いばらの魔女:一(終)


指輪の紋章の看板。宝石の嵌まる場所に、硝子のランプがある。
灯が入っている間――夕方から明け方にだけ開く、小さな酒場。
客はただの酒飲みから脛に傷のある者まで、さまざまだ。
約束事を守れるなら、深い事情は聞かれない。
静かに飲め。人の話を聞け。出来ない仕事を受けるな。

今日も、“巨人の指輪”が光っている。

●説明
お前は二回目以降の客だ。
いや、紋具と酒を卸に来るんだったな。じゃ、取引先でもある。
ただ呑みに来たんでも当然構わん。悪い店じゃあなかったろ。
まあまた金を置いていけ。

●ロゼ用
●リアタイ/置きレス両立
●寝ろ。
2020年09月18日 03時54分16秒 |27

2020年09月18日 23時50分41秒
シュタッヘル ロゼ
(ランプの頼りないひかりに照らされたひとのかたち。扉の軋む音と共に店内へ足を踏み入れたのは、夜の彩を纏ったおんなだった。長耳のおんなは『ごきげんよう』と店主へ断りを入れ、カウンター席のひとつに腰を下ろし)

果実酒を頂戴。とびきりあまいものを。

(ヴェールの下。紅を引いた唇から零れた、最初の一拍。息を吸う音。『今から喋るぞ』と、己に喝を入れる為のもの)

……この辺りで。紋具の買い手を探しているの。
店主さま、物入りの方はご存知?お代は勿論お支払いするわ。

(おんな曰く。常は客人を出迎える側なのだが、偶には人里に自ら赴き魔法の奇跡を齎すのも宜しかろうと云う。要は自らの師から齎された『おつかい』の途中なのだと語り)

2020年09月19日 00時53分37秒
(身綺麗で女らしい姿だ。立ち居振る舞いや喋り方も柔らかい。……違和感しかねえな。強盗か? 店の外に誰ぞいやしねえか? 薄い窓の向こうを疑り深く眇めてみたが、特にそういったことはない)
(……ごとりとテーブルに置かれたのは、「ボトル」ではなく「ジャー」と呼ぶ類の瓶だ。材質は薄青の摺硝子。ラベルには、花や木の実を山ほど背負った白馬が描かれている。重たげな蓋を外すと柄杓を突っ込み、木の椀のような器へ中身を移していく)
(『白馬の宴』。……寒さにけぶる窓のような薄い透明の中を、色とりどりの木の実や花弁が躍る。「清らかな水のほかには、冬しかない」と言われる北方の村の特産品だ。香りは甘く、味わいは口に含んだ木の実によって変わる。舌にはもちろん、本来は見た目にも楽しい酒だが、その粋を極められるほどの明るさと入れ物はこの店になかった。薄暗い中、透けない器を掌で示す)

果実酒っちゃウチにはこれしかねえや。
で、なんだ――紋具ってえのは、「魔術を籠めた道具」って意味であってるかい?

2020年09月19日 21時36分35秒
シュタッヘル ロゼ
(店主の胡乱な眼差しを受け、おんなは幽かに微笑んだ。『初対面の相手には笑顔でいなさいな』と云う師の教えを忠実に守っているのだが。この場に於いては、逆効果になってしまうやもしれない)

いい香り。雪の下で眠る、熟れた果実のにおいがする。

(林檎。葡萄、柑橘、それから。花の蜜の香り。ながい、ながい冬。雪の中で凍える人々の心身を温めるには適任だろう。――それは慣れない外へのおつかいに身を固くした、おんなのこころにも)

……おいしい。はじめて飲むのに、なつかしい甘さだわ。

(ほう、とちいさな感嘆の息を漏らして。幾分緊張が解れたのか、商談の続きを唇に乗せ)

ええ、そうよ。
魔女……人里では受恵者と呼ぶのだったかしら。私たちがまじないを施した道具のこと。
この辺りのひとたちに向けたものだったら、そうね。飲料に適した水を、コップひとつ満たせる程度に生み出せたり。火打石が無くとも、火種として扱えるものだったり。
それぞれ、触媒も付けてお譲りするつもりよ。如何かしら。

2020年09月19日 23時40分17秒
へェ。授恵者さまねえ。アンタが。いや、アンタのお師か。
(他者へ向けられる笑顔は、理由が何であれ美徳である。……それを僻むものがいなければ。成程、もう二本ほど表の通りであれば話は早かっただろう。子どもの眼差しはけだるく、ちらとしか女を見なかった)
ま、誰がなにさまでもいいさ。……嬢やよ、アンタの卸すものだ。そいつがインチキじゃねえって証拠を出しな。今。
(唇で遊んでいるだけの紙巻のため、まさに火打石を取り出したところだ。それを、これ見よがしにカウンターの隅へ放る。その様子だけは、その手の仕草だけは、はっきりと表情を持っていた――)
(――底意地悪く、嗤っているのだ。あなたがよそものだから。おんなだから。こんなすすけたところで、美しく笑っているから)

2020年09月20日 18時18分28秒
シュタッヘル ロゼ
そう。お師さまが。私は、ただの見習い。小間使いのようなものよ。

(かたちなき神秘、奇跡と云ったものを、『そも、存在するものか』と。『余所者のおんなひとりに何が出来る』と。値踏みするような眼差しも、鼻で笑うぞんざいな所作も。知っている。自分が、『そう』だから。脆い微笑みの仮面の下、べそをかきそうになる弱い本心を押し込め乍ら)

良いわ。紋具は此れ。触媒は此方。
黒檀のタクトと、硫黄よ。

(おんなが広げた袋の中には、紋具と思しき其れ等が各10組ほど入っている様子が伺える。その内のひとつを手に取ったなら。硫黄の小袋を僅かに広げ、コツ、コツ、と軽く机を鳴らし)

――《ソウェイル・カノ・エイワズ》《生と死、はじまりのともしびよ》

(タクトの先端が仄かにひかりを帯びたかと思えば、小指程の火が幽かに揺らめいて。紙巻にそっと寄せられた。髪を焦がす程では無い。あなたがそのまま息を吸い込めば、煙草を燻らせる事が叶う筈で)

……如何かしら。硫黄はこの袋一杯でひとつき持つわ。
火の加減は、望めばもう少し強めることも出来る。

2020年09月22日 00時07分04秒
―――……。

(傷だらけの眼鏡があたたかな光を跳ね返すのがわかる。火だ。火打石よりずっと安定していて、それに澄んでいる。唇から空気をほんの少し吸い込み、それで紙巻に小さな灯がともると、身を引いた。女に煙をかけたくはなかったから。小窓を開け、そちらに向かってふうと煙を吐き出す)

ウェズンという。おれの名前だ。
貴重なモンを使わせたね。そいつはきっちり満額、ウチで買い上げてやるよ。言い値で、とまではいかんが…しかし、

(硫黄、それにあなたの持つ黒檀のタクトを目で示す)

“物入りの方”もなにも、いくらでも欲しがる輩は居んだろうな。どいつになら一番首尾よく売りつけられるか、考えてもきりがねえや。
で……ものひとつ、困り事一件につき、いちいちその足で運んで来る気かい。
嬢やがそれで構わんならいいんだがよ。

2020年10月02日 00時40分43秒
シュタッヘル ロゼ
(紫煙を小窓へ吐き出す所作を見れば、少しだけおんなは表情を和らげた)

そう、……いいお名前ね。

(それは。夜空に輝くひかりの名のひとつだ。彼がそれを如何思っているか迄は、おんなは伺い知る事は出来なかったけれど)

貴方が買い取って下さるなら、とても助かる。
買い取った後。誰に売るかまでは詮索しないし、報告も必要ないわ。
お師さまも。誰かの生活を彩ることが出来れば良いと仰っていたし。

……そうね、互いに『お得意さま』になり得るのなら。
私は此処に、果実酒を飲みにくるわ。

(それで如何、と小首を傾いだ。おんなの提示した額は、火打石ほど安価ではないが、ランタンとそう変わらない程度の金額であった。貴方が物入りの客に少し吹っ掛ければ、十分に利益が出る程度の。そんな、ささやかな、魔女からの『おくりもの』であった)

『いばら』と名乗ることが多いけれど。ヒトの里でそれでは、失礼だわ。
……ロゼ。ロゼよ。私の、なまえ。

(すこしぎこちなかったのは。名乗り慣れていないが故の)

2020年10月04日 06時11分59秒
話が早いな。それでいい。
呑みに来るたびにブツを持ってくりゃ、まとめて買い取ってやるよ。
ただし新しい委託品が追加されるたび、そのモノの効果はこうやって見せてもらうぜ。

(提示された額をすんなり飲み込んだ。棚やカウンターや椅子の裏、あちこちに分けて隠されたコインを集めると麻袋に詰め込み、硫黄と交換するように押し出す。「モノの効果」というのは、単なる興味だ)

こっちも仕入先は黙っといてやる。
たまに「仕入れ値で買わせろ」ってバカがいるんだ。
もっとタチが悪けりゃあ、職人の工房に押しかけやがる。全くしょうもねえ。

(灰を受けるための小瓶も窓の傍へ置き、その口へ赤く燃える先を置き。とんとんと紙巻を揺する)

――――さァて、良いんだか悪いんだか。少なくとも名前通りの人生にゃならなんだ。
「錘みたく地に足の着いた生き方をしろ」って話だぜ。

(そうして、また深く煙を吸い込む。それがゆっくりと夕空に噴き出されていく様子は、まるで小さな煙突に似て。黄金色の目はそれを追っていても、耳はおんなの話を聞いている)

……なんだそりゃ? 失礼も何もあんのか、魔女ってのはめんどくせえな。
『いばら』でも『ロゼ』でもいいだろうに。

(ちらと、木の器を見やる。空になりかけていれば声をかける気でいて、そうでなければまた視線は窓の外へ向かうだろう)

2020年10月04日 19時52分12秒
シュタッヘル ロゼ
助かるわ。紋具は、豊かな暮らしをする人々よりも。本当に欲しい人に渡ってくれた方がいい。

(押し出された金貨を受け取れば、ありがとう、とこうべを垂れ)

よくてよ。不良品だなんてことがあったら、魔女の名折れだもの。
きちんと、その目で確かめて。納得の上で買って頂けたら。

(使い方も紋具によって少しずつ異なる。何方にせよ、見てから買って貰えた方が有難いのだと添えて)

何処の界隈でも居るのね。
館に押し掛けられたら、みんなお師さまのおもちゃにされてしまうわ。

(ニンゲンに対して敵意も悪意もないが、すこし。すこうし、おんなの師は『茶目っ気』に溢れ過ぎているのだと。困ったように肩を竦め)

なまえは、魔女の間では楔だと言われているの。
だから、魔女同士だと『あざな』で呼び合うことが多いのよ。
必ずしも名付け親の意図するしるべとなるわけではないけれど……。
きらいではないわ。貴方のなまえも、……あまり口にする機会のない、自分のなまえも。

(薄く残っていた酒に含まれた花弁が、柔く鼻を通り抜けて心地好い。声を掛けられたなら、もう一杯、と器を店主の方へ寄せ)

このお店は、もう、長いの?

2020年10月06日 12時24分58秒
(交渉成立。提供されたものを丁寧に、隠し棚へ仕舞いこむ)

まあな。冒険者なんざやってられる歳じゃなくなって随分経つ。
……そら、椀貸しな。まだ呑むだろ。祝いの席の酒だ、そう強かねえ。

(半ば押し売りに近い形だが、需給は一致しているらしい。また瓶の蓋をごとりと開け、木匙を使で花と果物を注いでゆき)

しかし楔ねえ。そんな大層なもんをおれに教えていいのかい。
おれは遠慮なくロゼと呼ぶがね、そいつを茶目っ気たっぷりのお師に叱られやしねえのか。

2020年10月11日 00時51分56秒
シュタッヘル ロゼ
(一連の所作を、おんなは不躾にならない程度に目で追った。『そうするのが普通』なのは、土地柄か。或いは)

そう。それなら、屹度。貴方は、先達の方なのね。

(正しい意味で人間以外の種は見目のとおりの年齢でないことが多い。故、おんなは誰が相手でも子ども扱いはしない主義だった。自分の師を見て育ったが故の、世渡りのすべ。……尤も、それが原因で舐められることも多々有るのだけれど)

いいの。名乗る機会がないなまえなんて。すこし……すこうし、寂しいことよ。
人里に降りたときくらいは、肩書きを隅に押しのけたって。お師さまは、怒ったりしないわ。
……『まだまだ子どもだねえ』と、笑いはするでしょうけれど。

(拗ねたように唇尖らせ、『軽く摘めるものはあるかしら』と問い重ね)

首都の酒場は華やかだったけれど、まばゆすぎて目が眩んでしまったの。
ここは、いいところね。ほのおの燈りがあたたかくて。
値踏みするようなまなざしはあれど、深くに踏み込もうとするニンゲンはすくない。

(自分が彼等にとって、『テイのいいカモ』に見えたならば、もう少し話は変わってくるかもしれないが。自分の長耳が、やたらに伸びてしまった上背が。こんな時は有難かった)

2020年10月11日 03時37分51秒
なんだ。アテか?あるが今日は高い――(実際、木の実のたぐいのストックがない。ないが)
――いや。アンタ運がいいな。最善じゃねえがよ、合うものはある。

(カウンターの一番下へ引っ込んで、見えなくなる。棚を開ける音、かさかさと草の鳴る音。見たことがあるかもしれないし、ないかもしれない。
 “ノイズミ”。秋ごろ小さな実をつける、温帯に生える低木。薄紫のそれは、甘く酸っぱく水気がある。よく流通するもののうちでは野苺に近い風味を持つ。それが枝ごと、一本出てきた)

コイツに足した分の残りがある。入りきらなんだ。
(コイツ、といって示したのは、酒の入った大瓶だ。食うかどうかも聞かないで実をもいでいく。どうせ干すつもりだったのだから、手間にはならない。程なくして、艶やかな実を載せた小皿が置かれた。食べても、食べなくてもいい)

「あたたかい」。そいつは錯覚だな。この街が貧しいんだよ。蝋燭でしか暖を取れん連中ばかりだ。
ま、首都の賑わいが辛ェのは分かる。オッサンにはもうキツいったらねえや……
(はたと気づく。先達といったか。エルフが?平気な顔して三ケタ歳に届くやつらが?)
アンタ、歳は幾つだね。

2020年10月11日 15時34分17秒
シュタッヘル ロゼ
あら。嬉しいわ。私。それ、好きよ。

(自分の住まう森には自生しない木の実。一度、『そら。いばら、お土産だよ』と師が持ち帰って来たことがある。おんなは、それを覚えていたのだ)

コケモモや黒スグリとも、すこうし違うのよね。
たまに恋しくなるのだけれど。此処で口に出来るなんて、そう。そうね、今日は運が良いわ。

(曰く。魔女の館でも果実酒は漬けるが、何方かと言えば薬酒に近いものばかりだから。純粋に甘く華やかな酒を口にする機会が無いのだと語り)

ともしびひとつしか無いのなら。街明かりに照らされた都会よりも。夜空は、とてもうつくしいでしょう。
私も。似たくらしをしていたことがあるから。此方の空気の方が、心地好いのよ。

(怯え、惑い、疑心。全てを綯交ぜにしたまなざしは、自分にとって馴染み深いものだった。だから、幾ら身形を整えようと。『帰ってきた』気がしてしまうのだと、薄く笑み)

わたし?お師さまと出会ってから、ひい、ふう……、……ここのつの月が巡った頃に、新しい杖をいただいたから、そこから……。

(指折り数える。両の指先をひとつ、ふたつ往復する。店主が思うよりも、恐らくはずっと少ない。『もう良い』と止める暇も無い位に、おんなの指は直ぐに止まった)

20とふたつの年を生きたわ。
他の長耳からしたら。屹度、赤子とそう変わらないのでしょうね。

2020年10月11日 20時25分55秒
お好みなら何よりだよ。酒の中身も同じ果物だ、味の喧嘩はするめえ。
平地ならそこらに生えてるぜ。街道で見かけたら採っときな。真水のほうが貴重だ。

(野の泉であるから、ノイズミ。高低差が激しい山間部、影が多い森林、水のありすぎる湿地帯には生えない。しぶといようでわがままな植物である。そうだったはずだ。思い出しながら、小窓の外へ双眸を移す。どうにもおんなの語ることには、あまり触れるべきではない気がしたのだ。聞く分には構わずとも、詮索を無粋と感じる質であったが)

こっちの空気が落ち着く質? ならなんでまた森に住んでんだ。捕虜かなんかか。

(そりゃあとても勧めやできんが、と。手元で新しく巻き始めていた煙草の端をしっかり留める。煙草を咥え、折角だ。黒檀の杖で火をともし、吸い。外へと煙を吐いて)

わっか。

(火のついた紙巻を落としかけた)

2020年10月11日 22時32分18秒
シュタッヘル ロゼ
そうするわ。お店では売っていないのよ、酒蔵を営むひとのもとへ行けば譲ってもらえるかもしれないけれど。

(それなら自分で摘んだ方が早い。後でちいさな籠を買い求めるのも良いだろう。 熟れたものは甘く、色の淡いものは少し酸い。このムラっ気が、おんなはとても好きだった。 ついこの間迄は『おまえはまだ小さすぎるからなあ。遠方へは行かせられないなあ』なんて、師が意地悪くわらうものだから。『またたべたいです』のひとことは、終ぞ言えなかったのである。――閑話休題)

そうね、……どう言えば判り良いかしら。

(己と師の関係を。相手の重荷にならない程度に柔らかく伝えるには。元々喋ることが不得手なおんなではあったが、今日はいい酒だ。ゆえ、少しばかり。本人比で、饒舌になれた)

お師さまが、わたしを弟子に取ってくださったからよ。
首都から離れた人々の暮らしを知っているから。はじめのおつかいは、此処にしたの。

(ねこのように瞳を撓めて、おんなは薄く笑んだ。『あのとき自分が欲しかったもの』を、お裾分けする機会が巡ってきたことが、嬉しかったのだ。口には、出さずとも)

2020年10月11日 22時32分25秒
シュタッヘル ロゼ
(数度瞬く。窓の外へぷわんと浮かんでいく紫煙の輪を見止めれば、)

ふ、……ふふ、ふふふ……器用なのね。

(震える笑いを嚙み殺す。誤魔化すように何度か咳払い)

仕入れも、おひとりで?
うんと強いお酒か、うんと甘いお酒なら。幾らかお譲り出来るけれど。

(それはそれは、たくさん。たくさん作って、殆ど師とその友人たちが綺麗に飲み尽くす。作るのはもちろん自分なので、すこしお裾分けする分には困らないのだと添えて)

2020年10月11日 22時44分40秒
てめえが若いっつったんだ。(まあわっかも作ったが)

2020年10月11日 22時50分36秒
シュタッヘル ロゼ
(ぶほっ)
(今度こそ吹き出した。ツボに入ったのかこうべを垂れている)

く、ふふ、……ふふふ!……御免なさい、つい、

そうなの。
みな、わたしの齢を知ると驚くわ。お師さまはうんと愛らしいから、師匠は逆じゃないかって。いつも、間違われるの。

2020年10月11日 22時52分59秒
……アンタ、やっぱり運がねえのかもな。薄暗いとこにも種類がある。分かるよな?
初めてのおつかいならもう一本表の方が初心者向けだった。

(また、輪っかを作る。気に入られたらしい。そういや昔にもこんなことがあった。やたら昔の、どうでもいいことを思い出す日だ)

仕入れも店番も掃除も全部おれ一人だよ。人にやらせるのは好かん。給料も出さにゃならねえ。
……そいつはその、魔女の館とやらでしか作られんような酒か? それなら少し話を聞いてやる。

2020年10月11日 22時53分53秒
オッサンらしい笑いの取り方だろう。(わっか、輪っか)

2020年10月11日 23時08分23秒
シュタッヘル ロゼ
分かるわ。だから、『こちら』にしたのよ。

(おんなの一人歩き。それも、身なりを整えたおんなだ。悪漢に絡まれることもある。スリの子供に目をつけられることもある。けれど、)

それも、修行の一環だと。お師さまは言ったわ。『暴力を振るわずに完遂なさい』と。
此処に来るまで、すこうし時間がかかってしまったけれど。
結果的に良い取引ができたから、それでいいのよ。

(使い魔に道を探らせればある程度ヒトを避けることも出来る。それ故すこし遠回りになってしまった)

そう。そうよね、貸しをつくるのは。この辺りでは、あまり好ましくないことだわ。

(雇った者が店中の金を掻っ攫うことだって有り得るだろう。その点で、店主の判断は正しいと頷いて)

ええ。工房で精霊たちに蒸留させて作るとっておきよ。
ドワーフだってあっという間に落とせるサラマンダーの火酒。それから……10年に一度実りの時を迎える、燈林檎と。月を映した鏡の泉の水で作った、特別な貴腐ワイン。貴方がよければ、次の仕入れの時にお持ちするわ。

(味を見てから、気に入れば。と云った具合でも宜しかろうと首を傾ぎ)

2020年10月11日 23時09分49秒
シュタッヘル ロゼ
ふふ、………ふ、あはは!

(それまで上品さを保っていたおんなは、ころころと子どものように笑った。おかしい、と素直に口に出して)

『おっさん』なんて言ったら、貴方に失礼だわ。
店主さま、……いいえ、ウェズン。そう呼んでも?

2020年10月11日 23時29分13秒
ハ。好きにしな。

(実際に子どもであってもおかしくない年齢だ。それに話してみれば年の割に礼儀もなっている。だから笑うようすを見たって、別段気に障りはしなかった)

原料からして聞いたこともねえや。……いいだろ。次に少しずつ持って来い、味を見る。
それとこの街のクソバカどもだがな、どうしてもどうにもならんようなら「指輪亭の客だ」ってえ言やあいい。新顔でなけりゃ道を開ける。

2020年10月11日 23時43分48秒
シュタッヘル ロゼ
ええ、そうさせていただくわ。

(普段なら。遠慮やら不安で自分から他者に踏み込める性質ではないのだけれど。今日はきっと、良い日なのだ。このお酒がとても自分好みの味だから。『おつかい』を無事に果たせそうだから。つい、上機嫌になってしまったのだと、頭のどこかで普段の自分が言い訳を重ねていたが、今はちっとも気にならなかった)

『火蜥蜴の舌』、『微睡の月』。それが、なまえよ。
火酒はとても強いから。舐めるくらいにした方が良いわ。

(後者はとても甘く、すこしとろみのある舌触りなのだとおんなは語った。甘党な魔女たちの間では、とても人気なのだと添えて)

……それは、『貸し』?
ふふ。でも、お礼を言わせて。有り難く助言として受け取ることにする。

(椀を満たしていた酒は、何時の間にか空になってしまっていた。飲み口の良い酒は悪酔いしてしまうから。もう一杯は、また次の機会にしよう)

ごちそうさま。楽しいお酒だったわ。
色々教えてくれて。買い取ってくれて、ありがとう。
今日は。そろそろ、行くわ。

(お幾ら?と首を傾いで。店主が金額を示せば、おんなはきっちりとその分の銀貨、銅貨を支払う筈で)

2020年10月12日 00時00分59秒
貸しなんぞじゃねェよ。商談に来るはずの奴が来ねえんじゃ困る。

(ふう、と紙巻の煙を長く吐き、水を入れた小瓶に落とした。煙が完全に消える)

『火蜥蜴の舌』に『微睡の月』だな。覚えた。
今日のお勘定はこれだけだ。

(提示した額は、特に安くも高くもない。しかし全額きっちり払われたのに間違いはなかった。こういう客が増えたのはいいことだ。特に何もなければ、不愛想な金色の眼差しがおんなを見送るだろう)

2020年10月12日 00時10分01秒
シュタッヘル ロゼ
それもそうね。ふふ、ありがとう。

(腕っ節だって強くはない。おんなはただ、『それっぽい』だけの魔女だ。腕力ではおとこに勝てないし、早いのは逃げ足ばかり。故、『通行証』に等しいものを寄越して貰えたのは、僥倖だった)
(甘い酒しか飲めないし、飲める量もそこまで多くないけれど。いい酒の席だった。子ども扱いされなかったことも。おんなは、すこし。すこうしだけ、嬉しかったから)

御機嫌よう、ウェズン。
ななつの月を迎えたころ。また、来るわ。

(おんなは緩やかに席を立つ。来た時同様、見せ掛けだけの優雅な所作で以って)
(扉を開くと同時、一度振り返り。ぺこんと頭を下げて、おんなは雑踏に消えていった)

(果たされたおつかいと、新たなお取引先さま。おんなの師は弟子の成長をたいそう喜び、小躍りしておんなを抱きしめたのだとか、なんとか)

2020年10月12日 16時53分46秒
(終)
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0