『夜と鳩琴』/ 15:30


リブラネスタ。新聞広告の左隅の案内の通りに進んで、石造りの階段を下りる。
地下へ下る道の突き当り。積まれた樽の横に、黒檀の扉があった。
中に入ると夜の砂漠の様に寒々しい空気と、他では何も思い当たらない独特な香りが君を出迎える。
広がる光景は雑多だった。
星の明滅する闇のカーテン。空転する水車。目を直視出来ない鹿の頭。
空を示す羅針盤。油に沈む指輪。在りうべからざる地理の地図。
王冠。透明な砂。焦げた古いパピルス。サクサクのチーズケーキ。

その中心にいる少女のような女が、静かに扉へ振り向いた。

◆Situation : // 15:30の夜のような曇天 + 雨 +店内
◆Rule   : // 1:1限定 + 先着 + 長文推奨
2020年09月23日 00時35分27秒 |10

2020年09月23日 00時41分40秒
(ここに来る客は様々だ。
 四割は消耗品の『紋具』『触媒』を買いに来る。
 火に変わる粉末や、闇を照らす水晶なんかがそれだ。彼らは安定していて、上客だ。
 三割は食事に来る。この店が飲食店として何処ぞに書かれた事実は、確認する限り無い。
 冒険者共が酒場で広めた度胸試しとやら――失礼な話だ――が大半だ。
 こいつらは半分が満足して、半分が魂の抜けたような顔をして帰る。
 一割は武器だ。以前から度々注文があったが、以前ならば断っていた。
 しかし『状況』が変わった今なら受けるに吝かでも無いが――
 そこから、注文はまだ来ていない。
 そして、残り二割は……まったく、想像も付かない事を依頼されるものだ。
 受けれるものもあれば、受けられないものもある。大抵は禄でもないことだが。
 ――さて、次の客は一体何をねだるのか。やりがいのある仕事なら歓迎だ。)

(扉の向こうで、馬の嘶きが聞こえた気がした)

2020年09月23日 00時59分20秒
(コツコツと、淀みない足音が石の階段を叩く)
またなんだって僕が出かける日にこんな天気に……。
(どこか不機嫌そうに独り言を呟く青年の歩く姿は、しかし背筋を伸ばした堂々としたものであり、良くも悪くも育ちの良さをうかがわせる)

さて、勝手に入って良かったんだったかな。
(酔いの回った冒険者の言葉を思い出しながら、ノックをした後に黒檀の扉を押し開く)
──失礼する! こちらで紋具を扱っていると聞いてやってきた者だ。店主殿はいらっしゃるだろうか!
(真っ先に目に飛び込んだ少女へ、男は室内としては少々大きな声を上げた)

2020年09月23日 19時44分35秒
店主の不在は扉の鍵が知らせるだろうさ。
(今日の来店は一見してヒューマンの男だった。
 ヒューマンは訪れる客として最も割合が高い。全体比として順当な話だ。
 そして、得てしてこういう身形の男は理想の高い要求をしてくる事が多い)
貴族か? 王国か、旧帝国か……。どちらでもいいがね。話が通じる人間であれば、だ。
(或いは、拾っただけのルンペンか。それにしては言葉遣いがなっていると感じた)
今はこのラドが此の場の主。その事に対して不満は聞かん。さて、要件を伺おうか。

2020年09月25日 02時21分37秒
(店主を名乗ったその幼い姿に僅かに目を見開く。そして、その視線が少女の耳へと滑った)
──そうか、ハーフリング。
失礼した、ご明察の通り王国の貴族の出でね、ヒューマン以外の種族とはあまり縁が無かったのだ。
気分を害したならば申し訳ない。

要件は二つあるのだが……まずはダメ元の『お使い』の話をさせていただきたい。
(謝罪もそこそこに語りだす男は、あからさまに期待していない表情であった)
数か月前の帝国崩壊は知っているだろう?
あれに、リーンエスのお偉方も大層慄いてね。
崩壊の対策になるような紋具……もしくは危機を事前に察知できるような紋具がこの地に無いかと問われて、此処を訪れた次第だ。

2020年09月25日 23時01分43秒
(木製の――しかし見て分かる性質は明らかに毬のような軟体である――球を手で弄びながら、少し興味なさげに目を背ける)
このラドは『お使い』の仕事は受け付けんな。紋具を渡すヤツは顔を見て決めるもんでね。
だが、初回ならもう少し話を続けてやろう。そんな紋具は、無い。

ありゃあ、このラドは救国の英雄として雲の上の高さに昇ったろうな。そんなモンを抱え落ちする程無能でも無ければ吝嗇でも無い。
……だが。ま、あるとすりゃあ、『神具』の類だ。それだって、世界を救うか、或いは滅びを上塗りするかの分の悪い賭け……。結局の所、人類は人類の扱えるだけの力で何とかするしか無い。
(フウ、と、見逃していなければ吸ってはいなかったであろう煙を口から吐いた)
更なる力を求めたいなら、まず力に値する『器』を用意しろ……と上に言っときな。

2020年09月26日 03時25分19秒
(少女の言葉を聞き終えてからゆっくりと瞬きをする)
(おおむね予想通りの回答だったのだろう、彼は落胆することもなく話を続ける)
ふむ、この店のルールはわかった。『お使い』の失敗もね。
そもそも何故あれほどの大国が突如崩壊したのか、原因も分からない状況だ。
それを解決できるのであれば、それこそ神の御業だろう。

さて、ではよりささやかな話に移らさせていただきたい。
こちらもある意味お使いではあるのだが……王国の父から相談を受けてね、孝行息子としてはどうにか力になってやりたいのだよ。
(いやに淀みなく、どこか芝居じみた調子で話し続ける)
火を噴く粉、雪を拒絶する外套……冬備えに使える紋具は無いか?
何十人でも使える範囲であったり、量があるならなお良い。

2020年09月28日 21時57分35秒
……フム。
(王国の気候は安定している。そしてそれは地勢的な偶然に頼った物でなく、
 かつての英雄が功績と共に獲得した“恩恵”であり、それが天災として揺らぐとは考えにくい。
 今、この段階で王国が防寒を考える可能性は二つ。
 帝国を滅ぼした『何か』が王国のギフト――安定した気候――に干渉すると考えているか、或いは)
北へ遠征……でも、考えているのかね。調査団か何かか。その『原因』を探りに。
(問い、ではない。問いにしても答えが返ってくるとは思わない。これは只の独り言だった)
――無論。用意出来ない訳が無いね。そんなのは基本中の基本の代物さ。
……そうだな、『傘』が妥当かね。

2020年10月01日 01時34分47秒
なるほど、北への遠征か……王国の貴族ならば喜んでやっただろうね。
(問うような調子でも無かった言葉に、あえて返事をする。注文する品の性質を思えばここは返事をするべき場面だった)
その通り、と勇ましく答えたいところだが、現実はもうちょっと後手に回っている。
帝国からの難民の為だよ。
何分急な話だから、満足な防寒性のある住居は用意できない。
かと言って、王国は帝国に比べれば温暖であれど、常春とまで呼ばれるエルフの大森林ではない。冬場は普通に冷え込むのだ。
(少しの間をおいて、彼は言葉を続ける)
冒険者ギルドの変革は知っているかい? あれは王国を牽制する意味合いも強い。
だからこそ、父は点数稼ぎをしたいのだよ。
『王国は帝国民を見捨てない、冬の寒さに凍える子らにも十分な備えを提供する』、という国外へのアピールだ。
(不自然なほどに詳しい理由を語った後、男は此処へ来て初めての笑みを浮かべた)
そういう事だ。貴方の見立て通り傘の紋具で構わないが、できれば子供でも扱える小さなサイズのものを混ぜてくれるとありがたい。

2020年10月05日 21時18分50秒
……このラドの知る王国貴族とは随分と違うな。
そこまでリスクのある行動をするようなのは……見たこともない。まあ、“客層”が偏っている自覚はあるが、ね?
とはいえ、用途が分かれば性能も変わる。王国領程度の環境なら、性能もそこまで張る必要は無いか……。
(戸棚の奥を見据えて、『軽量化』の程を考えながら)
 ダマスクスの備蓄はあるかい?

2020年10月09日 03時18分35秒
はは、貴族とて人間には違いない。
生涯善行だけをする者など殆どいないように、悪行のみを行うというのも意外と居ないものだよ。
……まあ、今回に関しては割と悪だくみの面もあるのだが、帝国難民本人たちの不利益になるような事はしないつもりだよ。
なんだったら、同盟の誰かしらに間に立ってもらって書面に残してもいい。大分時間を食うだろうからやりたくないが。
(流暢に返答した後、ダマスクスという言葉を聞いて少しだけ顔をしかめる)

……結論から言うと、すぐ多量に用意するのは無理だ。
今動かせるのは、僕一人で運べる程度、子供一人の体重と同程度だろうか。
こちらが用意するなら買うか、別の場所……実家の領地から持ってくるかになるのだがね。
冒険者の仕事にかこつけて、ビッグオウムを使いでもしない限りは馬車での運搬になる。
その準備がすぐには出来ないだろう……大陸全体が混乱する中で、護衛を用意する手間が大きいという意味でだ。
(本当に困ったというような表情で、店主へと語る)
今言った量で足りないなら、そちらで不足分の調達はできないか?
勿論、増える材料費とその手間賃は代金に上乗せしてもらって構わない。
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0