【呪輪】命の輪、冥い棘

グレイオンス

『青の示指』フェンヌ・ダーニの討伐は成った。依頼の完遂に感謝する。
枯死してしまった森、腐らされた土については、これから再生を目指すことになる。
我々エルフだけでは難しいこともあるだろう。知識や力を持つ者の協力を仰ぐことになる。
そのときは、手を貸してもらえると嬉しい。

ウル・ヘルバ

冒険者たちとの話、終わったか?
持って帰る荷物、これで全部? 荷馬車に積むぞ。

グレイオンス

頼んだぞ。
ウル、私は遠回りして帰ろうと思う。
冒険者が見た森の現状を、自分の目で見ておきたい。

ウル・ヘルバ

……。
……は、はぁああああああ!?

フィルエス大森林南東部で起きていた枯死現象の元凶、『青の示指』フェンヌ・ダーニの討伐に成功しました!
(10月4日より 【呪輪】事後シナリオリリース開始!)


●揺れる炎
 フェンヌ・ダーニが倒れ、巨大なケアイデが動きを止めた後、冒険者たちは仲間の怪我の具合の確認や、ムーセルの里の片付けに入る。
 依頼結果の報告に戻る必要があるし、疲労もしている。
 長時間に及ぶ作業はできないため、今後ムーセルをどうすべきか報告するための調査に近いかもしれない。

 いざ作業を始めようか、というとき、里の外れである森の方から煙が上がっていた。
 微かに焦げる匂いもするため、冒険者たちは急いだ。
 その方向は巨大なケアイデが動いた際、フェンヌが走ってきた方向でもある。
 自然に火の手があがるものかどうか疑念はあるが、まずは止めないとならない。
 止めなければ、延焼し、大火災に発展する危険がある。
 水はないに等しいが、どうにか鎮火させる。
 部屋は真っ黒になっているが、建物の形は残っている。
 そこには、誰かが生活や研究をしていたような形跡があった。
 書類等があっても、真っ先に燃えただろう。
 誰かが故意に火を掛けたとも考えられる一方で、明かりを倒した結果、自然に燃えたとも考えられた。
 追い詰められたフェンヌが、自ら火を放っていたのか。それとも、メドゥの指先か――。
 周辺を簡単に調査しても、誰の仕業であるか断定できる痕跡はなかった。

 フェンヌ討伐の依頼を完遂した冒険者たちは、その結果を報告しにグレイオンスの元へ戻る。

●再生への道
 グレイオンスはフェンヌ討伐の報告を受けた。
 フェンヌが氏族から離れたときのことは、気の毒でもある。しかし、里の者は彼女とハーフビーストの恋人を受け入れてはいた。重なった死は氏族を信じる気持ちを失わせるに十分だったのだろうか。
 エルフの他種族に対する意識を深く知っていただけに、疑い出すと止まらなかったのかも知れない。
 あくまで推測であるし、いくら彼女が辛かったとしても、大森林とそこに住まうエルフに対して行ったことを許すことはできなかった。
 フェンヌが倒れたことにより、フィルエス大森林の南東部で発生していた木々や植物の枯死は止まるはずだ。
 植物型魔獣はまだ大森林の中にいくらか生きているだろう。それらが放出していた胞子もすぐに消えないし、腐った土は簡単に戻らないという問題は抱えている。
 しかし、植物型魔獣が増えることは止められたため、後は地道に討伐していけば良い。胞子は減り、自然に消えて行くはずだ。
 一方で、大地を蝕んだ、腐った土は簡単には戻らないため、対処は必要となるだろう。
「……土が戻れば、鳥と動物が戻る」
 結局は土が一番問題なのだ。
 枯れた植物は集めるなりして燃すことは可能だとしても、土は簡単に戻らない。
 農耕や土壌に詳しいリザードマンをはじめとした、土とつながりのある者の知恵と力を借りる必要が出てくるだろう。
 すべきことは山積しているが、悪化するしかなかった状況を考えれば、光が見える。
 一歩ずつ進むしかないのだ。
 状況の把握が終わり、グレイオンスは深く息を吐いた。
「ここですることでもないな」
 グレイオンスは窓の外を見る。
 現在拠点を置いているのはプロステンの里。植物の枯死が発生し、かつ、森の外に近い里ということで滞在していた。
 長期間いたわけではないが、窓の外の風景は見慣れたものになっていた。
「戻る際に、ムーセルの様子を見ていくべきか……」
 グレイオンスはつぶやいた。

 ウル・ヘルバは冒険者と共に行動を取っていた。
 役には立たなかったという自覚はある。
 情けないと思う一方で、冒険者たちの姿を見て学んだことはあった。
 守りたいならば、迷わず攻撃をしないとならないこと。
 冒険者たちと話せば、皆それぞれに迷いや葛藤があるということは分かる。しかし、戦うことが定まった時は迷ってはいけない。
 それができなければ、大事な何かを失うことになる。
「強ぇよなぁ……」
 力のことではなく、信念や他者に対する気持ちが。
 自分はどうだろうか、何が欠けているのかなど色々考えながら、グレイオンスの使い走りで冒険者ギルドに行った。
 そこから書類をもらってグレイオンスがいるプロステンに戻った。
 日が暮れている里。
 赤子の頃に預けられてから見ていたエルフの里に次いで、よく見る風景になっていた。
「変な気分だよなぁ」
 家に入ろうとした里の子どもエルフが、ウルを見て手を振っている。
 ウルはそれに対して手を振り返した。
 最初来た時は遠巻きに見ていた子らが、今は、ハーフビーストであるウルを見てもおかしいと思わなくなっている。
 ウルがここの風景になじんでいた。
「ま、冒険者が沢山来たし、解決したもんなぁ」
 苦笑した。
 ウルはグレイオンスの仮住まいの家の扉をノックなしに開けた。
 グレイオンスに「ノックをしろ」とたしなめられた。
「……すま、ごめんなさい。いや、また、明かりついていないし、寝てんのかなって思ったし」
 ウルは謝罪後、反論する。その上で、明かりをつける。
「冒険者ギルドの方に、状況の報告と今後依頼することの打ち合わせをしてきたぞ!」
 テーブルの上に、資料の入った袋を置いた。
「助かる」
 グレイオンスは礼を述べると、袋を手に取った。中身に目を通した。
「さて、帰ろう」
「今から?」
「いや、さすがに、里の長に話をして、それから準備してだ」
「だよな」
 ウルは考えればわかることなのにと恥ずかしくなり頭を掻いた。
 その様子を見るグレイオンスの表情が穏やかそうだったので、ウルはまあいいやと思った。
 会話や行動が途切れ、静寂が漂った。
 ウルの中でため込んでいたものが膨れ上がる。
「……俺の親は俺を捨てて何を求めたんだろう」
「ウル?」
「フェンヌ(あの人)は恋人がいて、子どもがいて……日常生活がほしかったんだよな? あの植物たちを子どもって言ってたし。でも、二人は死んじゃって……一人になって、恋人との仲を認めてくれた氏族のやつら疑って……寂しいよな……」
 ウルはうつむく。分け隔てなく育ててくれたグレイオンスや里のエルフに感謝しているから、困らせたくないから黙ってきたことだった。
 グレイオンスは、幼いころからしているように、ウルの頭をなでた。
「……ああああああ、またっ! そうなるよな!」
 ウルは怒りとあきれの気持ちがわくが、いつも通りだな、とどこかほっとした。
「ウル、彼女の故郷のモルアモから、フェンヌの遺体を引き取り、埋葬をしたいと、連絡が来た」
「……え?」
「そこには彼女の恋人や子の墓もある」
「……そっか」
 特に問題はないため、すぐにその手配はされる。
 話を聞いたあと、ウルは日常に戻るという感覚がわいてきた。
「あ、そうだ、夕食は?」
「まだだ」
「準備するぜ!」
 ウルは食料をもらいに行くため、軽やかに家の外に出た。
 見上げた空に、三つの星が輝いていた。

執筆:狐野径

assignment【呪輪】命の輪、冥い棘 概要 特設ページ

【呪輪】命の輪、冥い棘連動とは、フィルエス大森林の南東部で発生した植物が枯れる現象を調査し、原因の排除を行う一連の出来事を指す。自然と共に生きるエルフにとって森の存在は必要不可欠である。生命の輪を正常に戻すため、大森林に住まうエルフの最古老の一人であるグレイオンスは、冒険者ギルドに協力を求めた。

assignmentここまでの流れ

フィルエス大森林の南東部で、次々と木や草が枯れる奇妙な現象が発生。被害は急速に拡大し、彼の地に長く住まうエルフたちの目から見てもその原因は不明である。現地のエルフたちは生活をおびやかされ、長年守り続けてきた里を捨てる選択を迫られている者たちもいる。グレイオンスは森が枯れる現象の原因を探るため、また、動揺する現地のエルフたちのケアを行うため、冒険者ギルドに依頼を出すことにした。

(8月16日追記) 調査の結果、大森林内部で異変が強く起こっていると確認された。なお、動く植物型の魔獣が多く見受けられるため、何らかの関連があるものと思われる。

(9月9日追記) 調査の結果、植物型魔獣を生みだしているエルフの女「フェンヌ・ダーニ」に行き着く。また、枯死の中心地となっているムーセルの里からかろうじて生き延びていた人も保護した。

(10月3日追記) グレイオンスにより、メドゥの指先幹部『青の示指』フェンヌ・ダーニ討伐依頼が出された。冒険者の奮闘の結果、フェンヌと巨大に育った植物型魔獣ケアイデは討伐された。

person_pin関連NPC

フィルエス大森林のエルフの最古老の一人であり、まとめ役。部族間のもめごとなどが起きた際に調停にあたったり、他国や他種族に対してはフィルエス大森林を代表した立場で外交を行うこともある。

《本連動での動き》

原因究明、解決のための前線での情報集約および指揮を行う。異種族との交流が乏しく保守的なエルフたちをまとめ、彼らと冒険者たちの間に立つ。

様々な植物を見るために旅をしていたハーフビーストの授恵者。赤子の時に拾われてグレイオンスに預けられ、大森林のエルフの里で育てられた。故郷のエルフに恩義を感じているが、種族間において複雑な感情も持っている。

《本連動での動き》

冒険者とともに原因の究明および排除を行う。

外見年齢20代半ばほどのエルフの女性。ローブや布を重ね着している上、髪も長く、フードを被っていなくても表情等は伺いづらい。
フィルエス大森林のモルアモという里に住む氏族の出身。植物の研究をしていた。30年ほど前、恋人のハーフビーストをなくし、産み落とした子が死んでいた。これを氏族の仕業と捉え、里を後にした。

《本連動での動き》

フィルエス大森林の南東部、奧地にあるムーセルにて植物型魔獣を生みだした。それが繁殖するのを止めず、むしろ「我が子」として増やして行く。枯死の原因となり、それを拡大させている。

ジルベル

白銀虎のハーフビースト、メドゥの指先の幹部『青の中指』。
片刃の特殊な剣を二刀流で操る他、握り手部以外は全て刃となっている巨大なブーメランによる遠隔攻撃を得意とする。
掴みどころが無く、いつも飄々としている。

《本連動での動き》

現状のところ何を目的にしているかは不明。既に大森林を去った可能性もある。

リーンエス王国のとある貴族に秘密裏に雇われた道化師。言動が芝居がかっている。
魔獣使いの顔も持ち、メドゥの指先に属しているらしい。

《本連動での動き》

フィルエス大森林南東部で目撃された。現状のところ何を目的にしているかは不明。

menu_book関連用語・情報

フィルエス大森林

大陸西部に広がる大森林、エルフが住まう地。ここに住まうエルフたちの暮らしは、大森林に現れるクリーパーなどの『外敵』を鑑みても長く安定している。彼らにとってそれは、外部の種族や国家との交流を不要と判断するには十分な根拠となっていた。
気候は穏やかで、年中暖かく寒さに凍えることもない。常春の森というにふさわしい環境である。ほとんどの氏族で農耕や牧畜は行っておらず、自然の恵みの中で暮らしている。

フィルエス大森林のエルフ達

エルフとは、大陸各地の森の中で暮らし、その森における調和を保ちながら暮らす種族である。伝統や生活、価値観は異なっても自然を愛し、保守的。
他種族にはない長命性や美貌を誇るものの彼らに選民思想はなく、彼ら自身は"森"という複雑な生命体系に属する一因子、という姿勢が根本にあり、基本的には謙虚な種族である。
環境を破壊し収奪する各国家・都市やドワーフという種への軽蔑は長い歴史の中で綿々と形成され、特にフィルエス大森林においては一部の氏族を除いて他種族との交流が乏しい。歴史的に友好関係を築いてきたリザードマンくらいしか交流がないエルフも、大森林では多数を占める。

氏族について

フィルエス大森林のエルフ達は入植当時から存在する「五氏族」を源流とし、現在ではたくさんの氏族に分かれている。彼らの社会では、各氏族の長が合議によって意見を出し合い、ときに長老が助言を述べる。速断には向かないものの、もとより外部からの干渉を拒む同地域にとっては大きな支障を来たすことはなかったようだ。
各氏族の多くは、【ハイアルヴ】と呼ばれる霊的存在を頂いている。その姿や存在の描かれ方、受け入れられ方は氏族ごとに異なるが、【ハイアルヴ】と交感することができた者は『覡』・『巫女』として氏族の方針決定のキーパーソンとして扱われている。

胞子

フィルエス大森林の南東部、森の奥地に向かうと多く漂っている。現状、授恵者の行動を阻害するほどの悪影響はうかがえないが、大量に漂っているため、視界が悪くなり、太陽の光も届きにくなくなる。発生源は不明。

動く植物

フィルエス大森林の南東部、森の奥地に向かうと現れる魔獣。森が枯れ始める以前に大森林で見かけられたことはなく、未知の存在。
葉物の植物の姿をしているものと、キノコの形状をしたものが目撃されている。
(9月9日追記) フェンヌ・ダーニが生み出した魔獣。大森林を枯らし、土壌を腐らせている原因と考えられる。
考えて行動しているかは不明だけれども、進路妨害等邪魔をするものには襲いかかる。
形状から大別すると下記のようになる。
・ケアイデ
 大型の植物。ツタ植物が絡まり合った様な幹のような胴を持つ。つぼみを持っている。根っこで歩き回る。
・メリデ
 小型。腐食した土壌を好み根っこを足のようにして動き回る。植物、いわゆる一年草の形状をしている。近接・射撃で物理的な攻撃が主体。
・ピンジ
 小型。腐食した土壌を好み動き回る。キノコの形をしている。揺れると胞子が飛ぶ。胞子が毒性を帯びており、ダメージや【スリップ】が入る。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0