それは酒が見せた夢

キャラクターノベル(グループ)制作 ウケッキ納品 2024年03月10日 12時42分02秒

●それは酒が見せた夢

 自宅の居間にて、仲睦まじい夫婦【アリッグ・レイダー】と【シルク・メイプルリーフ】が戯れている。
 体の大きなシルクに抱き締められ、膝の上で赤い顔をしているアリッグは恥ずかしそうにしているが逃げようともがいたりはしない。
「可愛いですね、アリッグさんは。もうっ、食べちゃいたいぐらいですっ」
 ぎゅっと抱き締められたアリッグはシルクの豊満な胸に顔が埋まる。息ができないが、幸せというものだろう。旦那だけの特権でもある。
「い、息がぁっ、でき、できな、あぁぁ!」
「あ、すいません。つい、アリッグさんが可愛いもので」
 しなっと身体をくねらせ、シルクはアリッグを見つめる。とても可愛らしい姿を見て、再びアリッグは真っ赤になった。
 そうだ、とシルクは横に置いていた袋から【千匹仔・森黒山羊】と禍々しい文字で書かれた酒瓶を取り出す。見るからに不穏な名前にアリッグはジト目で酒を見た。
「おい、なんだそのヤバそうな酒は!? 絶対、飲んじゃダメなもんだろ!?」
 慌てるアリッグをしっかりと抱き締めて拘束すると、彼の目の前で酒瓶を開けコップに注いでいく。何やら怪しい匂いが立ち込めていた。液体の色は紫系のマーブル模様で実に身体に悪そうだ。
「大丈夫ですよ、美味しいらしいので」
 コップを持ってぐいっと飲んだシルクは惚けた表情をした。どうやら本当に美味しいらしい。
「アリッグさんもどうですか? 美味しいですよ」
「いやいや、そんな筈ないだろ!? だって、この色と匂いだぞ!?」
 全力で拒否するアリッグを見て、シルクは困ったような表情を浮かべた。
「困りましたねぇ……あ、そうだ。これなら――んっ」
「待て、何を――むぐぐぅうーーっ!」
 酒を含んだまま、ちゅっと口づけをしたシルクは口移しで酒をアリッグに飲ませる。じたばたと暴れるアリッグだが、当然抜け出すことはできない。
 ぷはっと口を離し、やっとのことで呼吸をするアリッグはシルクを見た。
「本当に遠慮がなくなってきたな……って何だ、眠気が、すご、くぅ……すやぁ」
「あれ? アリッグさん、おねむですか? ふわぁ……私もなんだか、眠く、なって……すぅ、すぅ」
 アリッグを抱きしめたまま、シルクは彼と共に眠ってしまったのだった。

 ハッと目を覚ましたアリッグは不可思議な世界にいた。現実と似ているが、色が実に薄い。空もあの酒と同じ怪しいマーブル模様となっていた。
「なんだ、あれ……って、ん? 視線が高いし、声が……?」
 何やら普段よりも高い声に自分の声が聞こえる。聞き覚えのあるその声に首を傾げながら眼下を見る。そこにはシルクの豊満な乳房があった。
「え? はぁぁ!? お、俺が……シルクになってるぅ!?」
 高い身長、大きな胸。形の良い尻に綺麗な足。どこからどう見てもその身体はシルクそのものだった。
 となると彼も男子故、気になってしまうのはその胸だ。ゆっくりと、恐る恐る胸に手を伸ばす。むにゅっと指が自分の胸に沈み込んだ。
「改めて触ってみるとやっぱ大きい……柔らかさも――」
「なるほどそんなところにご興味が……」
 聞き覚えのある声にバッと振り向くとそこには自分がいた。そう、アリッグが立っているのだ。
「お、おまっ……まさかっ!」
「はい、私はシルクですよ。どうやら身体が入れ替わっちゃったみたいですね。それにしても、お胸が……そんなに好きだったとは」
 そう言われていまだに乳を揉んでいた自分の手に気づき、アリッグは素早く手を離す。赤面しながらアリッグはそっぽを向いた。
「いえいえ、いいんですよ? 好きなだけ堪能しても。私たち、夫婦なんですから」
「それは、そうだけど! そ、そういえば、この服ってかなり動きづらいんだな? ろ、露出も多くてスースーするしっ!」
(話を逸らしましたね、ふふ。そんな所も可愛いです)
 恥ずかしさを隠す為なのだろう、話を逸らしたアリッグへシルクはそれならば服を買いに行こうと提案した。
「ここはどういう所であれ、活動しやすい服を得るのはアリだと思うんです」
「そ、そうだな! うん、行こう! 今すぐにッ!」
 羞恥心で真っ赤になったアリッグはシルクの手を引いて進む。いつもと違い、低い目線でアリッグに手を引かれることにシルクは笑みを零す。たまには、こういうのもありだと。

 服飾店に辿り着いた二人は互いに似合うコーディネートをして見せあうことにしたようだ。
 数十分後、二人だけのファッションショーが始まる。
 まず、見せたのはアリッグだ。露出の少ない男性用の服を組み合わせ、男装風に仕上げたようだ。腰に括りつけた小さな帽子がワンポイントらしい。
「こういうのもアリだろ?」
「男性用の服も案外似合うものですね。それじゃあ、次は私が」
 そういって試着室に消え、少しして現れたシルクを見てアリッグは驚愕した。
 フリルとリボンがふんだんに使われたミニドレス、足にはガーターベルト。赤い少女用の靴が何とも可愛らしい。頭には小さなクラウンを斜めに乗せていた。勿論、身体はアリッグの身体である。
「どうですか? ふふ、とっても可愛いでしょう?」
 自分の目の前で可愛らしく小首を傾げて見せる姿に、アリッグは絶句している。
「あれ? あ、もしかして可愛すぎて衝撃受けました!?」
「お、俺の身体でそんな服着るなぁあーー!」
 更に身体を飾り立てようとしたシルクを取り押さえようと走ったアリッグは、彼女と頭をぶつけてしまう。二人共、そのまま気を失ってしまった。

 マーブル模様の空間をシルクに抱き締められながらアリッグは流れていく。
 朦朧とする彼の前に、黒い闇を纏った、のたうつ触手の塊が現れる。それは山羊のような頭がいくつも浮かんでは沈んでいるようだ。
「な、んだ……あれは……」
 意識を集中すると何か、それは声を発しているように思える。だがその声は水の中で発せられているが如く、はっきりとしない。
「なんて、言ってる? え? かわ、いい、は……せい、ぎ?」
 そこまで聞き取れた段階で彼の意識は失われた。
 目を覚ますと、そこはいつもの部屋。先程まで酒を飲んでいた居間だ。
 あれは、夢だったのだろうかとアリッグはぼーっと考える。
 バッとアリッグは自分の身体を確認する。ちゃんと自分自身の身体に戻っていたことに安堵した。
「それにしても、あれなんだったんだろうな。あとでシルクに聞いてみるか……」
 アリッグの話を聞いたシルクが驚愕したのは言うまでもない。
 一体あれは何だったのか。
 それは酒が見せた幻か。それとも現実か。
 真相は不明のままである。

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0