような顔で問いかけた。
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流石に走り回って転ぶわけにもいかないだろう、という意見もあり、二人は雪像を作ることにしていた。
「それは何を作っているんですか?」
「何だと思う? 最後にお互い、相手が何を作ったか当て合おうじゃないか」
ルアンナがそう尋ねたことから分かるように、二人はそれぞれ別々に、ごく小さな雪像を作っていた。
ユーリは答えをはぐらかしつつ、何のことは無い雪像作りすら、ゲームにしてしまう。
「完成しました!」
「おお、これは兎だな? 上手じゃないか」
ルアンナが喜びの声を上げると、完成した雪像を見たユーリはすぐにそのモチーフを言い当ててみせた。
「当たりです! ユーリさんが作ったのは……ひょっとして、アルパカですか?」
「正解だ。どうだ、一目で分かるほど緻密に表現できただろう?」
確かにルアンナはユーリの言うように一度の回答で正解を言い当てることができた。
ただし、それはルアンナがユーリの趣味嗜好を知っていたからこそできた、いわゆるメタな推理というやつで。
ユーリが生み出した雪の塊は、お世辞にも出来栄えが良いとは言えなかったのだが。
「こうして童心に帰って遊ぶのもいいものですね」
「遊戯というのは人の心を豊かにするものだからな」
雪像作りを終え、一息つくことにしたルアンナとユーリは広場のベンチに腰かけていた。
「人は誰であれ、この世に生を受けた以上、心を豊かにする権利がある。セラフィアス君もそうは思わないか?」
「ユーリさん……」
無邪気にはしゃぐ子供達を眺めるユーリから発せられた言葉が思いがけないものであったため、ルアンナは一瞬、戸惑った。
「そうですよね。立場も何もなく、誰だって幸せになっていいはずですよね」
しかし、ルアンナはすぐにユーリの言葉に対して肯定を返した。
それは本来、貴族の坊であるユーリに対して行なう主張ではないかもしれない。
だが、他でもないユーリ自身の意見でもあるため、それによりユーリは気を良くしたようだった。
「おっと、折角の聖霊節だ、楽しまなくてはな。どうだ、もっと町を見て回らないか?」
「ええ、そうしましょう!」
少し雰囲気がしっとりとなってしまったことに気付いたユーリは、気持ちを切り替えようと広場を発つことを提案する。
ルアンナもそれを快く了承し、二人はベンチから立って歩き始めた。
●
「色々な物が売られていて、見ているだけでも飽きないですね」
「今は贈り物の需要もあるし、商売人にとっても書き入れ時なのだろう」
二人で商店街を見て歩きながら、ルアンナはしげしげと陳列された商品を眺めている。
ユーリが指摘した通り、聖霊節という時期に合わせ、各商店もプレゼント商戦を展開しているようだった。
「どうだろう、セラフィアス君。ここで一つ、ゲームをしないか?」
「今ここで、ですか?」
プレゼント用に並べられた商品の列を見ていたユーリが、なんの脈絡もなく唐突な提案を行なった。
とはいえ、ゲームに使えそうな物品の持ち合わせが何もなかったので、ルアンナは不思議な顔をする。
「なに、ちょっとしたクイズのようなものだ。必要な物品などもない」
「わあ、クイズですか」
どうやら、ユーリの言うゲームというのは、問題の答えを当てる類の遊びのようだ。
ルアンナもそれを聞いて面白そうだと思ったのか、ぱあっと顔を明るくする。
「ただし、問題を出すのはセラフィアス君で、当てるのは僕だ」
「でも、私は特に問題の持ち合わせとかないですよ?」
だが出題者は言い出しっぺのユーリではないらしい。
それを聞いたルアンナの表情に再び疑問の色が浮かぶ。
「セラフィアス君はただ、頭の中で何か一つ、単語を思い浮かべればいい。僕はそれが何であるか、当ててみせよう」
「なるほど、そういうことですか」
ユーリの説明に、ルアンナは合点がいったようで、ポンと手を打ってみせた。
「とはいえ、何の取っ掛かりもなしに当てることは流石の僕にもできない」
どうやら、ユーリの言い出したことだけあって、このクイズにも何かしらのギミックがあるようだ。
「僕が質問をしていくから、セラフィアス君はそれに、はい、いいえ、どちらとも言えない、のどれかで答えてくれ」
どうやらユーリは質問の答えをヒントにするつもりらしい。
無論、正解を直接問う質問を許しては意味がない、ということで、ルアンナがその三通りの言葉で答えられる質問に限る、とするようだ。
「あと、単語のテーマを決めよう。そうだな……プレゼントして貰えたら嬉しい物、というのではどうだ?」
「ええ、いいですよ。じゃあ、何を問題にするか考えますね!」
ユーリの決めたテーマをルアンナは特に深く意味も考えず受け入れ、ここに二人によるゲームが始まった。
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ゲームに興じ始めた二人を、物陰からひっそりと観察する影が一つ。
はたから見れば不審者にしか思えないが、何も悪いことを考えている者ではない。
「ユーリ様……欲しい贈り物をさりげなく探るようには私も申し上げましたが、全然さりげなくないですね」
二人を観察する影は、ユーリの召使であるクラウスであった。
デートのつもりはルアンナにはないかもしれないが、クラウスはあらかじめユーリにデートの心得を指南するとともに、その成否を見守っていたのだった。
「まあ、セラフィアスさんも意図に気づいた様子はないようですし、なにより見ていて面白いので良しとしましょうか」
ある意味、今行われているゲームの元凶とも言えるクラウスは、くすりと笑うと、そのまま二人の見守りを継続したのだった。
●
「まず最初に聞こう。それは形のある、というか、実際に触ることのできるような、物品であろうか?」
「はい、ちゃんと物品ですよ。テーマが贈り物、ですし」
ユーリが最初に行った問いに、ルアンナは肯定を返した。
そのことに対し、ユーリは秘かに胸を撫で下ろしていた。
もし形のない概念のような贈り物を望まれていたら困ったのだろう。
「それは生き物だったりするか?」
「いいえ、生き物ではないです」
ユーリは次々と質問を重ね、ルアンナもそれにトントンと答えていく。
質問によりさらに判明したヒントは次の通り。
それは、食べる物ではない。
それは、身に着ける物ではない。
それは、飾りつけに使う物ではない。
それは――手に持って使うものである。
「ふむ……セラフィアス君が欲しいのはもしかして、ゲームであろうか?」
「正解です!」
ユーリが見事に正解へ辿り着いたことに対し、ルアンナはそこで拍手を送った。
「しかしゲームであれば、部に来れば沢山あるぞ?」
「そうなんですけど、手元に置いておける物があればいいなって思って。見ているだけで楽しい物も多いですし、それに」
ユーリの疑問に答えるルアンナは、そこで一旦、言葉を切った。
「自分のゲームを持っていれば、皆さんと遊んだ思い出をいつまでも残せるんじゃないか、なんだかそんな風に思ったんです」
ルアンナはユーリの目を真っすぐ見つめながら、ニッコリと微笑んだ。
「セラフィアス君……」
ユーリは胸をドキリとさせてしまい、言葉に詰まってしまう。
「さあ、今度はユーリさんが問題を出してください。私も当ててみたいです♪」
「そ、そうだな」
ルアンナは、目の前に居るユーリが顔をかすかに赤く染めているのに気づいていないのか、無邪気に出題をせがんだ。
ここで、ユーリはその様子をこっそり見ているクラウスに目配せを送った。
それを受けたクラウスは、主人の意図をすぐに察したようで、急ぎ足でその場を離れた。
クラウスの向かう先は――部で使うゲームを保管する、ユーリの寮室である。
それは、ルアンナ・ミュラーの姓がまだセラフィアスだった頃。
聖霊節のある日、その情景――。
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露で真っ白に曇った硝子窓を指でなぞると、そこから覗く外の景色は雪で銀に染まっているような、そんな冷え込んだ朝。
この日はパンクリアース学園の授業も休講となっており、ルアンナは自由な時間をどう過ごそうかと思いを巡らせていた。
「折角の聖霊節だし、出掛けないか?」
そんな中、ルアンナに声をかけてきたのは、学園の同期生にして、共に卓上遊戯倶楽部で活動しているユーリであった。
「一緒にお出掛け! それはいい考えですね」
一日の間やるべきことが無い、という状況をやや手持ち無沙汰に感じていたルアンナは、渡りに船とばかりにユーリの提案に食いついたのであった。
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ルアンナとユーリの二人が連れ立って市内へと出ると、町は様々な音で賑わっていた。
ガラガラと鳴り響く馬車の車輪の音に、それを引く馬の蹄の音。
それに掻き消されないように負けじと張り上げられる売り子の声。
そして、聖霊節の由来となった神代の英雄を讃える吟遊詩人の歌。
「いやあ、素晴らしい演奏をありがとう」
吟遊詩人の前で足を止めてしばらく歌に聞き入った後、吟遊詩人の足元に置かれていた帽子の中へ、ユーリが投げ銭を入れる。
「こういうのも素敵ですね。なんだか町の音が一つになって、聖霊節という曲を奏でているみたいで」
「セラフィアス君もなかなか粋なことを言うじゃないか」
吟遊詩人が歌う背景では、それに気兼ねするでもなく町の活気が音を立てていたが、ルアンナはそれも合わせて楽しんでいたようであり、ユーリもルアンナのその言葉にいたく感心したようだった。
そうして町の散策を続けていると、町の広場で子供達が遊んでいるのが二人の目に入る。
集めた雪で雪像を作る子供達が居ると思えば、握り固めた雪を投げ合って遊ぶ子供達もおり。
中には足下の雪を踏み固めて氷のようにし、その上で滑って遊ぶ子供たちもいた。
「ふふっ、楽しそうです」
「僕達もやってみるか? 何も卓上遊戯だけが遊戯というわけでもないしな」
子供達を微笑ましく見守るルアンナに、ユーリが面白いことでも思いついたような顔で問いかけた。
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流石に走り回って転ぶわけにもいかないだろう、という意見もあり、二人は雪像を作ることにしていた。
「それは何を作っているんですか?」
「何だと思う? 最後にお互い、相手が何を作ったか当て合おうじゃないか」
ルアンナがそう尋ねたことから分かるように、二人はそれぞれ別々に、ごく小さな雪像を作っていた。
ユーリは答えをはぐらかしつつ、何のことは無い雪像作りすら、ゲームにしてしまう。
「完成しました!」
「おお、これは兎だな? 上手じゃないか」
ルアンナが喜びの声を上げると、完成した雪像を見たユーリはすぐにそのモチーフを言い当ててみせた。
「当たりです! ユーリさんが作ったのは……ひょっとして、アルパカですか?」
「正解だ。どうだ、一目で分かるほど緻密に表現できただろう?」
確かにルアンナはユーリの言うように一度の回答で正解を言い当てることができた。
ただし、それはルアンナがユーリの趣味嗜好を知っていたからこそできた、いわゆるメタな推理というやつで。
ユーリが生み出した雪の塊は、お世辞にも出来栄えが良いとは言えなかったのだが。
「こうして童心に帰って遊ぶのもいいものですね」
「遊戯というのは人の心を豊かにするものだからな」
雪像作りを終え、一息つくことにしたルアンナとユーリは広場のベンチに腰かけていた。
「人は誰であれ、この世に生を受けた以上、心を豊かにする権利がある。セラフィアス君もそうは思わないか?」
「ユーリさん……」
無邪気にはしゃぐ子供達を眺めるユーリから発せられた言葉が思いがけないものであったため、ルアンナは一瞬、戸惑った。
「そうですよね。立場も何もなく、誰だって幸せになっていいはずですよね」
しかし、ルアンナはすぐにユーリの言葉に対して肯定を返した。
それは本来、貴族の坊であるユーリに対して行なう主張ではないかもしれない。
だが、他でもないユーリ自身の意見でもあるため、それによりユーリは気を良くしたようだった。
「おっと、折角の聖霊節だ、楽しまなくてはな。どうだ、もっと町を見て回らないか?」
「ええ、そうしましょう!」
少し雰囲気がしっとりとなってしまったことに気付いたユーリは、気持ちを切り替えようと広場を発つことを提案する。
ルアンナもそれを快く了承し、二人はベンチから立って歩き始めた。
●
「色々な物が売られていて、見ているだけでも飽きないですね」
「今は贈り物の需要もあるし、商売人にとっても書き入れ時なのだろう」
二人で商店街を見て歩きながら、ルアンナはしげしげと陳列された商品を眺めている。
ユーリが指摘した通り、聖霊節という時期に合わせ、各商店もプレゼント商戦を展開しているようだった。
「どうだろう、セラフィアス君。ここで一つ、ゲームをしないか?」
「今ここで、ですか?」
プレゼント用に並べられた商品の列を見ていたユーリが、なんの脈絡もなく唐突な提案を行なった。
とはいえ、ゲームに使えそうな物品の持ち合わせが何もなかったので、ルアンナは不思議な顔をする。
「なに、ちょっとしたクイズのようなものだ。必要な物品などもない」
「わあ、クイズですか」
どうやら、ユーリの言うゲームというのは、問題の答えを当てる類の遊びのようだ。
ルアンナもそれを聞いて面白そうだと思ったのか、ぱあっと顔を明るくする。
「ただし、問題を出すのはセラフィアス君で、当てるのは僕だ」
「でも、私は特に問題の持ち合わせとかないですよ?」
だが出題者は言い出しっぺのユーリではないらしい。
それを聞いたルアンナの表情に再び疑問の色が浮かぶ。
「セラフィアス君はただ、頭の中で何か一つ、単語を思い浮かべればいい。僕はそれが何であるか、当ててみせよう」
「なるほど、そういうことですか」
ユーリの説明に、ルアンナは合点がいったようで、ポンと手を打ってみせた。
「とはいえ、何の取っ掛かりもなしに当てることは流石の僕にもできない」
どうやら、ユーリの言い出したことだけあって、このクイズにも何かしらのギミックがあるようだ。
「僕が質問をしていくから、セラフィアス君はそれに、はい、いいえ、どちらとも言えない、のどれかで答えてくれ」
どうやらユーリは質問の答えをヒントにするつもりらしい。
無論、正解を直接問う質問を許しては意味がない、ということで、ルアンナがその三通りの言葉で答えられる質問に限る、とするようだ。
「あと、単語のテーマを決めよう。そうだな……プレゼントして貰えたら嬉しい物、というのではどうだ?」
「ええ、いいですよ。じゃあ、何を問題にするか考えますね!」
ユーリの決めたテーマをルアンナは特に深く意味も考えず受け入れ、ここに二人によるゲームが始まった。
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ゲームに興じ始めた二人を、物陰からひっそりと観察する影が一つ。
はたから見れば不審者にしか思えないが、何も悪いことを考えている者ではない。
「ユーリ様……欲しい贈り物をさりげなく探るようには私も申し上げましたが、全然さりげなくないですね」
二人を観察する影は、ユーリの召使であるクラウスであった。
デートのつもりはルアンナにはないかもしれないが、クラウスはあらかじめユーリにデートの心得を指南するとともに、その成否を見守っていたのだった。
「まあ、セラフィアスさんも意図に気づいた様子はないようですし、なにより見ていて面白いので良しとしましょうか」
ある意味、今行われているゲームの元凶とも言えるクラウスは、くすりと笑うと、そのまま二人の見守りを継続したのだった。
●
「まず最初に聞こう。それは形のある、というか、実際に触ることのできるような、物品であろうか?」
「はい、ちゃんと物品ですよ。テーマが贈り物、ですし」
ユーリが最初に行った問いに、ルアンナは肯定を返した。
そのことに対し、ユーリは秘かに胸を撫で下ろしていた。
もし形のない概念のような贈り物を望まれていたら困ったのだろう。
「それは生き物だったりするか?」
「いいえ、生き物ではないです」
ユーリは次々と質問を重ね、ルアンナもそれにトントンと答えていく。
質問によりさらに判明したヒントは次の通り。
それは、食べる物ではない。
それは、身に着ける物ではない。
それは、飾りつけに使う物ではない。
それは――手に持って使うものである。
「ふむ……セラフィアス君が欲しいのはもしかして、ゲームであろうか?」
「正解です!」
ユーリが見事に正解へ辿り着いたことに対し、ルアンナはそこで拍手を送った。
「しかしゲームであれば、部に来れば沢山あるぞ?」
「そうなんですけど、手元に置いておける物があればいいなって思って。見ているだけで楽しい物も多いですし、それに」
ユーリの疑問に答えるルアンナは、そこで一旦、言葉を切った。
「自分のゲームを持っていれば、皆さんと遊んだ思い出をいつまでも残せるんじゃないか、なんだかそんな風に思ったんです」
ルアンナはユーリの目を真っすぐ見つめながら、ニッコリと微笑んだ。
「セラフィアス君……」
ユーリは胸をドキリとさせてしまい、言葉に詰まってしまう。
「さあ、今度はユーリさんが問題を出してください。私も当ててみたいです♪」
「そ、そうだな」
ルアンナは、目の前に居るユーリが顔をかすかに赤く染めているのに気づいていないのか、無邪気に出題をせがんだ。
ここで、ユーリはその様子をこっそり見ているクラウスに目配せを送った。
それを受けたクラウスは、主人の意図をすぐに察したようで、急ぎ足でその場を離れた。
クラウスの向かう先は――部で使うゲームを保管する、ユーリの寮室である。