【帝国】叢とみる夢

レイウェスト・バルダス

何事もない、とは思ってはいなかったが。エスタルも難しい状態のようだな。細かい事が分からぬのは歯がゆいが、今の私は国内情勢に注力できる状態ではない……のだな。

バルディオン

は。しかし、現地にはリカルダ将軍が向かっているとの事。経験豊富なあの者なら、このような場合でも臨機応変に立ち回れましょう。シグモルとの関係はエーテル石の提供とゴールディの計らいで良き方向へ向かっておりますが……この度の件、殿下が動けぬまま事態が動く可能性もございます。……君主は、全てを己が手で為す必要は無いのです。

レイウェスト・バルダス

……そう、なのだろうな。忠言、感謝する。エスタルの対応はリカルダに委任し、指揮を委ねよう。その旨、急ぎ伝えてくれ。

帝国東部鎮守都市「エスタル」の、歪な夢は外部との接触を機に破綻しはじめたようです。
(5月10日より 【帝国】叢とみる夢 連動シナリオリリース開始!)

assignment【帝国】叢とみる夢 特設ページ

「帝国奪還連動 叢とみる夢」は帝国東部鎮守都市エスタルの不穏な状況を解決し、帝国奪還を進める為の連動である。他の都市同様に幽界樹に滅ぼされた筈のエスタルには、夢の女神に導かれ生き残った少数の人々がいた。彼らによればいつの間にか幽界樹は消失していたというが……。

assignmentここまでの流れ

帝国東部を荒らした人馬の争乱は、メドゥの指先から彼らの『聖地』を奪還した事で人類優位に終結を迎えた。戦後処理も進む中、預言の魔女オペラが「帝国東部鎮守都市エスタル」で平和に生活する人々の夢を見る。事態の確認に訪れた軍の小部隊はクリーパーに滅ぼされたはずの都市で生き残りに接触した。
(5月9日追加)
周辺地域からの支援が次々と届きはじめ、食うも食わずであったエスタルの民は喜びの声を上げる。しかし、エスタルの住民が『草人』と呼ぶ隣人達の正体がクリーパーであったと冒険者達は知る。失われた平穏な夢を見続ける多くの住民はいまだ現実を直視できていない。夢から覚めた者は『草人狩り』となり、夢見る民達を刺激しないよう、人知れず隠れて草人を間引く戦いを行っていた。

person_pin関連NPC

帝国南部の守りを任されているハーフビースト(猪)の将軍であり、ヴァイセントラフ砦守将。皇帝直々に見出した武人であり、元近衛騎士でもあるため個人の戦闘力は極めて高い。一兵卒から騎士、近衛騎士、将軍と出世したため、平民出身の兵士やハーフビーストの憧れの的。能力あれば取り立てられるという、インペリアルドリームを体現している。

《本連動での動き》

東方の人馬争乱、西方の辺獄戦役と相次ぐ帝国に関連した事件に対し、南部鎮守都市ヴィントにおいて軍全体の指揮を執る。

亡国となった帝国の皇族の、唯一と思われていた生き残り。皇位継承順位こそ八位と低いが、皇帝ヨゼフとその子女である第三皇女イダとの間に生まれた生粋の皇族と言われている。大陸一の美姫と謳われた母譲りの長く、美しい髪と気難しげな真紅の瞳の持ち主。エフレムとともに帝都から脱出して以降、都市同盟に身を寄せて暮らしながら帝都奪還を目指して修行の日々を送る。ヴィント奪還作戦に置いてエフレムに不審を抱き、帝国滅亡の真相を問いただした結果、彼と袂を分かつこととなった。

《本連動での動き》

東方の人馬争乱、西方の辺獄戦役と相次ぐ帝国に関連した事件に対し、南部鎮守都市ヴィントにおいてバルディオンと共に対応に当たっている。
リカルダ=C=アーレンス将軍へエスタルにおける対応を一任した。(5月9日追加)

帝国東部鎮守都市エスタルの生き残りの一人。黒づくめの外見がトレードマークの授恵者であり、今は冒険者ギルドに所属しているが元々は帝国に仕える研究者だったようだ。

《本連動での動き》

かつて帝国魔導院エスタル支部の支部長を勤めていた人物であり、『草人狩り』と呼ばれる集団の主要人物でもあるらしい。冒険者達の助力を受け、エスタル北部で孤立していた市民を『草人と接触する前に』救出する事に成功する。

帝国近衛騎士の家に生まれ、若い頃より各地の戦場で戦い、そして生き残ってきた生粋の武人。その実績と性格を買われ、皇帝直々に幼いレイウェストの剣術指南役に任じられた。
帝国崩壊時には将軍位にあったが長らく消息不明であった。実は重傷ながらも生き延びており、怪我の完治と共にレイウェストの元へ馳せ参じる。
オルセン健在が判明する前であった事もあり、レイウェストより帝国北部の鎮撫と募兵の任を受け、現在に至る。

《本連動での動き》

帝国東北部にて寡兵と拠点づくりに励んでいたが、エスタル再発見の知らせを受けて現地へ入る。当人はレイウェストらの本軍到着前の露払いと拠点準備のつもりであったが、ヴィントから動けぬレイウェストからエスタルにおける異変の対応を委ねられた。

人命第一主義の探索者支援ギルド長。書類仕事より現場に出るのが好き。探索者をとても可愛がっている。自身はたたき上げなのだが、後輩たちに対しては時折過保護ともいえる対応を見せることも。

《本連動での動き》

支援を求められた辺境都市群より武力担当として現地入りする。エスタルの地下がヴィントと同様、エーテル異常によりダンジョン化する事を危惧していたようだが、杞憂に終わった。魔獣を退治して現地の食料に当てるなど地道に働いている。

menu_book関連用語・情報

帝国東部鎮守都市「エスタル」

帝都の東側の防衛を担っていた都市。対面している勢力はケンタウロス等の亜人や荒野を隔てた辺境都市群であり、南北の鎮守都市より配備された兵力は少なかった。1220年夏の帝国滅亡に際しては他都市同様に幽界樹とクリーパー群が出現したことを生き延びた住人らが報告している。
人馬争乱の後、この地に到達した帝国軍の偵察隊が住人と接触するまでは、ヴィント同様に滅んだものと判断されていたが、地下下水網に逃れた一部の住民は独力で一年以上持ち堪えていた。昨年の秋頃に「夢のお告げ」で安全を知らされたことにより地上へ向かい、「草人」と感動の再会を果たしたらしい。現在、南門の周囲には草人2500名、人間500名程が入り混じって生活している。
エスタルが被った被害は間違いなく現実であり、城壁は何か所も破損し、市街地の多くもいまだ居住に適さない状況である。
(5月9日追加)
冒険者により都市の中心部や北部などが調査される。中心部は崩壊しており、強大な存在感を発揮する謎の黒い構造物が発見されている。また、北部においては生存者が新たに発見されるも、いまだ市内は安全では無く南部との合流は果たせていない。

エスタル駐屯地跡(5月9日追加)

帝国の東部方面軍(定数10000だが実数7500程)が駐屯していた場所。エスタル市街を囲む城壁と掘の外、都市から見て東側にある平地と低層の兵営などからなる施設。ヴィントの駐屯地は蟻亜人の住み着くダンジョンと化していたが、エスタルの駐屯地はクリーパーや魔獣が住み着いている程度である。

 

エスタル地下水路(5月9日追加)

下水路の幅は幅3m位が標準、それより太い水路も細い水路もあり、標準以上の太さの通路には左右どちらか、あるいは両方に歩道的な物がある。高さは概ね3m程で、細い水路は直径1m程の管状の場合もある。地上への出入りが可能な場所は水路の出口自体が地表に露出している場所が市外に数か所、階段などが設置され下りられる入り口(兼生ゴミなどを捨てる場所)は市内に多数存在している。

エスタル冒険者ギルド支部

エスタル市民が生き延びる事が出来たのは、冒険者ギルドのメンバーが街に残ったことも大きな理由だ。帝国軍人は市民が外部に逃げる時間を稼ぐために死地に留まり全滅したが、冒険者ギルドは所属する授恵者と共に、逃げ切れなかった市民を伴い地下(下水網)へ潜った。
ギルド支部は現在も残り、市民の互助の中心となっている。
(5月9日追加)
現在のエスタル支部は市民からの信用を鑑みて、草人がクリーパーであることに言及できていない。が、構成員の多くは草人が怪しい存在であると認識している。

草人

エスタルの奇妙な住人の呼称。エスタルの地上で都市滅亡の混乱の中を生き延びていたと思われている。特徴として会話は一切できず、動きがぎこちない。簡単な身振り手振りで意図を伝える事は出来るようだ。力は強いのだが、人々に危害を加える事は無い。昼に活動して夜に寝る規則正しい行動を取る。食事も普通の人並みに食べ、やや水を多めに飲む。
エスタルの住人たちは、少し不器用な草人達を、再会できた街の住人として大事に扱っている。
(5月9日追加)
その実態はクリーパーである。なぜ人間の姿を模しているのか、何故おとなしくしているかは不明。多くのエスタルの住民は、異常なほどに彼らを家族と信じ込んでおり、証拠を見せられたとしても納得しないようだ。

夢の女神

エスタル市民たちに信奉されるようになった神。下水に潜んで生活していた際、市民の多くが夢のお告げによりクリーパーの襲撃を知ったり残置された資材や食料の在処を知るなど、様々な形で救われた経験がある。1221年秋に住民たちへ地上の安全を伝えた後、預言の頻度は激減したようだ。オペラの見る夢の神とこの「夢の女神」が同じものであるかは分からない。

エスタルの幽界樹

1220年時点でエスタルには他の都市と同様の幽界樹が出現し、市内は黒い霧に覆われた。授恵者の目には幽界樹が聳える姿も目撃されており、多数のクリーパーが市街を蹂躙している。しかし、1221年秋に「夢の女神」のお告げに導かれた市民が下水から地上へ出た際には、聳え立っていた筈の幽界樹は消えていたらしい。市の中心部は何があるか分からない危険地帯でもあり、跡地の確認は進んでいない。
(5月9日追加)
クーネ・ルウによれば、エスタルの幽界樹は滅んでいないという。また、市の中心部にて冒険者が調査した謎の黒い構造物と幽界樹の関係性は判明していない。

帝国魔導院(5月9日追加)

帝国の魔法関係の研究、実用研究組織。ある程度以上の規模の都市には必ず存在しており、エスタル市街の中心部にも支部があった。
クライス・アクバーによればこの支部が存在した都市では報告されている限り、幽界樹の分樹が出現しているらしい。エフレムが呼び出した帝都以外の都市の幽界樹出現の原因となったのが、実用段階に入ろうとしていた『龍脈と呼ばれる大陸地下のエーテルの流れを利用した通信』ではないかと彼は推測している。

●
「外から見た時に覚悟はしていたが、これは手酷く破壊されたものだ」

 東方鎮守都市エスタルの往時の姿を知るリカルダ=C=アーレンス将軍は、エスタル市内の様相に眉を顰める。だが、それは盛況だった帝国軍を知る市民の側も同様で、市外に整列したリカルダの兵が正規の帝国軍だとは信じられないようだった。
 道中で届いたレイウェストの短い書簡には、現地での指揮をリカルダに委ねる事と、冒険者ギルドと協力して事態に当たる事とある。まずは現地の詳しい事情を聴くべく、リカルダは冒険者ギルドへ連絡を入れた。

「よく、民を安んじてくれた。殿下に代わり礼を言う」
「いいえ。我らが今あるのは、民を逃がすために踏みとどまった東部方面軍の奮戦のお陰です」

 南門の外まで迎えに来た冒険者ギルドの支部長と共に、同胞の為に瞑目してから、リカルダは今後の方針を検討する。

「生活に必要な物資は、各地より支援を頂き何とかなっております。レイウェスト殿下には、各国へお声掛け頂き感謝しております」
「ドワーフ王国に、エラトゥーン都市同盟、それに北部鎮守都市オルセン、か」

 距離と力を考えれば支援に手を挙げるに妥当な国家の名に、旗幟を定かにしていないオルセンが混じる事をリカルダとしては気に留めぬ訳にはいかない。かの地は此度はレイウェストの要請に応じたが、臣下として振舞っている訳ではないのだから。各国からエスタルへの物資受け取りは、今後はレイウェストの名代としてリカルダが引き受ける事を要請された。何も、ギルド側も管理が面倒だから押し付けたい訳ではない。

「我々(冒険者ギルド)はここに独立国を建てるつもりだ、などと言われては困りますからな……。ああ、こちらへ」

 比較的マシな廃屋を補修したらしい建物へ案内され、一室へ通される。椅子と机もどこかから運び込んだのかちぐはぐで、その一席に座っていた黒づくめの男がリカルダの入室に合わせて立ち上がった。男の隙の無い所作に、何者かとリカルダは支部長へ目を向ける。

「市内の事は、彼に聞くのが良いでしょう。ちょうど報告を受けていた処でして」
「リカルダ将軍の名は、軍にいた頃に聞いたことがある。クライス・アクバー。エスタルでは魔導院の支部長をしていた」
「自己紹介は要らないようだな。リカルダ=C=アーレンスだ。レイウェスト殿下の名代としてここにいる」

 お互いの立ち位置を探る様な第一声のあと、支部長に促されて両者は席に着いた。

 ●
「さて、将軍はこの建物に来るまでに市民の様子を見て、気になった事はありませんか?」
「私を試すな。事前にある程度の情報は入手している。あれが『草人』か」

 喋らない以外は人間そっくりだという報告もあったが、実物を見ればそれは言い過ぎだろうとリカルダは思う。しかし、戦場でショックを受けて自失した兵が下手な操り人形のようなぎくしゃくした動きしかできなくなるケースも、リカルダは知っていた。甲斐甲斐しく面倒を見る市民たちの笑顔から感じるものは、平和な日常生活そのものだ。

「はい。あれが草人です。……そして、草人はクリーパーです」
「何だと……?」
「真実だ。殺して中を見ればまともな生き物ではないと分かる。冒険者達にもその旨は共有したが、彼らは事実を理性的に受け入れた」
「それは良かった。エスタル市外の人間は、目を曇らされはしないようですな」
「あるいは、授恵者である事が条件かもしれないが」

 なぜ、人を襲っていないのかはわからない。なぜ、人を模したような動きをしているのかもわからない。ただ、自身を守る力もない人間の傍らにクリーパーが大量に居るという状況は、リカルダが先ほど感じた平和が薄氷の上の物に過ぎないと語っている。

「……『草人』と市民をただちに隔離すべきではないのか。いや、そうしていないという事は、できない理由があるのか」
「その通りだ、リカルダ将軍。市民は『草人』を家族や友だと心の底から信じている。例え、目の前で破壊して内部を見せても、現実を直視しないだろう」

 クライスはまるで試したことがあるかのように、そう言う。あるいは実際にそういう場面があったのかもしれない。

「加えて、『草人』の数は市民の数倍です。あれが一斉に本性を現せば、市民のほとんどが命を落とすでしょう」

 しかし、手をこまねいていたわけではないとも支部長は言う。草人の正体を知った者たちは『草人狩り』として、目撃者のいない夜間に草人を間引く活動を続けてきたのだ、と。そして現在、外部と連絡が取れ、授恵者達をギルドの依頼として呼び込めるようになり、かつ民を導くべき帝国の統治者とも連絡が取れた。エスタルはそろそろ偽りの夢から覚めねばならないと、支部長は言う。

「……なるほど、貴公も、クライスもその『草人狩り』なのだな」
「はい。エスタル冒険者ギルドの職員はほぼ、真相を知っております。市民に対しては、明かしておりませんが」

 市民に対して、ギルドは『草人』の正体は告げていない。『草人』に関する依頼を引き受ける際でも、市民の良き隣人として扱ってはいる。誰が『草人』の盲目的な味方であるかの見極めがつかないが故の事だ。だが、今後は外部からの冒険者に対しては真相を周知し、市民を刺激せず草人に対処する為の協力を仰ぐ事になるだろう。

 ●
「先ほど聞いていた報告を続けてくれますか。現状を将軍にも共有しましょう」
「わかった。北部に取り残されていた民は『草人』に触れる前に保護した。疑うように仕向けてはいるが、うまく行くかは分からんな」
「初めてのケースだから仕方がないでしょうな。ああ、他の冒険者達に依頼した下水網の掃討はうまく進んでおります。地上にいた厄介なクリーパーも討伐できましたよ」
「十字路の化け物か。しかし、下水も地上も他からの流入が防げるわけではない。一度で市民が歩ける程に安全になったとは言えまいな」

 食料などの必需品を支援に委ね、ギルドが冒険者達に依頼したのは市内の掃討と調査であった。掃討が進まねば、エスタルの復興は進めようがない。それと、調査だ。エスタルの置かれた現状は、これまで幽界樹が出現した都市とは明らかに異なっている。伐採されていない幽界樹が、市民が地下に逃げ込んでいた間に消失していたというのは出来過ぎだ。

「中央には、巨大な黒い壁……、全体像としては円錐なのかもしれませんが。何やらとんでもなく堅い巨大な物がありいます。調査に当たった冒険者達もそれに脅威を感じた、と」
「あれか。確かにな」

 クライスもその存在は認知しており、言葉少なに冒険者達の感覚に同意する。支部長は陰鬱な顔で書類を数枚めくり、別の記述を指し示した。

「それと……、オルセンより支援物資を運んで来て下さった方が、『幽界樹はまだ生きている』と仰っていたそうで」
「誰だ、それは。……クーネ卿か」

 覗き込んだリカルダが渋面を浮かべる。他の者ならば一笑に付したかもしれないが、単身で幽界樹の分樹を打倒したという女傑の言葉とあれば、勘だとしても馬鹿には出来まい。草人のみならず、刺激できぬ相手がまだこの都市にはいるということか。

「それから、やはり中央部にある魔導院の廃墟で幾ばくか、幽界樹の件に関りがありそうな資料が見つかっております」
「ほう。機密に当たるものは、あの日に処理した筈だがな」

 一部の機材の残骸や、処分しきれなかった文書などを冒険者達は発見したらしい。もっとも、内容については彼らの理解の及ぶものでは無かったとも言う。支部長としては、それらの管理もリカルダに委ねたいと考えていた。ギルドに魔法関係の専門研究機関など無いし、かといってリーンエス王国のパンクリアース学園やヴェルクリエの碩学らに解析を依頼する筋の物でもない。リブラネスタのギルド本部に送っても、持て余すだけだろう。

「わかった。預かろう。殿下であれば悪いようには扱うまい」

 リカルダにもその価値や意味は分からないようだ。帝国滅亡前であれば魔導院から機密を持ち出すことなどありえないが、クライスはそのやり取りに口を挟みはしなかった。万が一、自分が死んだ時に備えるなら、クライスの頭の中以外に残しておく必要がある。これが他国に渡るならば一言も二言もいうだろうが、帝国軍であればまだマシだ。

「分かった。我々は予定通りに市外の駐屯地の整備を行う。いざと言う時には、市民を引き受けられるよう、広めに確保しよう」

 リカルダの率いてきた兵で足りない分は、冒険者に依頼を出す事も考慮する。その間は、『草人狩り』はこれまで通りに隠れて活動をする事となろう。支部長は深くため息を吐いた。

「草人の件もですが、彼らは帝国崩壊のあとに起きた傷跡へ目を向けようとしない……。いや、できないのでしょう」

 行方が分からなくなった愛する人々と再会できた。それ以外の問題も、きっと何事も無かったかのように解決するのだろう、と。彼らは揺籃の中で夢を見ている。


 執筆:紀藤トキ
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0