【北乱】北港騒乱

ジルベル
南北開戦までは何とか漕ぎつけましたな。
ラネンターカム
しかし龍逓架の話題は、盛り上がりに欠けた様じゃのう。
ジルベル
まぁ、しゃあないでしょう。市長殿は開戦のことしか頭に無かったみたいですし。
ラネンターカム
それで、リブラネスタには勝てそうなのかえ?
ジルベル
どうでしょうな。市長殿は勝つ気満々みたいでしたが。
ラネンターカム
グールクラーケンと冥千将も投入させてやるが、果たしてどうなることやら。
リブラネスタとエスト・ポーラの全面対決が始まろうとしています。
(5月2日より 【北乱】連動シナリオリリース開始!)
assignment【北乱】北港騒乱 概要
幽界分樹に端を発した、エラトゥーン都市同盟の二大巨頭リブラネスタとエスト・ポーラ間の戦いの行方を追う。その裏にはメドゥの指先の不気味な思惑が蠢いている。
assignmentここまでの流れ
エスト・ポーラを始めとするエラトゥーン都市同盟の北部諸都市に対してメドゥの指先が突如、幽界分樹出現を誘発されたくなければリーンエス王国と戦端を開けとの無茶な要求を突き付けてきた。
事態の解決に動いたエスト・ポーラ市長はしかし、リブラネスタの北部諸都市軽視の態度に怒りを募らせ、都市同盟内の南北開戦へと舵を切ろうとしていた。
(2023/5/1追加)
エスト・ポーラ内で開戦への機運が最高潮に高まり、市長ローヴィス・クレイヴラーは遂にリブラネスタへの宣戦布告に踏み切った。
一方、龍逓架に対してはクライス・アクバーが捜索へと着手。
person_pin関連NPC
エスト・ポーラの現市長であり、エラトゥーン都市同盟内の他の北部諸都市からも絶大な信頼を寄せられている実務派。政治的手腕はもとより、経済的な見識も深く、彼の意見であれば間違いは無いであろうとの信頼を多方面から寄せられている。
《本連動での動き》
メドゥの指先からの脅迫に対処すべく動いていたが、リブラネスタの態度に怒りを募らせ、南北開戦も視野に入れた対抗措置を取ろうと奔走する。
(2023/5/1追記)
対リブラネスタの機運を最高潮に高め、エスト・ポーラ市長の名のもとに於いて宣戦布告発布を強行。自らもエスト・ポーラ艦隊の軍船に乗り込み、海上決戦の場へ足を運ぼうとしている。
数百年を生きた、妖艶な美女という外観の吸血鬼。大型魔獣のアンデッド化を得意とする他、個人の戦闘能力も極めて高い。
《本連動での動き》
エスト・ポーラを始めとするエラトゥーン都市同盟北部諸都市に、幽界分樹出現を誘発されたくなければリーンエス王国に攻め入れとの無茶な要求を突き付ける。
(2023/5/1追記)
グールクラーケン、冥千将という二体の大型魔獣アンデッドを投入し、エスト・ポーラを密かに支援する模様。
白銀虎のハーフビースト。戦士としての技量もさることながら、様々な事件で暗躍し、数多くの謀略を巡らせてきた。
《本連動での動き》
エスト・ポーラを始めとするエラトゥーン都市同盟北部諸都市に、幽界分樹出現を誘発されたくなければリーンエス王国に攻め入れとの無茶な要求を突き付ける。
(2023/5/1追記)
エスト・ポーラによる対リブラネスタ戦が失敗に終わった場合を見据えて、密かに幕引き策を講じている模様。
元帝国魔導院エスタル支部長。
打倒幽界樹に燃える格闘魔導師で、現在はメドゥの指先に奪われた龍逓架の捜索をメインに活動中。
《本連動での動き》
エラトゥーン都市同盟内に持ち込まれたという龍逓架を捜索する為に、冒険者に協力を仰ごうとしている。
menu_book関連用語・情報
龍脈即時通信装置『龍逓架』
崩壊前のシルトラース帝国が実用段階直前にまで開発を進めていた通信装置で、帝国内主要都市の魔導院に設置されていた。龍脈を利用した遠隔地同士の即時通信装置であり、リーンエス王国との決戦に備えて設計された。この龍逓架が発する魔法的な信号が龍脈を通じて帝都の幽界樹に感知され、帝国内の各都市に幽界分樹を呼び寄せたと推測されている。
過日、元帝国魔導院エスタル支部長クライス・アクバーは龍逓架のひとつがメドゥの指先幹部『青の中指』ジルベルによって盗み出されていた事実を知ったが、その所在は未だ不明のままである。
龍脈
ロスガリア大陸の地下深くを流れるエーテル地脈。エーテル浄化者はここに働きかけてエーテル浄化儀式を行っている。
幽界分樹
帝都シルトラースに聳える幽界樹を「本体」と見做した場合の、帝国内主要都市に出現した幽界樹の「分樹」。ただし幽界樹については未だ不明点が多く、帝都に出現した幽界樹が本体であるか、それとも地中やアストラル界などに真の「本体」が存在するのかは判明していない。
春の陽射しの中に少しずつ、初夏の兆しが見え始めた頃。
リブラネスタ冒険者ギルド本部に、季節感をまるで無視した黒いコート姿の男が足を踏み入れた。
彼の名は、クライス・アクバー。
元帝国魔導院エスタル支部長であり、龍脈即時通信装置『龍逓架』と幽界分樹出現の関連性を突き止めた人物である。
クライスはエスト・ポーラとリブラネスタの間に走った開戦の緊張に龍逓架が深く関わっていると聞き、わざわざこうしてエラトゥーン都市同盟へと足を急がせてきた。
だがリブラネスタ到着後に聞きかじった情報を総合すると、話はどちらかといえば龍逓架そのものよりも、都市同盟内の南北対立――本来いずれの勢力にも属さないリブラネスタをも南部側に巻き込んだそれにすり替わっている様な印象を受けた。
(妙だな……エスト・ポーラは幽界分樹出現の可能性に対して、然程恐怖感を抱いていない様にも思える)
冒険者ギルドの休憩エリアで受付嬢から借りた資料の束を読み込むうちに、クライスはエスト・ポーラ側の立ち位置や思想に、龍逓架と幽界分樹が余り深く関与していない空気を感じていた。
エスト・ポーラ市長ローヴィス・クレイヴラーがここ最近では龍逓架と幽界分樹の話を全く持ち出さず、ひたすらリブラネスタを叩くことにのみ意識を集中させている様な言動を続けていることも、クライスに違和感を覚えさせた。
確かに幽界分樹の脅威を理由にしてリーンエス王国に戦争を仕掛けるなどというのは馬鹿げた話だが、そもそもの原因たる問題を全く無視して、南北開戦にのみ突っ走ろうとしている現状は如何なものであろう。
(何故急に、心変わりともいえる程の勢いで行動方針を切り替えたのか……探る必要があるな)
クライスは、あるひとつの仮説を立てた。その上で、冒険者ギルドに龍逓架捜索の依頼を個人的に持ち込むことにした。
同時に、エスト・ポーラの民間船を沈めた巨大烏賊の如き怪物の存在や、都市同盟の内陸で目撃された超大型の百足の化け物についても、調査が必要だと考えた。
彼は、これらの化け物も今回の騒乱に深く関わっていると見ていた。
(或いは……エスト・ポーラかメドゥの指先辺りが、裏で糸を引いているかも知れんな)
ここ最近、大型魔獣をアンデッド化した怪物の目撃例を幾つも目にしていたクライス。
その陰には必ずといって良い程に、あるメドゥの指先幹部の気配がちらついていた。
「おや……あんたがクライス・アクバーだね」
冒険者ギルドのロビーを出ようとしたところで、不意に呼びかけてきた艶のある声。
振り向くと、そこに端正な顔立ちの女性が佇んでいた。
リブラネスタ市長ヴィルジニア・テレーザ・セルッティだった。彼女は、昨今冒険者ギルドに寄せられた、ある報告書の内容を確かめる為に足を運んできたとの由。
「……ローヴィス市長が殺されていた?」
クライスは自己紹介の挨拶もそこそこに、ヴィルジニアが持ち出してきた奇妙な話題に眉を顰めた。
ヴィルジニアはいう。
本物のローヴィス市長は既に殺害され、その遺体が死霊術師の操るアンデッドとして利用されていた可能性がある、と。
実際、少し前に街道に現れた奇怪なゾンビには、その疑惑に通じる可能性が幾つも見られたらしい。
クライスは我知らず、喉の奥で低く唸った。
その傍らで、ヴィルジニアは持参した複数の手紙をカウンターの受付嬢に託している。その内容は、エスト・ポーラの有力豪商を秘密裏に口説き落とそうとするものであった。
クライスが興味本位で問いかけると、ヴィルジニアは意味ありげに口角を吊り上げる。
「勝ち目の無い戦いはやめてアタシと商売の話をしないか、って問いかけるのさ」
沈む船 に幾ら積み荷 を積んだ ところで、失う のは目に見えている。損得に敏感な商人なら、ローヴィス市長の行く末は分かる筈だ――ヴィルジニアは、彼らが必ずや応じてくるであろうと踏んでいた。
(成程……伊達に女狐と呼ばれる御仁ではないな)
クライスはヴィルジニアが仕掛ける策を受けて、エスト・ポーラが裏で大いに動揺する光景を脳裏に思い浮かべた。
●高揚感と期待外れ
深夜、巨岩が連なるひとけの無い海岸線。
エスト・ポーラ市長ローヴィス・クレイヴラーは、メドゥの指先幹部『緑の人差し指』ラネンターカムと『青の中指』ジルベルを前にして、一枚の海図を広げていた。
そこにはエスト・ポーラ海軍とリブラネスタ海軍の戦術配置予想が、事細かに記されている。
ローヴィスは幾分興奮気味に、敵軍――即ちリブラネスタ海軍が南部諸都市の援軍も無く、単独でエスト・ポーラ海軍との海上決戦に臨むであろうことを説明した。
「我が間諜部隊が入手した情報によれば、リブラネスタ海軍は盤石の態勢を誇り、付け入る隙は無いとの報告でした。これ程の戦力が揃っているのであればエスト・ポーラに対しても引けは取らないであろうとの観測が南部諸都市の間にも広がり、延いては援軍不要との結論に至るでしょう」
事実、南部諸都市はいずれも援軍を出す気配が無いとの情報も舞い込んできている。全体で見れば南北対立の構図であるものの、実質エスト・ポーラとリブラネスタの都市間対立となりつつある現状も南部諸都市が援軍派遣に消極的な理由だろう。
ここでエスト・ポーラが仕掛ければ、リブラネスタ海軍は間違いなく単独で応戦せざるを得ないであろうというのがローヴィスの下した結論であった。
既にエスト・ポーラ海軍は開戦に向けての機運が最高潮に高まっている。今すぐにでも宣戦布告を出せば、速やかに海上決戦へと雪崩れ込んでゆくことだろう。
つまり、エスト・ポーラとリブラネスタの一騎打ちに持ち込む算段が立った、という次第である。
更にいえば、リーンエス王国南岸に於いて南方辺境伯の威を借る形でリブラネスタ海軍への攻撃が始まっている。事実上、戦いは始まっているのだ。
嬉々とした表情で語り続けるローヴィスだが、しかしこれに対しラネンターカムとジルベルは、然程に高揚感を見せていない。寧ろ、冷ややかな表情を浮かべているといって良い。興奮気味のローヴィスとは極めて対照的であった。
「お前さんがリブラネスタを叩きたいってぇのは十分に伝わったが……龍逓架の宣伝効果は、正直なところイマイチだったなぁ」
ジルベルが渋い表情でかぶりを振れば、
「都市同盟全体を見渡しても、そこまで大騒ぎになったという雰囲気でも無かったのう」
ラネンターカムも何となく拍子抜けした調子で頭を掻く。
ふたりの幹部が見せた反応に、ローヴィスは若干焦りの色を浮かべた。
少しばかり、己の希望を優先させ過ぎたかと反省の念が湧く。
が、ラネンターカムは安心せいと苦笑を返した。
「うぬの希望は叶えてやる。約束通り、グールクラーケンと冥千将は海陸双方からリブラネスタや幽界分樹調査の人員を攻撃する方向に仕向けさせよう」
それだけいい残して、ラネンターカムは夜の闇の向こうへと消えていった。
一方、ジルベルはどこか責める様な視線をローヴィスに叩きつける。彼は露骨な程に、自分は大いに不満であるとの態度を見せつけていた。
「なぁルトルガー……お前さんがあんまりにも南北対立を煽り過ぎた所為で、肝心の龍逓架の宣伝が隅っこに追いやられちまったぜ。もうちょっと、俺らの意向を酌んで欲しかったんだけどなぁ」
「そ、それは……リブラネスタ撃破が為った暁には、必ずや」
ローヴィスことルトルガー・クレイヴラーは、脂汗を流しながら頭を低く垂れて畏まった。
ジルベルはそれ以上は何もいわず、ラネンターカムの後を追う様にして闇の中へと消えていった。
それから、数日後。
エスト・ポーラは市長ローヴィス・クレイヴラーの名のもとに於いて、リブラネスタへの全面的な宣戦布告へと踏み切った。
これに対してリブラネスタは、敢えてこの戦いに応じる姿勢を見せた。ローヴィス市長を捕らえることが出来れば、全てが白日の下に晒されるであろうと信じて。
そして両都市が誇るロスガリア有数の艦隊戦力が、都市同盟沖合の決戦海域へと進発してゆく。
こうして戦いの火蓋は、切って落とされた。
執筆:革酎