【帝国】叢とみる夢

リカルダ=C=アーレンス
目覚めなかった市民が草人に拉致されている、と? あの中央に現れた異物は、幽界樹の成れの果てと言う事だろうか、クライス支部長。黒い霧を出していないらしいのは朗報だが、その代わりに黒い外皮を纏ったクリーパーを周囲に放っているとも聞く。
クライス・アクバー
リカルダ将軍の仰せの通り、あれは幽界樹だろう。爪と牙を隠していた獣が擬態をかなぐり捨てたと言う事か。あれも看過しがたいが、私は草人狩りと市民の救出に回る。下水道の地理も草人の処理も要領は分かっているからな。
リカルダ=C=アーレンス
アレの伐採は、授恵者でないと荷が重いだろう。冒険者の有志に向かってもらう事になるな。剣を担いで出れる立場なら、私も行きたかったが。
クライス・アクバー
『幽界樹を伐採した事がある』女性剣士、それに何故いるのかは知らないが探索支援ギルド長もいると聞く。それに精鋭の冒険者も加われば、一年近く絶食していたクリーパーだ。倒せぬ相手ではあるまい。動き出す前の報告にあった強固な殻については、気がかりだがな。
リカルダ=C=アーレンス
帝国軍はこの駐屯地跡で避難してきた市民の保護に当たろう。私の隊だけでは手が足りなかったかもしれないが、補充もあったし、冒険者ギルドも手を貸してくれるようだ。
……何、それぞれが為すべき事を為せば問題はない戦場だ。各員、全力を尽くせ。抜かるなよ。
帝国東部鎮守都市「エスタル」の安寧は破れた。『地に潜みし幽界樹』がまだ夢覚めぬ市民を喰らおうと牙を剥く。
(6月6日 【帝国】叢とみる夢 決戦シナリオリリース予定!)
assignment【帝国】叢とみる夢 特設ページ
「帝国奪還連動 叢とみる夢」は帝国東部鎮守都市エスタルの不穏な状況を解決し、帝国奪還を進める為の連動である。他の都市同様に幽界樹に滅ぼされた筈のエスタルには、夢の女神に導かれ生き残った少数の人々がいた。彼らによればいつの間にか幽界樹は消失していたというが……。
assignmentここまでの流れ
帝国東部を荒らした人馬の争乱は、メドゥの指先から彼らの『聖地』を奪還した事で人類優位に終結を迎えた。戦後処理も進む中、預言の魔女オペラが「帝国東部鎮守都市エスタル」で平和に生活する人々の夢を見る。事態の確認に訪れた軍の小部隊はクリーパーに滅ぼされたはずの都市で生き残りに接触した。
(5月9日追加)
周辺地域からの支援が次々と届きはじめ、食うも食わずであったエスタルの民は喜びの声を上げる。しかし、エスタルの住民が『草人』と呼ぶ隣人達の正体がクリーパーであったと冒険者達は知る。失われた平穏な夢を見続ける多くの住民はいまだ現実を直視できていない。夢から覚めた者は『草人狩り』となり、夢見る民達を刺激しないよう、人知れず隠れて草人を間引く戦いを行っていた。
(6月5日追加)
外部との接触を機に草人狩りの活動は活発化し、排除される草人や夢から覚めた市民が徐々に増え始めたある日、市民の多くが醒めぬ夢に落ちる。眠りに囚われなかった市民は、夢の女神が市民達へ祝福の言葉を告げたと語った。時を同じくして、エスタル中心部に『地に潜みし幽界樹』が黒き姿を露にする。草人が眠る市民を抱いて地下下水道へ向かい、幽界樹は黒いクリーパーを吐き出した。冒険者ギルド、草人狩り、帝国軍は共に事態へ対処すべく共闘する。
assignment決戦の概要
戦域1:市内中央 地に潜みし幽界樹の撃破友軍:クーネ・ルウ、エスタル冒険者ギルド選抜メンバー/敵軍:地に潜みし幽界樹、黒クリーパー
戦域2:市内地下 中央へ向かう草人に攫われた市民の保護・回収、クリーパー掃討
友軍:クライス・アクバー、リーミル、草人狩り/敵軍:草人、黒クリーパー、一般クリーパー、幽界樹の根
戦域3:市外東部 旧東部方面軍駐屯地防衛、市民保護
友軍:リカルダ=C=アーレンス、ティカ、帝国北部方面軍/敵軍:草人、黒クリーパー、一般クリーパー
assignment決戦のスケジュール
2022年6月6日 決戦シナリオ「【帝国】決戦:叢とみる夢」公開2022年6月13日 決戦シナリオ 出発
2022年6月27日 決戦シナリオ リプレイ公開
person_pin関連NPC
帝国南部の守りを任されているハーフビースト(猪)の将軍であり、ヴァイセントラフ砦守将。皇帝直々に見出した武人であり、元近衛騎士でもあるため個人の戦闘力は極めて高い。一兵卒から騎士、近衛騎士、将軍と出世したため、平民出身の兵士やハーフビーストの憧れの的。能力あれば取り立てられるという、インペリアルドリームを体現している。
《本連動での動き》
東方の人馬争乱、西方の辺獄戦役と相次ぐ帝国に関連した事件に対し、南部鎮守都市ヴィントにおいて軍全体の指揮を執る。
自らは動けぬものの、急変に備えて援軍をエスタルへ向かわせていた(6月5日追加)
亡国となった帝国の皇族の、唯一と思われていた生き残り。皇位継承順位こそ八位と低いが、皇帝ヨゼフとその子女である第三皇女イダとの間に生まれた生粋の皇族と言われている。大陸一の美姫と謳われた母譲りの長く、美しい髪と気難しげな真紅の瞳の持ち主。エフレムとともに帝都から脱出して以降、都市同盟に身を寄せて暮らしながら帝都奪還を目指して修行の日々を送る。ヴィント奪還作戦に置いてエフレムに不審を抱き、帝国滅亡の真相を問いただした結果、彼と袂を分かつこととなった。
《本連動での動き》
東方の人馬争乱、西方の辺獄戦役と相次ぐ帝国に関連した事件に対し、南部鎮守都市ヴィントにおいてバルディオンと共に対応に当たっている。
リカルダ=C=アーレンス将軍へエスタルにおける対応を一任した。(5月9日追加)
西方での皇帝一派の不穏な動きに備え、自らそちらへ向かおうとしている(6月5日追加)
帝国東部鎮守都市エスタルの生き残りの一人。黒づくめの外見がトレードマークの授恵者であり、今は冒険者ギルドに所属しているが元々は帝国に仕える研究者だったようだ。
《本連動での動き》
かつて帝国魔導院エスタル支部の支部長を勤めていた人物であり、『草人狩り』と呼ばれる集団の主要人物でもあるらしい。冒険者達の助力を受け、エスタル北部で孤立していた市民を『草人と接触する前に』救出する事に成功する。
勝手知ったる地の利を生かし、地下下水道を移動する草人への追撃に討って出た(6月5日追加)
帝国近衛騎士の家に生まれ、若い頃より各地の戦場で戦い、そして生き残ってきた生粋の武人。その実績と性格を買われ、皇帝直々に幼いレイウェストの剣術指南役に任じられた。
帝国崩壊時には将軍位にあったが長らく消息不明であった。実は重傷ながらも生き延びており、怪我の完治と共にレイウェストの元へ馳せ参じる。
オルセン健在が判明する前であった事もあり、レイウェストより帝国北部の鎮撫と募兵の任を受け、現在に至る。
《本連動での動き》
帝国東北部にて寡兵と拠点づくりに励んでいたが、エスタル再発見の知らせを受けて現地へ入る。当人はレイウェストらの本軍到着前の露払いと拠点準備のつもりであったが、ヴィントから動けぬレイウェストからエスタルにおける異変の対応を委ねられた。
安全を確保した旧駐屯地において帝国軍を指揮し、市民の保護と防衛を請け負う(6月5日追加)
人命第一主義の探索者支援ギルド長。書類仕事より現場に出るのが好き。探索者をとても可愛がっている。自身はたたき上げなのだが、後輩たちに対しては時折過保護ともいえる対応を見せることも。
《本連動での動き》
支援を求められた辺境都市群より武力担当として現地入りする。エスタルの地下がヴィントと同様、エーテル異常によりダンジョン化する事を危惧していたようだが、杞憂に終わった。魔獣を退治して現地の食料に当てるなど地道に働いている。
幽界樹の出現した早朝には市内におり、魔法で黒いクリーパーを食い止めるも苦戦。幽界樹に大規模な術を行使してからリタイアした。(6月5日追加)
帝国長い銀髪を後に纏めた紅眼の女性。シルトラース帝国遊牧民族の衣装をまとい、長大な骨剣を有する。帝国北部鎮守都市オルセンを帝国滅亡時の幽界樹の出現とその後の混乱から救い、絶大な感謝と敬意を向けられている。また、人知れず帝国都市ダルトートの幽界樹へ単身で挑み、瀕死の状態に追い込んだが最後の止めを欠き、後の暴走を招くなどうっかりした面もある。
《本連動での動き》
オルセンよりの支援物資と共にエスタルへ到着し、その後も滞在していた。『地に潜みし幽界樹』出現に当たり、その強固な装甲の破壊を試みる。
リブラネスタの冒険者ギルド本部に配属されたばかりの新人受付嬢。いわゆるドジっ娘であり、普通ではありえないようなミスで周囲を驚かせることも。
《本連動での動き》
周辺諸国の様々な支援物資と共に、人員の少ないエスタル冒険者ギルドへの応援として送られた。ドワーフ王国からの支援の中に酒があったために応じたのだが、現地は復興途上とあって飲んでばかりはいられぬ日々を送る。ストレス発散の為に戦場へ向かったようだ。
リーンエス王国北部の森のエルフの小集落の族長の孫娘で、帝国難民キャンプを巡る事件の結果、閉鎖的な村の外へ興味を惹かれて飛び出してきた。エーテル浄化者とは異なる能力を持つらしい。今回は好奇心の赴くまま、帝国軍にくっついてエスタルまでやってきてしまったようだ。
《本連動での動き》
駐屯地におり、帝国軍と共に避難民の世話をしている。突然冒険者への説明役が回ってきたが、持ち前の人当たりの良さで何とか乗り切った。
menu_book関連用語・情報
帝国東部鎮守都市「エスタル」(6月5日更新)
帝都の東側の防衛を担っていた都市。対面している勢力はケンタウロス等の亜人や荒野を隔てた辺境都市群であり、南北の鎮守都市より配備された兵力は少なかった。1220年夏の帝国滅亡に際しては他都市同様に幽界樹とクリーパー群が出現したことを生き延びた住人らが報告している。
人馬争乱の後、この地に到達した帝国軍の偵察隊が住人と接触するまでは、ヴィント同様に滅んだものと判断されていたが、地下下水網に逃れた一部の住民は独力で一年以上持ち堪えていた。昨年の秋頃に「夢のお告げ」で安全を知らされたことにより地上へ向かい、「草人」と感動の再会を果たしたらしい。現在、南門の周囲には草人2500名、人間500名程が入り混じって生活している。
エスタルが被った被害は間違いなく現実であり、城壁は何か所も破損し、市街地の多くもいまだ居住に適さない状況である。
(5月9日追加)
冒険者により都市の中心部や北部などが調査される。中心部は崩壊しており、強大な存在感を発揮する謎の黒い構造物が発見されている。また、北部においては生存者が新たに発見されるも、いまだ市内は安全では無く南部との合流は果たせていない。
(6月5日追加)
市の中心部に巨大なタケノコ状のクリーパー『地に潜みし幽界樹』が出現する。地上に出ている高さは数メートルだが、本体は地下に潜っているようだ。その出現と共に、市内に多くの黒いクリーパーも出現した。
黒いクリーパー(6月5日追加)
エスタル市内に出現した、黒い外皮を持つクリーパー。クーネ・ルウによれば幽界樹の黒い霧の変質したものだという。外皮は魔法を受ければ魔法に強く、物理を受ければ物理に強くなる特性を持ち、倒すには瞬間的な高火力で有無を言わさず吹き飛ばすか、連携を取って攻める必要があるだろう。
エスタル駐屯地跡(6月5日更新)
帝国の東部方面軍(定数10000だが実数7500程)が駐屯していた場所。エスタル市街を囲む城壁と掘の外、都市から見て東側にある平地と低層の兵営などからなる施設。ヴィントの駐屯地は蟻亜人の住み着くダンジョンと化していたが、エスタルの駐屯地はクリーパーや魔獣が住み着いている程度である。
(6月5日追加)
リカルダ将軍率いる帝国軍が冒険者の協力を得て安全を回復した。現在は市民らの避難先として開放され、帝国軍も防衛に当たっている。
エスタル地下水路(6月5日更新)
下水路の幅は幅3m位が標準、それより太い水路も細い水路もあり、標準以上の太さの通路には左右どちらか、あるいは両方に歩道的な物がある。高さは概ね3m程で、細い水路は直径1m程の管状の場合もある。地上への出入りが可能な場所は水路の出口自体が地表に露出している場所が市外に数か所、階段などが設置され下りられる入り口(兼生ゴミなどを捨てる場所)は市内に多数存在している。
(6月5日追加)
眠る市民を抱えた草人が多数、幽界樹へ向かって移動を始めているようだ。
エスタル冒険者ギルド支部(6月5日更新)
エスタル市民が生き延びる事が出来たのは、冒険者ギルドのメンバーが街に残ったことも大きな理由だ。帝国軍人は市民が外部に逃げる時間を稼ぐために死地に留まり全滅したが、冒険者ギルドは所属する授恵者と共に、逃げ切れなかった市民を伴い地下(下水網)へ潜った。
ギルド支部は現在も残り、市民の互助の中心となっている。
(5月9日追加)
現在のエスタル支部は市民からの信用を鑑みて、草人がクリーパーであることに言及できていない。が、構成員の多くは草人が怪しい存在であると認識している。
(6月5日追加)
一部の選抜したメンバーが幽界樹へ挑む面々に協力している。
草人(6月5日更新)
エスタルの奇妙な住人の呼称。エスタルの地上で都市滅亡の混乱の中を生き延びていたと思われている。特徴として会話は一切できず、動きがぎこちない。簡単な身振り手振りで意図を伝える事は出来るようだ。力は強いのだが、人々に危害を加える事は無い。昼に活動して夜に寝る規則正しい行動を取る。食事も普通の人並みに食べ、やや水を多めに飲む。
エスタルの住人たちは、少し不器用な草人達を、再会できた街の住人として大事に扱っている。
(5月9日追加)
その実態はクリーパーである。なぜ人間の姿を模しているのか、何故おとなしくしているかは不明。多くのエスタルの住民は、異常なほどに彼らを家族と信じ込んでおり、証拠を見せられたとしても納得しないようだ。
(6月5日追加)
眠りに落ちた市民を抱えて地下下水道へ向かい、幽界樹へ戻ろうとしているようだ。
草人狩り(6月5日追加)
草人を殺す者たちのエスタル市民からの呼称、および彼ら自身の自称。夜に活動が緩慢になる草人は、夜中に襲撃されて殺害される事が多い。「夢は終わり」や「化け物は死ね」などの文章が残されている事がある。
実態は、クライス・アクバーら『草人の正体を知ってしまった人々』が、市民の暴動や草人の予期せぬ反応を警戒しつつ草人に対抗していた自然発生的な集団らしい。
草人狩りの正体は市民には分かっていないが、下水道の奥に住まう狂人か、昼間は普通の住人として過ごしている殺人鬼のどちらかと思われ恐れられている。下水道へ逃げ込んだ草人から市民を取り返すべく、追撃を行っている。
夢の女神(6月5日更新)
エスタル市民たちに信奉されるようになった神。下水に潜んで生活していた際、市民の多くが夢のお告げによりクリーパーの襲撃を知ったり残置された資材や食料の在処を知るなど、様々な形で救われた経験がある。1221年秋に住民たちへ地上の安全を伝えた後、預言の頻度は激減したようだ。オペラの見る夢の神とこの「夢の女神」が同じものであるかは分からない。
(6月5日追加)
エスタル市民の夢の中に再び現れ、夢から覚める事を選んだ市民を祝福すると共に、夢を見続けている市民についても安寧の中に在れと寿いだ。
『地に潜みし幽界樹』(6月5日更新)
1220年時点でエスタルには他の都市と同様の幽界樹が出現し、市内は黒い霧に覆われた。授恵者の目には幽界樹が聳える姿も目撃されており、多数のクリーパーが市街を蹂躙している。しかし、1221年秋に「夢の女神」のお告げに導かれた市民が下水から地上へ出た際には、聳え立っていた筈の幽界樹は消えていたらしい。市の中心部は何があるか分からない危険地帯でもあり、跡地の確認は進んでいない。
(5月9日追加)
クーネ・ルウによれば、エスタルの幽界樹は滅んでいないという。また、市の中心部にて冒険者が調査した謎の黒い構造物と幽界樹の関係性は判明していない。
(6月5日追加)
エスタル中心部に黒い円錐状の姿をあらわにした。枝葉は無く異常に強固な黒い外皮に守られており、地下に這わせた多数の根を用いて攻撃してくる。
帝国魔導院(6月5日更新)
帝国の魔法関係の研究、実用研究組織。ある程度以上の規模の都市には必ず存在しており、エスタル市街の中心部にも支部があった。
クライス・アクバーによればこの支部が存在した都市では報告されている限り、幽界樹の分樹が出現しているらしい。エフレムが呼び出した帝都以外の都市の幽界樹出現の原因となったのが、実用段階に入ろうとしていた『龍脈と呼ばれる大陸地下のエーテルの流れを利用した通信』ではないかと彼は推測している。
(6月5日追加)
地に潜みし幽界樹の活発化により、跡地は崩壊した。
『皆様は、再会できた家族と楽しく過ごしていますか? そうであれば、私は嬉しく思います』
エスタル市民は久しぶりに『夢の女神』の夢を見ていた。いまだ幸せな幻想の中に生きるエスタル市民は再会をただただ喜ぶが、草人の正体を知った者は態度を決めかねていた。苦境にあった苦難の時に、この女神が命を繋いでくれたのは確かなのだ。その葛藤を知ってのように、女神は微笑んだような気がした。神々しい光に包まれ、女神の尊顔を拝する事は出来ない。
『幻想の家族と別れて生きようと考えた皆様も、私はその選択を美しく思います。幻想の中で生き続ける事も、また一つの選択……。私はともに、皆様を祝福いたしましょう。いつまでも、皆様が願う世界が続きますように……』
その朝、目が覚めた者は市民の中のごく一部に過ぎず、多くの市民は幸せそうに眠りについたままだった。そして、市内を激震が襲う。震源地は、エスタルの中心部。かつて幽界樹が存在し、今は黒い危険な物体があると報告されていた一角が激しく動いていた。
「……なんじゃあ、あれは。黒い……タケノコ?」
揺れが収まり、表に出ていた人々が顔を上げると、そこには昨日まで無かった異物が生えていた。その周囲に、がさがさと蠢く影がある。遠目に見ても、クリーパーであろうと判別がついたその集団は全てが黒い。
「ば。化け物だ。逃げるぞ、おい……って、お前たち。どこに行くんだ? そいつを離せ。離せよ!」
激しい大地の揺れで生じた被害から、草人は眠り続ける市民を守っていた。そして揺れが収まった今、恭しく市民を抱き上げてどこかへ去ろうとしている。邪魔をしようとした市民を押しのけて、草人は地下下水道へと向かっていった。
「意識のある者は軍の駐屯地へ! 門を出て東だ!」
「草人が逃げたぞ。冒険者はギルドに集合せよ!」
事態に応じて声が飛び、混乱は危険なほど高まる前に沈下した。一つには、パニックが起きる程大勢の市民が起きていなかったという事がある。もう一つ、居合わせた者達が逃げ出すための最初の時間を稼いでくれていた事も、理由となるだろう。
●
エスタルの中心部から現れた黒いクリーパーは、人類が住み着いている南部へ雪崩のように迫っていた。探索支援ギルド長のエフィミア・リリックも相手をしていたのだが、この新種は彼女の力をもってしても倒すのに時間が掛かる程度にしぶとい。
「あー、もう! 根元から断たないと切りがないわよね。とっておきのぶちかますわよ!」
「む。いや待て。もしかしてあの黒い殻は……」
あまり気の長くない彼女が、とっておきの詠唱を開始する。彼女がながながと術式を行使する間、やはり偶然居合わせたクーネ・ルウがエフィミアがさっきまでぶっ放していた魔法に耐えた敵をスパスパと刻んでいった。
「……うむ。やはり魔法を受けた後だと剣に弱くなっているのではないか? クーネさんはそういう能力を持つ魔獣に出会ったことがあるので知っているぞ」
「私もそういう奴と戦ったことはあるけど、強火で焼けば小細工無視して滅ぼせるわよね、そういう奴って」
護衛をクーネさんがしてくれた間に術を完成させ、エフィミアは一仕事終えたドヤ顔で杖を市内中央へ向ける。『地に潜みし幽界樹 』の上空に巨大な隕石が出現し、遠くからはゆっくりに見える速度で落ちていった。最初のもの程ではないが、再度の激震が市内に走る。
「ふふふ、この術をまともに受けて無事だった奴はいないわよ。やったわ!」
「いや。普通に耐えきってるようだが?」
湧き出していたクリーパーは余波でかなり吹き飛んだようだが、中央に顔を出している『地に潜みし幽界樹 』は微動だにしていない。クレーターが出来上がっている辺り、破壊力が無かったようには思えないのだが。しょんぼりとエフィミアのエルフ耳が垂れた。
「……えー、嘘ぉ……。私もう今日はガス欠よ。準備も手間もかかる術なのに、無駄打ちしちゃったわね」
「いいや、あれで幽界樹は魔法に備えを固めた筈だとクーネさんは思う。何故なら、クーネさんが今ならあれを切れそうな気がする」
とはいえクーネは魔法使いでは無く剣士。再び湧き始めた黒いクリーパーを掻き分けて相手の近くまで辿り着き、気合をためて一撃必殺の攻撃を繰り出さねばならない。その露払いとしては、エフィミアはもう役に立たないだろうが。
「ちょうど、冒険者が集まってきたようだ。彼らならクーネさんを届けて守ってくれるくらいはお手の物だと思う」
「そうー。じゃあ、私は引っ込んでおくわ。もう何もしたくない……」
エフィミアが働きたくない人のような事を言う。招集に応じた冒険者達が集まるまでの時間を2人で稼いだのは十分な仕事ではあるが、終えてまだ余力のあるクーネと無いエフィミアで明暗はくっきり分かれていた。
(クーネ・ルウ……、あんな化け物がいるんだから、世の中怖いわね)
(エフィミアと言ったか。なかなか出来るエルフだったな)
お互いに名前を記憶に残しつつ、エフィミアは市外へ退却し、クーネは中心部でもう一仕事しようと前を向く。
●
『人々の願いをかなえるために、人に危害を加えてはいけない』
強大な存在に自らの本能に反する枷を受け、エスタルの地下で閉塞していた『地に潜みし幽界樹』は、知性もない存在だというのについに抜け道に辿り着いた。それは大海の中で一粒の砂に巡り合うような偶然なのか、それとも飽くなき試行が無数の失敗の果てに辿り着いた必然なのか。
『人がそれを望むなら、死を与えても女神は許すのではないか』
人の命を奪うのではなく、新たな生き方を与えるのだ。あくまでも丁重に迎え入れ、欠片も残さず喰らい、そして家族である草人の一部と為すならば、それは神にも許された行動ではないか。……もちろん、クリーパーはそのような思考をしない。だからそう考えるのは、あくまで観察する側の感傷に過ぎない。
『まあ。貴方は苦しんで、苦しんで、新しい道を見つけようとしているのね。それも美しい姿だわ。私は、この世界の美しい物の全てに祝福を与えたい……』
そして、女神は観察者の感傷故にそれを許した。
執筆:紀藤トキ