【帝国】叢とみる夢

レイウェスト・バルダス

冒険者ギルドの「預言の魔女」殿によれば、東部鎮守都市エスタルに生存者がいると。これはまことか? かの地は初期に滅んだと報告を受けていたから、事実であれば喜ばしいが……。

バルディオン

斥候の第一報によれば、当地の冒険者ギルドを中心として、地下の下水網に隠れて生き延びた者がいた、と。……東部方面軍は彼らを含めた市民を逃がすために最期まで力戦したとの事です。

レイウェスト・バルダス

そうか。……彼らの魂に安らぎを。エスタルの今の様子はどうか? 不足は無いだろうか。

バルディオン

情報を収集中です。が、幽界樹の姿は既に無いとの事。黒い霧も漂う様子はなく、支援の手さえあれば復興も可能やもしれません。いずれにせよ、もう少し情報を待ちましょう。

帝国東部鎮守都市「エスタル」に滅亡から生き残った者達の、奇妙なコミュニティが見つかったようです。
(4月13日より 【帝国】叢とみる夢 連動シナリオリリース開始!)

assignment【帝国】叢とみる夢 特設ページ

「帝国奪還連動 叢とみる夢」は帝国東部鎮守都市エスタルの不穏な状況を解決し、帝国奪還を進める為の連動である。他の都市同様に幽界樹に滅ぼされた筈のエスタルには、夢の女神に導かれ生き残った少数の人々がいた。彼らによればいつの間にか幽界樹は消失していたというが……。

assignmentここまでの流れ

帝国東部を荒らした人馬の争乱は、メドゥの指先から彼らの『聖地』を奪還した事で人類優位に終結を迎えた。戦後処理も進む中、預言の魔女オペラが「帝国東部鎮守都市エスタル」で平和に生活する人々の夢を見る。事態の確認に訪れた軍の小部隊はクリーパーに滅ぼされたはずの都市で生き残りに接触した。

person_pin関連NPC

帝国南部の守りを任されているハーフビースト(猪)の将軍であり、ヴァイセントラフ砦守将。皇帝直々に見出した武人であり、元近衛騎士でもあるため個人の戦闘力は極めて高い。一兵卒から騎士、近衛騎士、将軍と出世したため、平民出身の兵士やハーフビーストの憧れの的。能力あれば取り立てられるという、インペリアルドリームを体現している。

《本連動での動き》

東方の人馬争乱、西方の辺獄戦役と相次ぐ帝国に関連した事件に対し、南部鎮守都市ヴィントにおいて軍全体の指揮を執る。

亡国となった帝国の皇族の、唯一と思われていた生き残り。皇位継承順位こそ八位と低いが、皇帝ヨゼフとその子女である第三皇女イダとの間に生まれた生粋の皇族と言われている。大陸一の美姫と謳われた母譲りの長く、美しい髪と気難しげな真紅の瞳の持ち主。エフレムとともに帝都から脱出して以降、都市同盟に身を寄せて暮らしながら帝都奪還を目指して修行の日々を送る。ヴィント奪還作戦に置いてエフレムに不審を抱き、帝国滅亡の真相を問いただした結果、彼と袂を分かつこととなった。

《本連動での動き》

東方の人馬争乱、西方の辺獄戦役と相次ぐ帝国に関連した事件に対し、南部鎮守都市ヴィントにおいてバルディオンと共に対応に当たっている。

帝国東部鎮守都市エスタルの生き残りの一人。黒づくめの外見がトレードマークの授恵者であり、今は冒険者ギルドに所属しているが元々は帝国に仕える研究者だったようだ。

《本連動での動き》

身分を伏せて冒険者ギルドに冒険者として所属し、エスタルの混乱を生き延びた。何やら思う所があるようだが……?

人命第一主義の探索者支援ギルド長。書類仕事より現場に出るのが好き。探索者をとても可愛がっている。自身はたたき上げなのだが、後輩たちに対しては時折過保護ともいえる対応を見せることも。

《本連動での動き》

支援を求められた辺境都市群より武力担当として現地入りする。エスタルの地下がヴィントと同様、エーテル異常によりダンジョン化する事を危惧していたようだ。

menu_book関連用語・情報

帝国東部鎮守都市「エスタル」

帝都の東側の防衛を担っていた都市。対面している勢力はケンタウロス等の亜人や荒野を隔てた辺境都市群であり、南北の鎮守都市より配備された兵力は少なかった。1220年夏の帝国滅亡に際しては他都市同様に幽界樹とクリーパー群が出現したことを生き延びた住人らが報告している。
人馬争乱の後、この地に到達した帝国軍の偵察隊が住人と接触するまでは、ヴィント同様に滅んだものと判断されていたが、地下下水網に逃れた一部の住民は独力で一年以上持ち堪えていた。昨年の秋頃に「夢のお告げ」で安全を知らされたことにより地上へ向かい、「草人」と感動の再会を果たしたらしい。現在、南門の周囲には草人2500名、人間500名程が入り混じって生活している。
エスタルが被った被害は間違いなく現実であり、城壁は何か所も破損し、市街地の多くもいまだ居住に適さない状況である。

エスタル冒険者ギルド支部

エスタル市民が生き延びる事が出来たのは、冒険者ギルドのメンバーが街に残ったことも大きな理由だ。帝国軍人は市民が外部に逃げる時間を稼ぐために死地に留まり全滅したが、冒険者ギルドは所属する授恵者と共に、逃げ切れなかった市民を伴い地下(下水網)へ潜った。
ギルド支部は現在も残り、市民の互助の中心となっている。

草人

エスタルの奇妙な住人の呼称。エスタルの地上で都市滅亡の混乱の中を生き延びていたと思われている。特徴として会話は一切できず、動きがぎこちない。簡単な身振り手振りで意図を伝える事は出来るようだ。力は強いのだが、人々に危害を加える事は無い。昼に活動して夜に寝る規則正しい行動を取る。食事も普通の人並みに食べ、やや水を多めに飲む。
エスタルの住人たちは、少し不器用な草人達を、再会できた街の住人として大事に扱っている。

夢の女神

エスタル市民たちに信奉されるようになった神。下水に潜んで生活していた際、市民の多くが夢のお告げによりクリーパーの襲撃を知ったり残置された資材や食料の在処を知るなど、様々な形で救われた経験がある。1221年秋に住民たちへ地上の安全を伝えた後、預言の頻度は激減したようだ。オペラの見る夢の神とこの「夢の女神」が同じものであるかは分からない。

エスタルの幽界樹

1220年時点でエスタルには他の都市と同様の幽界樹が出現し、市内は黒い霧に覆われた。授恵者の目には幽界樹が聳える姿も目撃されており、多数のクリーパーが市街を蹂躙している。しかし、1221年秋に「夢の女神」のお告げに導かれた市民が下水から地上へ出た際には、聳え立っていた筈の幽界樹は消えていたらしい。市の中心部は何があるか分からない危険地帯でもあり、跡地の確認は進んでいない。

●
「最近、妙に同じ夢ばかり見て肩が凝るのじゃ。最後まで見ても特に何も事件は起きないのじゃが、こうも続くと気がかりでのう。予知夢を示す白い鳥も出ておるし……」
「そうなんですか? あ、とりあえず肩凝りには酒が一番ですけど」
「お前は昼から何を言っているんだ」

 思わし気な顔で現れた預言の魔女オペラに、受付嬢のリーミルは空想上のジョッキを掲げて隣のアナンディーンにため息をつかれた。リブラネスタの冒険者ギルド本部では、オペラが見る夢は『近い将来の悲劇の先読み』だと思われている。実際、彼女の夢のお告げを基に依頼を出して、ぎりぎりで防げた事件も数多い。それが本当に何も起きないだけのただの夢であれば問題はなし、何か事件性のある予知夢と言う可能性を鑑みて、アナンディーンは彼女の夢で見た場所の割り出しを始めた。

「……ふむ。住むには辛そうな廃墟であったがの。そういえば、住人はエスタルと言って居ったようじゃ」
「エスタル? それは帝国の東部鎮守都市のエスタルか? 確か、滅んだと聞いていたが」

 南のヴィント、北のオルセンに規模はやや劣るものの、帝国東部の抑えとして築かれた都市の名だ。消息不明であったオルセンと違い、逃げ延びた人々の証言によれば他の帝国都市同様、幽界樹とクリーパーに蹂躙されたと報告されている。そこに生き残りが、と言う話であれば冒険者ギルドだけで事を治めるわけには行かない。ヴィントへとビッグオウムが飛び、事はレイウェスト皇子とバルディオン将軍の知る所となった。

「エスタルが、無事であったというのは、まことか」
「まだ詳細は分かっておりませんが、冒険者ギルドの預言の魔女殿が夢に見た、と。可能性は高いかと思われます」

 冒険者ギルドの動静を探っていれば、預言の魔女の予知夢について耳にする事もあったのだろう。期待が顔に出ているレイウェストへ、バルディオンが重々しく頷く。すぐに、ケンタウロスの『聖地』周辺にいる帝国軍へ伝令が走り、そこから斥候が『東部鎮守都市エスタル』へ向かった。

 ●
「まさか、生き残りがこんなにいたのか……?」
「いや、俺達が生き延びたのは軍と、あとは『夢の女神』とやらのお導きだ」
「貴方は?」
「名乗る程ではない。エスタルの冒険者ギルドの者だ。お前は帝国軍の所属か。……なるほど、市内へ案内しよう」

 遠目に街が見える辺りまで近づいた斥候を、まず出迎えたのは黒衣の男だった。見るからに怪しげな装束だが、冒険者ならば良くあることとも言える。案内された先には、健在なりし都市の姿には遠く及ばぬ迄も、確かに生きている人が暮らす場所があった。

「一体、この街で何があったんです?」
「それは此方も知りたいところだな。何故帝国は一年以上、手をこまねいた?」
「そうですぞ、帝国軍は一体どうしておったのか」

 様子を知りたい、と男以外の集まってきた人々も口々に言う。聞けば、東部方面軍がクリーパーの群れを相手に時間を稼ぐ間に、市民の多くは市外に逃げたが逃げ遅れた一部が地下に潜伏したらしい。辺境都市群と同じく、古代の都市の廃墟の上に築かれたエスタルには、下水網が市内の方々へ伸びていた。身を寄せ合った人々を助けたのは、同じように地下に逃げ延びていた冒険者ギルドの面々だ。地下を伝って残された食料を集め、時にクリーパーに戦いを挑み、助け合って何とか生を繋いできたのだという。代わりに彼らの知らぬ、エスタルの外の世界の動きについて、広く知られた事を斥候が話す。人々は思い思いの様子でそれを聞いていた。

「あの時は地上にはでっかい樹が生えてたし、黒い霧が出始めたら、普段の力も出なくなってなあ。何とか潜って、一息ついたときは辺りは酷いもんだった」
「ああ。正直な所、このまま地下で死ぬしかないと思っていたんだよ。でもな……」

 冒険者らしい男達が口々に語る言葉には、しかし状況から感じられる程の悲壮感はない。斥候も最初は不思議に思っていたが、どうやら彼らは『夢の女神』にたびたび助けられていたようだ。夢の中の優しい声や、導く手に従っていれば危険を回避できたし、食料が落ちているのを見つけたりもしたという。

「夢の女神さまは俺達をずっと見守ってくださっていたのさ。だから、まあ何とかやって来れたってところだよ」

 昨年の秋ごろ、生き残りの全てが同じ夢を見たらしい。地上は平和で、生き延びた住人が他にもいる、と。それまでの地下生活でも、たびたび夢のお告げに助けられていた市民は、その夢を疑う事は無かったが、しかし恐怖はあった。それから幾度も同じ夢を見るし、励まし合って恐る恐る地上に出てみたのは数日後。市内には頭上に広がる禍々しい樹の姿はなく、黒い霧も漂っていない。晴れた青空の下、うろうろと歩くヒトの姿が目に入った。

「……本当に地上に、生き残りがいたと?」
「皆は話す言葉を失って居たし、ココだけの話、ちょっとおつむの方もおかしくなっていたがね」
「まあ、私達ですら死ぬ思いをしたんだ。少し人が変わってしまったのは、仕方がない事だろうな」

 屈託のない様子で笑う街の住人が、紹介してくれた地上の住人は、斥候から見てもどこかおかしかった。ふらふらと所在なく歩き、座り、言葉は発さずにゆらゆらと揺れている。それでも、生きていてくれただけで嬉しいのだと語る住人にそれ以上は物申さず、斥候は彼らに礼を言って報告に戻る事にした。エスタルの城壁は方々で崩れ、市内の建物もほぼ瓦礫と化しているし、周辺にはクリーパーも跋扈しているのだから、確かに一度は滅んだのだろう。しかし、多くの人々が生きて生活しているのは、夢のような事だと斥候も思った。

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「……以上が斥候からの報告です。現地で健在な組織が、冒険者ギルドのみとなると、支援に入るにせよ、彼らの協力を仰ぐ必要はありましょうな」
「そうか。生きている民がまだいた。その事が私は何より喜ばしい」

 レイウェストの言葉にバルディオンは頷く。ヴィントの状況を想えば、市民が生き延びたのはバルディオンにとっても嬉しい事だった。同僚たちの勇戦が報われもしよう。情勢が叶うならば、自ら現地へ向かいたいと2人ともに考える程に。

「今は御身を動かすことは難しい。軍についても同様です」
「わかっている」

 帝国皇帝を名乗る者がシグモル火山で狼藉の限りを尽くした。その事がどう波及するか読めない段階では、エスタルにだけ目を向ける事は出来ない。むしろ、国内の問題であるからこそエスタルを後回しにせざるを得なかった。

「シグモルからのエーテル石に関する要請は承諾した。後は、父上の動静か」
「……殿下」

 レイウェストの置かれた状況に、バルディオンはそれ以上言葉を掛けられない。本来の主である皇帝と、異変に際し主と見定めた少年の道が異なる時に、彼はどう動くべきだろうか。悩める時間は、そう長くないかもしれなかった。

 冒険者ギルドへはオペラからの情報を伝えてくれた事への礼と情報の共有、そして冒険者ギルドの現地で果たしている役割から見て、人的支援も検討して欲しいという要請が届く。現状に合わせ、支援物資の受け取り、配布なども現地ギルド主体で行うのが当座は早いだろうが、いささかギルドの手が足りないだろうというのがアナンディーンの見立てであった。

「リーミル」
「えええ! また私が出張ですか! そんな場所に行っても酒がないですよね? 持ち込み可じゃないと絶対に嫌ですよ!」
「安心しろ。現地への支援物資に酒もある。お前1人が飲み食いしても大差ない程度の量がな」
「なら行きます」

 きりりと答える後輩に、アナンディーンの胃はキリキリと痛む。あるいは自分も赴いた方が良いだろうか。だが、食料や酒類が多く持ち込まれるのは事実ではあった。

「……この報告からすれば、一年以上、まともな食事は食べていないようだからな……」

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 斥候を案内した黒衣の男は、地下の住処に戻っていた。あの黒い霧は今はないとはいえ、あの滅亡の日の光景を忘れられるわけではない。地表に上がる事はあっても、安全だと心底信じられた事は無かった。目に入る他の様々な物に対しても、そうだ。夢の女神のお告げの恩恵は確かにあれど、全てを無条件に信じてはいない。

「そうか。……エスタル以外の都市にも、あれは現れたのか」

 ぼそりと呟いた言葉に、返る声は無かった。


 執筆:紀藤トキ
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0