コルネリウス・アーラという森人の話①
コルネリウス・アーラ更新 2025年04月08日 09時34分10秒
彼女にとっての『祈り』とは何か。家族とは何か。
■彼女のルーツと『祈り』について
コルネリウスは、よく空に祈りを捧げている。
それは彼女の冒険者としての生き方に密接につながっている。
コルネリウスの『冒険者』としての始まりは、一通の手紙だった。
一足先に実家を出て、帝国で従事していた兄の殉死の知らせ。数年前に既に姉を失い、兄にもよく懐いていた彼女には理不尽で悲しい出来事だった。
――父さんが毎日空に祈っているのを知っていたから。
――私達の幸福を、兄さんの健勝を、神に願っていると解っていたから。
だからコルネリウスは、神様が嫌いだった。願いは叶わないのに、それでも父が祈る理由も解らなかった。
感情を思う侭にぶつけて、その答えを知るために家を飛び出した。(※1)
冒険者を続ける中で、彼女なりのひとつの答えに辿り着く。
神様嫌い自体は、割と早い段階で自分の中で決着はついた。
願うだけではその命を救うことも、元に戻すことも出来ないけれど。
手が届かないからこそ、せめて想いを届けてくれるようにと、神や空に願うのかもしれないと。
これが正解とは言えないし思わない、けれどこれが当時の彼女なりの落としどころだった。
この辺りで神様への一方的な風評被害は区切りがつく。
冒険者として更に歩みを深めていくと、友人や良縁に恵まれ大切なものや護りたいものがどんどん増えていく。
手が届くものはすべて護りたい、目に見えるものは助けたい。
それは元来からのコルネリウスの気質だった。
けれど、強くなるほどに学ぶほどに、手から零れ落ちていくものも手が届かないものも増えていく。
そうして「取捨選択」が必要になった。
だから、自分が選ぶことが出来なかった、けれど大切にしたいものはせめて「祈る」という形を取るようになる。
ここで、父の気持ちが更によくよく解るようになった。
あちこちを旅している寝食を疎かにしがちなおじさまとか。
徹夜で研究をしてそのまま床で寝がちな父とか。
幸せにすごしている友人夫婦とか。
森人にも関わらず自分を慕ってくれた元部下達とか。
勿論、何かあればすぐに駆け付ける心算ではあるのだけれど。
其々が其々の道を歩み始めた今、いつでもそれが出来るという確約はない。
だからコルネリウスは遠く離れた地から、彼らの幸福と健勝を日々願う。
これが彼女の『祈り』に対する疑問の着地点となった。
だから今日も、彼女は空に祈っている。大切なひとたちに願いが届くようにと。
■家族について
『取り換え子』として生まれて直ぐに唯人の赤子と入れ替えられた結果、同じ森人の養父に拾われた。
本来の生まれ故郷である村に今も存在する『取り換え子』の悪習について、表向き「ハイアルヴの宣託」とされているが、その真偽は定かではない。(――おそらくそれは虚象だと、誰もが気づいてはいる。悪習が悪習のまま断ち切られない所以)
同じ村から連れ帰り、父に託した赤子(後のフェアエ)は彼女の唯一の血縁の可能性もあるかもしれないし、ないかもしれないが。
彼らにとってそれは気に留めるほどでもない、些細な事である。
■養父について
フェアロス・アーラ・アスプロス。
彼がいなくては始まらなかった、コルネリウスにとって無くてはならない最も大きな存在のひとり。
森の賢者と呼ばれ、各地を旅しながらエーテルの研究を続ける変わり者の森人。クライス氏に助力した事で、割とまぁまぁすごい人なのではないか。という疑惑がある。
エーテル研究者となった切っ掛けは、ある日ふらっと森の外に出てみたら知らないことが溢れていてエーテルに興味を持つようになった。
気づいたらすっかりハマっていました。という変態の部類。自身の学びや研究結果が世の役に立つのであれば喜んで協力する、というタイプ。ただ争いは好まないので極力避けたい。
このフェアロスという男は非常に穏やかな性質の持ち主で、声を荒げる姿は誰も見たことがないという。
年の功、というものはあるにせよまだまだエルフとしては若い部類のはずなのだが。
浮いた話も故郷に居た頃から別に無かったとかなんとか。
つまり枯れているといって良い。
そして娘(※ここでいう娘とは全てコルネリウスの事を指す)の軽率な行動の結果「ナニが(何がだろうね)大きい」で一部にすっかり周知されてしまった不名誉を持つかわいそうな父でもある。ちょいちょい擦られる度にのらりくらりとかわしている。
尚、本人はまさに寝耳に水であった為、立ち寄ったギルドで一連の流れを知って大層驚いたという小話がある。
その後も娘の同様の行動は計3度程度に及び、全て本人の耳に入っている。
神(仏)の顔も三度まで。叱責後は一応納まった模様。
閑話休題。
さかのぼって二十数年前。
フェアロスは旅先で見かけた孤児の子(後にコルネリウスの兄にあたる唯人の子供)に懐かれて以来、フィルエスの辺境で子を育てるようになる。
とはいえ、娘ほどお人好しというわけではなく。基本的に彼は孤児を拾うにも、偶然その時に、この手が空いていたから。という理由でしか連れて帰ることは出来ないし行動にも起こさない。
が、拾ったからにはきっちりと教育は施す。たとえ自分より短命な種であろうとも、長命種として得た知識は次世代へと繋げるのも自分の役目であると考えている故。
彼が子を拾うのは前述のとおり偶然と縁が重なる結果だが、ひとを育てる事に喜びを感じる人種であるというのが彼の根っこにあるのかもしれない。
息子を拾ってしばらく。彼も独りでは寂しかろうと思っていた矢先に、偶然ハーフリングと幼いハーフビーストを保護するが予想に反して彼らの仲は最悪だった。その後、長らくの間末妹となるコルネリウスを拾うまでは。
自分も含め、全員の種族が異なるうえに全員既に物心はついている。当然といえば当然である。
コルネリウスを拾った直後も「ある小さな事件」(※2)が起きるまでは変わらず家族仲は険悪だったが、新しくやってきた小さな赤子が結果的に家族を繋げたという事実には相違なかった。
そして、子は全員を分け隔てなく愛しているつもりではあるものの。コルネリウスは自分と同じ森人でもあり、拾った時点で生後間もない乳飲み子であった事も含めて彼女への入れ込みが最も強いと指摘されれば、フェアロスも否定することは出来ない様子。
余談だが、拾った森人の子につけた「コルネリウス」という名は一般的に男性名である(女性名はコルネリア)
何故、敢えて男性名としたのか。
フェアロス自身の名はフェアは妖精という意味合いを持ち、フェアロスで「花の精」を意味している為、花繋がりで娘の名は古くから花の神として知られるクロリスを由来としている。
つまり意図して男性名とした訳ではなかったりする。名づけは初心者だから仕方がない。
フェアロスに普段は飲酒は習慣はないものの、飲ませれば無限に飲む。
酒自体は好きであるし、付き合いでは飲むものの、ちっとも酔わないから自発的には飲まないというだけ。
ノベル「おっさんズPUB」では見事に酒豪ぶりを発揮している。
ティーチャーを見ても特にさらっと流している点については、害してこないものなら邪悪だろうが変質者だろうがこちらからアクションは起こさないというスタンスがある為である。面倒事を極力避けるためのライフハック。
長年あちこちを渡り歩いている故、顔は広いが親しい友人というものは長年居なかった為、酒を飲めるおじ友が出来たのは嬉しい様子。
戦闘に関しては高Lv治癒士であり、ノベル「授恵者の本領」でも見てわかる通り高い戦闘能力を有している。多勢に無勢とは?
一人旅が多い故に戦闘訓練もしっかり行ってはいるものの、自称『戦闘は不得手』な為、前述のとおり戦いは避けられそうなら避けたい。
コルネリウスへの戦闘技術の指導については、彼女自身がウォーリアであった為、剣に長けていた長兄に任せており、畑違いということで自分からは基礎の護身術程度しか教えていない。
その為、冒険者として共に依頼をこなすことになった際、すっかり壁エルフと化していた娘の姿には内心驚いた模様。
最後にフェアロスの近況であるが、帝国崩壊前後と変わらず今もエーテルの研究を続けている。
家の事はすっかり大人になった次女ライラックに任せきりである事に若干申し訳なさを感じているようではあるが。
コルネリウスとの月1通の手紙の交流は今も変わらず続けており、彼女が王国で日々を忙しなく過ごす様子を見守っている。
既に答えも大切なものも見つけて歩んでいる彼女に対し、子としては手から離れたといっても良いのだろうが。愛する娘であることはこれから先も変わりなく。
いつか必ず、長命種として彼女は別れの道を通ることになる。その時に最後まで、父として支えることが自分の役目の一つである、と今は考えている。
●tips
※1『家を飛び出した』→プロローグノベル「空に捧げる祈りとは」
※2『ある小さな事件』→史実ノベル「成長は子供達と共に」
コルネリウスは、よく空に祈りを捧げている。
それは彼女の冒険者としての生き方に密接につながっている。
コルネリウスの『冒険者』としての始まりは、一通の手紙だった。
一足先に実家を出て、帝国で従事していた兄の殉死の知らせ。数年前に既に姉を失い、兄にもよく懐いていた彼女には理不尽で悲しい出来事だった。
――父さんが毎日空に祈っているのを知っていたから。
――私達の幸福を、兄さんの健勝を、神に願っていると解っていたから。
だからコルネリウスは、神様が嫌いだった。願いは叶わないのに、それでも父が祈る理由も解らなかった。
感情を思う侭にぶつけて、その答えを知るために家を飛び出した。(※1)
冒険者を続ける中で、彼女なりのひとつの答えに辿り着く。
神様嫌い自体は、割と早い段階で自分の中で決着はついた。
願うだけではその命を救うことも、元に戻すことも出来ないけれど。
手が届かないからこそ、せめて想いを届けてくれるようにと、神や空に願うのかもしれないと。
これが正解とは言えないし思わない、けれどこれが当時の彼女なりの落としどころだった。
この辺りで神様への一方的な風評被害は区切りがつく。
冒険者として更に歩みを深めていくと、友人や良縁に恵まれ大切なものや護りたいものがどんどん増えていく。
手が届くものはすべて護りたい、目に見えるものは助けたい。
それは元来からのコルネリウスの気質だった。
けれど、強くなるほどに学ぶほどに、手から零れ落ちていくものも手が届かないものも増えていく。
そうして「取捨選択」が必要になった。
だから、自分が選ぶことが出来なかった、けれど大切にしたいものはせめて「祈る」という形を取るようになる。
ここで、父の気持ちが更によくよく解るようになった。
あちこちを旅している寝食を疎かにしがちなおじさまとか。
徹夜で研究をしてそのまま床で寝がちな父とか。
幸せにすごしている友人夫婦とか。
森人にも関わらず自分を慕ってくれた元部下達とか。
勿論、何かあればすぐに駆け付ける心算ではあるのだけれど。
其々が其々の道を歩み始めた今、いつでもそれが出来るという確約はない。
だからコルネリウスは遠く離れた地から、彼らの幸福と健勝を日々願う。
これが彼女の『祈り』に対する疑問の着地点となった。
だから今日も、彼女は空に祈っている。大切なひとたちに願いが届くようにと。
■家族について
『取り換え子』として生まれて直ぐに唯人の赤子と入れ替えられた結果、同じ森人の養父に拾われた。
本来の生まれ故郷である村に今も存在する『取り換え子』の悪習について、表向き「ハイアルヴの宣託」とされているが、その真偽は定かではない。(――おそらくそれは虚象だと、誰もが気づいてはいる。悪習が悪習のまま断ち切られない所以)
同じ村から連れ帰り、父に託した赤子(後のフェアエ)は彼女の唯一の血縁の可能性もあるかもしれないし、ないかもしれないが。
彼らにとってそれは気に留めるほどでもない、些細な事である。
■養父について
フェアロス・アーラ・アスプロス。
彼がいなくては始まらなかった、コルネリウスにとって無くてはならない最も大きな存在のひとり。
森の賢者と呼ばれ、各地を旅しながらエーテルの研究を続ける変わり者の森人。クライス氏に助力した事で、割とまぁまぁすごい人なのではないか。という疑惑がある。
エーテル研究者となった切っ掛けは、ある日ふらっと森の外に出てみたら知らないことが溢れていてエーテルに興味を持つようになった。
気づいたらすっかりハマっていました。という変態の部類。自身の学びや研究結果が世の役に立つのであれば喜んで協力する、というタイプ。ただ争いは好まないので極力避けたい。
このフェアロスという男は非常に穏やかな性質の持ち主で、声を荒げる姿は誰も見たことがないという。
年の功、というものはあるにせよまだまだエルフとしては若い部類のはずなのだが。
浮いた話も故郷に居た頃から別に無かったとかなんとか。
つまり枯れているといって良い。
そして娘(※ここでいう娘とは全てコルネリウスの事を指す)の軽率な行動の結果「ナニが(何がだろうね)大きい」で一部にすっかり周知されてしまった不名誉を持つかわいそうな父でもある。ちょいちょい擦られる度にのらりくらりとかわしている。
尚、本人はまさに寝耳に水であった為、立ち寄ったギルドで一連の流れを知って大層驚いたという小話がある。
その後も娘の同様の行動は計3度程度に及び、全て本人の耳に入っている。
神(仏)の顔も三度まで。叱責後は一応納まった模様。
閑話休題。
さかのぼって二十数年前。
フェアロスは旅先で見かけた孤児の子(後にコルネリウスの兄にあたる唯人の子供)に懐かれて以来、フィルエスの辺境で子を育てるようになる。
とはいえ、娘ほどお人好しというわけではなく。基本的に彼は孤児を拾うにも、偶然その時に、この手が空いていたから。という理由でしか連れて帰ることは出来ないし行動にも起こさない。
が、拾ったからにはきっちりと教育は施す。たとえ自分より短命な種であろうとも、長命種として得た知識は次世代へと繋げるのも自分の役目であると考えている故。
彼が子を拾うのは前述のとおり偶然と縁が重なる結果だが、ひとを育てる事に喜びを感じる人種であるというのが彼の根っこにあるのかもしれない。
息子を拾ってしばらく。彼も独りでは寂しかろうと思っていた矢先に、偶然ハーフリングと幼いハーフビーストを保護するが予想に反して彼らの仲は最悪だった。その後、長らくの間末妹となるコルネリウスを拾うまでは。
自分も含め、全員の種族が異なるうえに全員既に物心はついている。当然といえば当然である。
コルネリウスを拾った直後も「ある小さな事件」(※2)が起きるまでは変わらず家族仲は険悪だったが、新しくやってきた小さな赤子が結果的に家族を繋げたという事実には相違なかった。
そして、子は全員を分け隔てなく愛しているつもりではあるものの。コルネリウスは自分と同じ森人でもあり、拾った時点で生後間もない乳飲み子であった事も含めて彼女への入れ込みが最も強いと指摘されれば、フェアロスも否定することは出来ない様子。
余談だが、拾った森人の子につけた「コルネリウス」という名は一般的に男性名である(女性名はコルネリア)
何故、敢えて男性名としたのか。
フェアロス自身の名はフェアは妖精という意味合いを持ち、フェアロスで「花の精」を意味している為、花繋がりで娘の名は古くから花の神として知られるクロリスを由来としている。
つまり意図して男性名とした訳ではなかったりする。名づけは初心者だから仕方がない。
フェアロスに普段は飲酒は習慣はないものの、飲ませれば無限に飲む。
酒自体は好きであるし、付き合いでは飲むものの、ちっとも酔わないから自発的には飲まないというだけ。
ノベル「おっさんズPUB」では見事に酒豪ぶりを発揮している。
ティーチャーを見ても特にさらっと流している点については、害してこないものなら邪悪だろうが変質者だろうがこちらからアクションは起こさないというスタンスがある為である。面倒事を極力避けるためのライフハック。
長年あちこちを渡り歩いている故、顔は広いが親しい友人というものは長年居なかった為、酒を飲めるおじ友が出来たのは嬉しい様子。
戦闘に関しては高Lv治癒士であり、ノベル「授恵者の本領」でも見てわかる通り高い戦闘能力を有している。多勢に無勢とは?
一人旅が多い故に戦闘訓練もしっかり行ってはいるものの、自称『戦闘は不得手』な為、前述のとおり戦いは避けられそうなら避けたい。
コルネリウスへの戦闘技術の指導については、彼女自身がウォーリアであった為、剣に長けていた長兄に任せており、畑違いということで自分からは基礎の護身術程度しか教えていない。
その為、冒険者として共に依頼をこなすことになった際、すっかり壁エルフと化していた娘の姿には内心驚いた模様。
最後にフェアロスの近況であるが、帝国崩壊前後と変わらず今もエーテルの研究を続けている。
家の事はすっかり大人になった次女ライラックに任せきりである事に若干申し訳なさを感じているようではあるが。
コルネリウスとの月1通の手紙の交流は今も変わらず続けており、彼女が王国で日々を忙しなく過ごす様子を見守っている。
既に答えも大切なものも見つけて歩んでいる彼女に対し、子としては手から離れたといっても良いのだろうが。愛する娘であることはこれから先も変わりなく。
いつか必ず、長命種として彼女は別れの道を通ることになる。その時に最後まで、父として支えることが自分の役目の一つである、と今は考えている。
●tips
※1『家を飛び出した』→プロローグノベル「空に捧げる祈りとは」
※2『ある小さな事件』→史実ノベル「成長は子供達と共に」