【物語置き場】語り場


創作の物語や、各地の伝承等を語る場所
2020年10月04日 18時48分19秒 |8

2020年10月05日 14時08分01秒
水上都市アキュアリスタ、大陸北東に位置する遺跡と観光の都市。
エラトゥーンにおいてもその名は轟き「水の都」と名高いその街では冬に水神祭が行われることが有名であるな(荷物からリュートを取り出して)
此度話すのは私がまだ旅人なり立ての時のことである。丁度、冬に在りて水神祭の時期に訪れたことがある。それは暖冬であり過ごすに易く行脚にも易しくあった。であるゆえに人も多く集まったことは想像に難くなかろう(ぽろろん、リュートを奏でる)

2020年10月05日 14時08分14秒
あの頃の私も今に変わらず美しくあったことは語るに及ばずというところだろう(ドヤァ)
かの地の祭りは朝に夕に、人が溢れんばかりに集まり飲めや歌えや騒がしい事のありはしない。私もその中で祭りを楽しむ一般人であったのだが、さて、私は旅の初心者。飯や街の喧騒に心躍らせ宿を取ることなど全く気にせずにいた。お察しであるかと思われるが、私は宿にありつけず夜半を越えて街中を休むができずにいた(リュートを低く奏でて)
そしてふと、ある路地に入る。そこは喧騒が掻き消えて、まるで音が無くなったような裏路地であった。後ろを振り返ると、さっきまで見え聞こえた喧噪もなく、私は「疲れ果てて、きっと夢を見ているに違いない」と、その時は思った。頼りになるのは月あかり、私は恐ろしさと興味深さと真新しいカンテラを携えて、進むことにした……。

2020年10月05日 14時08分34秒
暖冬とはいえ夜半にありては寒さは手が悴むほど……であったはずなのに、<font size="3" face="HG行書体">私の手は悴むどころか暖かく、全身もまるで春を感じさせるほど寒さを感じなかった……。</font>気付いた瞬間、私の背筋は凍った。(また低くリュートを奏で)
目の前を見れば、カンテラに明かされた路地が見える。歩くことをやめれば背筋に張り付いた寒気がきっと私を包んで離さないに違いない……。私は恐れに身を包まれながらも歩みを止めなかった。否……止められなかった。そして路地の終わりが見えた。
――いや、よく見てみろ、これは<font size="3" face="HG行書体">ただ闇が目の前に広がっている――?
</font>
私は歩みを止めようとした。しかし止まらなかった、止められなかった。<b><font size="3" face="HG行書体">まるで、操られているように私の足は歩みを止めない――</b></font>
震える間もなく、私は闇の中へ足を踏み入れた――。

2020年10月05日 14時09分01秒
気が付くと私は、喧噪の中に再び立ち呆けていた。まるで今までの事が夢であったかのように、周囲は騒がしい。<b><font size="3" face="HG行書体">――否、よく見てみろ、彼らの様相は私が先ほどまでいたアキュアリスタの観光客に見えない。</b></font>
それは仮面をつけていた。それは黒い人型だった。それはまるで人であるかのように喧噪にあった。誰もがそのようにあり、客も店員も、誰も彼もが仮面の黒き人々……屋台は明るく、星々はきらめき、"まるで"水神祭のようであった。しかし、それは私が先ほどまでいた水神祭とは明らかに違う……。

私は夢見心地に周囲に紛れ込んでしまった。後ろを見ても、闇のように暗く濃い路地は見えず、大通りの屋台が立ち並ぶ夜半のアキュアリスタを歩む。最初は恐れていた私も、喧噪に紛れてみると恐れは段々と消えていった。仮面に黒き者たちは私に「さぁ飲め飲め」「うちの屋台は都市一番」「今日は水神祭ぞ」と口々に言ってくる。珍妙にて不可思議、屋台では何やら珍妙に光る酒を飲み、そこでは見たこともない食べ物を食し、しかしそれは今思い出そうとしても何だったか思い出せない甘美なものだった。(リュートが美しく奏でられる)

2020年10月05日 14時10分13秒
意外なことに私は祭りを楽しみ、仮面の彼らと仲良く踊ったりもした。見た目に奇怪ではあるが、私は彼らを邪険に扱うような気にならず、パレードの一部に混じって楽しく過ごしたものだ。――ああ、別にこれ、恐ろしい話ではないよ 実際あの夜手に入れた貴重品等はこの世に一つ二つあるかどうかという珍品だったらしい 金にはならないものであるがね(注釈を入れて楽し気な音を奏でる)

さて、これで私が朝に目が覚めて、これは珍妙な夢であったな、などと思って都市を後にしたことであろう(思い耽って)これまでは裏の話、ここからはさらに深淵にて珍奇なる物語――

暫しの間祭りを楽しんだ後、私の肩を掴む者があった。
<b><font size="3" face="HG行書体">いで立ち黒く、高く、這うようにあるソレは、あるいはヒトと呼べぬソレは、面もなく私の肩を掴んでいた。

「汝は珍客也、之を祝うは慣わしにて候。ゆめゆめ忘れるなかれ」</b></font>

黒き彼方の者は酷く聞き取りづらい言葉で私にそのようなことを言って、私に宝石を渡した。それは翡翠に輝きて無二のものであると感じさせるものだった。これがなんであるか、私には分からなかったが、ふと月に照らしてその輝きをよく見てみた。すると翡翠は夜闇に一本の線を映し出した――。

その先を見る。ふと、今まであった仮面の黒き人々は消えて、大通りは月あかりと、翡翠の光筋だけが残っていた。静けさに恐ろしくあったものの、私は魅入られるかのように翡翠の光筋を辿って大通りを歩んだ。きっとこの先には、私の見たことのないものが待っているという、そんな予感だけが私の足を動かしていた。

2020年10月05日 14時10分24秒
暗い路を歩む。大通りを歩む、先ほどまで騒がしく賑やかであった場所が静けさで人家もなくなれば、それは薄気味悪いもののように見える。闇に眼を凝らせば仮面の者たちがこそこそと私を見ていた。耳を凝らせば「珍客――」「愉快な――」「久方ぶり――」などと聞こえる。それは嘲笑というより歓迎であった。彼らは単純に私の行いを祭りの一つとして見ているかのようであった。

さて、翡翠の路をたどり着いた私は目の前にあるモノがそこにあることが信じられずも不思議と心が躍った。
それを形容するなば、噴水であった。通り道のど真ん中に、噴水。月あかりに照らされる水は煌びやかであるものの、特別な雰囲気を感じるものではなかった。私がソレを特別だと感じたのは、単純に、私に翡翠を渡した黒きナニカがその目の前に立っていたからだ。

黒きナニカは、手のようなものを差し出して、噴水を差しているようだった。
直感的に、私はこれに翡翠を投げ込むんだと感じ、黒きナニカに頷いて、噴水に翡翠を投げ入れた。

2020年10月05日 14時10分43秒
<b><font size="4" face="MSゴシック">――それは、月まで届く光の階段だった。</b></font>

泉から翡翠の輝きが溢れんばかり、私は目を閉じて、光が収まるのを待った。
そして私が見たのは、噴水からあふれた光の階段と、そこに仮面の人々が行列を為すところだった。
困惑した私は、黒く人型でもないナニカの傍にあり、彼に問うた。
「私は一体、何をしていたんだ」

そしてナニカである彼はこのように語った。

<b><font size="3" face="HG行書体">「祭りだよ、珍客」</b></font>

彼は小さく細い声で私にこう語った。彼らはどうにも、この世ならざるところから観光に来た珍客であると。また、あの世ならざるところにありてこの世からは遠く、私から見た姿というのは本来の姿ではないとのこと。彼らは彼らの領域から出られないが祭りを楽しむ心は同じ故、同じ場所で祭りを楽しむためにここに在ったという。祭りが来るたび、同じことをしているが、私のように迷い込む珍客は珍しく、そのような者を祭りの終わりとして儀式を行わせ、祭りの楽しみとしていたらしいということ。
つまるところ私は、珍奇なる彼らに遊ばれていたというわけだ。不思議と私は怒る気にはならず、むしろ「楽しかったよ、珍客」などと余裕のある言葉が出る程度には感動していた。
彼らが何者か、どこに在るものなのか、私は知らないし、今も祭りに来ているかは知らないが、きっと彼らはまた珍客をからかって遊んでいるのだろう。

2020年10月05日 14時11分26秒
さてさて、これで物語の裏の裏まで語ったわけだが、めでたしめでたしというわけではなく
私は気が付いたら朝日を拝んでおり、それはどこぞの路地であり、風邪を引いて一週間は動けなかった――。

<水神祭の裏の裏の奇譚>終幕――。
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0