【天馬】天に送られし人馬の賢母

レイウェスト・バルダス
ケンタウロス達が集まっている……これが『天馬葬』か。大族長レミーラ、そなたはずいぶん慕われていたのだな。
レミーラ
お前も来たのかい、テイコク族の族長レイウェスト。アタシが生きているうちにお前達と決着を付けられなかったのは残念だが、祭りの客に手を出すほどケンタウロスは野暮じゃないからね。天馬葬に参列したいというなら、好きにすればいいさ。
レイウェスト・バルダス
心得た。我々人間も、敬意を以て敵の死を見送ることはある。……願わくば、そなたの死後も平和が長く続けばいいのだが。
レミーラ
そうだね。アタシの後から、ゾロゾロと若い連中があの世に押しかけてくるのは御免だよ。
※二人の会話は通訳を介しています。
帝国東部辺境の『聖地』にて、大族長レミーラの生前葬大運動会が開催されます!
(1月25日より 【天馬】連動シナリオリリース予定!)
assignment【天馬】天に送られし人馬の賢母 概要
「天に送られし人馬の賢母」連動は 、ケンタウロスのある部族に伝わる生前葬であり、運動会でもある祭り『天馬葬』の時期に起きた一連の出来事である。
assignmentここまでの流れ
シルトラース帝国と停戦協定を結んだ古老派ケンタウロスの代表者であった大族長レミーラが、高齢の為天寿を全うしようとしていた。ケンタウロス達は彼女を見送るべく『聖地』に集まり、『天馬葬』と呼ばれる生前葬運動会を大々的に行う。天馬葬には冒険者や、帝国の皇子レイウェストも招かれている。
person_pin関連NPC
古老派ケンタウロスの大族長。ケンタウロスの代表としてバルディオン将軍と会談し、帝国と停戦協定を結んだ。通訳無しで人類と会話することはできない。
《本連動での動き》
偉大な指導者として、天馬葬にて天に送られる。生前葬なのでまだ亡くなってはいない。
ケンタウロスの通訳特化の特殊個体。帝国との会談でも通訳を務めた。人類に友好的な個体で、なぜかいつもメイド服を着ている。
《本連動での動き》
天馬葬の喪主。冥界に旅立つレミーラに代わり、部族の代表を務める。部族のアイドルでもある。まだ年若い為、「大族長」と呼ばれるほど成長するかは未知数。
亡国となった帝国の皇族の、唯一と思われていた生き残り。皇位継承順位こそ八位と低いが、皇帝ヨゼフとその子女である第三皇女イダとの間に生まれた生粋の皇族と言われている。帝都から脱出して以降、各国の支援や冒険者達の助力を受けて帝国南部を奪還し、その後も帝国民の安住の地を確保しようと努めている。
《本連動での動き》
帝国代表として天馬葬に参加。一月ほどケンタウロスの聖地に留まり、気が向けば競技にも参加する。
「敵にも敬意を払われた大族長」としてレミーラに箔が付く為、レイウェストの参列は古老派ケンタウロス達からは歓迎されている。
menu_book関連用語・情報
天馬葬(ペガシオン)
レミーラの部族に伝わるケンタウロスの葬式の一種。天寿を全うしようとする偉大な指導者を送り出す為に行う生前葬。他の部族からも広く客を招いた上で、様々なスポーツや歌や踊りを行い、盛大に行う。険悪な部族同士のガス抜きの意味合いもある。
聖地
場所は帝国の東端。ドワーフ王国や辺境都市群に近い平原にある。
帝都崩壊前も帝国の土地か亜人(ケンタウロス)の土地か曖昧であった場所で、最低でも数百年に渡ってケンタウロスが支配し続けていた土地。人類は長い間、その場所が彼らにとっての聖地であることも、その地下に眠るエーテル石(神石)の存在も知らなかった。1222年初頭に聖地がメドゥの左腕の襲撃を受けたことによりケンタウロスの大移動が起き、聖地とそこに住まうケンタウロス達、そしてエーテル石の存在が明らかとなる。聖地奪還戦においては冒険者が主戦力となり、ケンタウロスと帝国の停戦協定の締結に大きく貢献した。
古老派
【人馬】連動において、メドゥに指先に奪われた聖地の奪還を最優先したケンタウロスの派閥。聖地奪還後は帝国との停戦協定の窓口にもなった。
良くも悪くも伝統的な価値観を持つケンタウロス達。
新生派
【人馬】連動において、これまでのケンタウロス居住地より豊かな人類の土地を積極的に支配しようとしたケンタウロスの派閥。
良くも悪くも思考が柔軟な若者が多いケンタウロス達。
※聖地が奪還されたことで、現在では両派閥の思想の違いは曖昧になってきている。
エーテル石
神代からケンタウロスが『聖地』と呼ぶ地の鉱脈に眠る不思議な光る石。自然にできた鉱石の一種。『神代の戦いで散った小さき神々の遺体が鉱石化したもの』とケンタウロスの間では伝えられている。
1221年に邪竜バイアーディスがドワーフ王国マミダ地域を侵略した争乱(【竜盤】連動)の中で初めて確認され、バイアーディスが都市の生命を纏めてエーテルに変換し収奪するための魔法陣の核としていた。「【竜盤】決戦:ドワーフ王国解放戦線」では、逆にバイアーディスを滅ぼすための魔法陣の核として使用された。
エーテル石はケンタウロスから譲り受けたり、聖地で起きた戦乱の最中に流出したりしたものが人類にも僅かに出回っており、元帝国魔導院の研究者を中心としてエーテル石を利用した対幽界樹用紋具の研究が行われている。
「レミーラ殿の容態はどうだ、ランラン」
「今はぐっすりと眠っています。最近はもう狩りには出られず、一日中テントで座っていることが多くなりました」
「そうか……」
人馬 の大族長レミーラの寿命が近いと聞き、別の集落から馳せ参じてきた他部族のケンタウロスの使者は、ランランの言葉に厳しい表情になった。
「レミーラ殿は今お幾つだ?」
「64才です」
「そうか……百才まで生きるものと思っていたが、彼女も天命には抗えなかったか」
亜人・ケンタウロスの寿命は短い。ロスガリア大陸の人間 の寿命が50年~80年程度生きるのに比べ、ケンタウロスの寿命はせいぜい30年程度だ。
だが、この原則に反し、ケンタウロスの中でも稀に50年を超えて生きる特異個体が存在する。そう言った個体は総じてケンタウロスの尊敬を集める偉大な指導者となる。
64才まで生きた古老派ケンタウロスの大族長、レミーラはそういった稀有なケンタウロスの一人であった。呪術師 としての素質と、類稀な頑強さ、そして聡明さと美しさを併せ持って生まれたレミーラは、長年部族の為に生き、部族に繁栄をもたらしてきた。その長い生涯の間には、侵略者として人類と戦ったことも、逆に帝国の遠征部隊から部族を守るために戦ったこともあっただろう。そして昨年、レミーラに最大の危機が訪れる。1221年、聖地へと侵攻してきたメドゥの指先との戦いである。凄まじい力を持つメドゥの左腕や、彼女が従えた超大型クリーパー『瘴気纏う腐緑獣』の前にケンタウロス達は敗れ、住処を失ったケンタウロスの『新生派』は新天地を求めて人類の文化圏まで遠征を行うこととなった。
だが、先祖代々守ってきた『聖地』の奪還を最優先とした『古老派』の中心人物であったレミーラは、他の部族の負傷者や非戦闘員を自部族に加え、人類とは争わず、聖地の監視を続けた。その後、帝国軍と冒険者の介入によりメドゥの指先は聖地から追い払われ、ケンタウロス達は漁夫の利を得る形で帝国から聖地を返還された。その後、古老派と新生派に分かれていたケンタウロス達もおおむね聖地に戻り、全ては元通りになったかに見えた。
だが、メドゥの指先との戦いや、疲弊した部族を導くという大役によるストレスは、確実に残り少ないレミーラの寿命を削っていたのだ。
「では、やはり天馬葬 を行うのだな?」
「はい、レミーラ様も承知の上です」
「分かった。レミーラ殿はそれに値する傑物だった。我が部族、そして近隣の部族にも伝えておこう」
「ありがとう、ジョイフルさん」
●冬の皇子
「……このあたりは寒いな」
「は。レイウェスト皇子殿下。ここらは平原ですからね。特に寒い日はマイナス数十度まで冷えます」
分厚いトナカイの毛皮のコートを纏い、レイウェスト・バルダスは帝国極東の駐屯所を訪れていた。
「近頃、ケンタウロス達の様子はどうだ?」
「停戦ライン付近では特に変わった動きはありません。ただ、ケンタウロスの聖地を見張る斥候の話では、様々な部族の伝令らしきケンタウロス達がしきりにあちこち移動しているとか」
「なるほど。それは気になるな……もしや、ゴブリン達を警戒しているのか?」
ケンタウロス達がレミーラの『天馬葬』の準備をしていた頃、シルトラース帝国もまた、ケンタウロスとコンタクトを取ろうとしていた。「イダの刻印」によるゴブリンの暴走の影響で、一部のゴブリンが帝国東部へと移動していたからだ。聖地返還の際、帝国とケンタウロスはお互いの領域の境界――停戦ラインを定めている。その領域を超えてゴブリン達が移動してしまった場合、徒 にケンタウロスを刺激することになるからだ。
勘違いで揉める前に一言ケンタウロスに連絡を入れておくのが吉だと判断したレイウェスト達は、駐屯兵への連絡ついでに、停戦ラインの査察に来たというわけである。レイウェストは兵達をねぎらいながら、暖炉の前で果実を食べ、長旅で疲れた体を休めていたのだが……。
「緊急警報! ケンタウロスが一体、この駐屯所に近づいています! 戦闘の意志はなさそうですが、各自警戒してください!」
突如として、けたたましい帝国兵の叫び声が駐屯所に響いた。レイウェストは何事かと、窓から外の景色を覗き込んだ。
「話を、聞いて下サーイ!」
白旗を振りながら、一体のケンタウロスが近づいてくる。これは確か、冒険者ギルドにケンタウロスが依頼を出したいときや、ケンタウロス側が聖地への侵略者を確認した時など、人類とコンタクトを取る際のモーションだ。奇妙なのは、なぜかケンタウロスがメイド服を着ていることである。
「なんだあれは?」
「もしや、ランランでは?」
「! 思い出した、会談の通訳の特異個体か」
レイウェストはいつかバルディオンが話していたことを思い出した。バルディオン将軍とレミーラの交渉の際に通訳を務めたのは、メイド服を着たケンタウロスの美女だったという。ケンタウロス女子の間で人類のメイド服が空前の大ブームとかいう事象は聞き及んでいないので、あのケンタウロスはランランで間違いないだろう。
「いかがされますか。殿下。罠ではなさそうですが……」
「早く入れてやれ、こちらもちょうどケンタウロスに用がある。人語が話せる個体なら好都合だ」
「は」
レイウェストの命に従い帝国兵はランランを駐屯所に招き入れた。
「そうか、レミーラが……」
「オオ、コレ、暖かいデスネ……」
ランランは駐屯所に迎え入れられ、暖炉で冷えた体を温めながら、レミーラの寿命と、彼女の死を『天馬葬 』という形式で見送ることをレイウェスト達に伝えた。
「アナタは帝国族の族長なのデスね。貴方モ参加してくれると、嬉しイ」
「いいだろう。ランラン。帝国も最近ケンタウロスには世話になっている。私も天馬葬 とやらに参列しよう」
こうして、レイウェストはレミーラの生前葬大運動会『天馬葬 』への参列を決めたのだった。『天馬葬 』とは一体何なのかを聞いていなかった事に気付いたのは、その後の話である。
執筆:おおくまねこ